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共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正

共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正がありましたので、アナウンスさせて頂きます。

共有関係の解消に関する法改正

共有関係の解消を促進する必要性とは?
被相続人が土地を生前に所有していた場合、当該土地は相続人間で共有されることになりますので、当該土地を売却したり賃貸したりするためには、他の共有者の同意が必要となってきます。
しかし、共有者間での土地の管理方法等に関する話し合いがまとまらないために、土地の活用を諦めて当該土地を放置するケースが出てきており、これが社会問題となっております。
そこで、土地を放置するケースを減らすために、共有関係の解消をしやすくするための法改正がこの度なされました。

具体的に何が変わったのか?
大きな変化としては、以下の3点が挙げられます。
①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
以下、上記①から③について説明していきます。

①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
・共有物分割訴訟の要件について、改正前は、「協議が調わないとき」しか条文には明記されていませんでしたが、一部の者が協議に応じない等によりそもそも「協議をすることができないとき」も含まれることが明らかになりました。
・裁判による共有物分割の方法として、⑴現物分割(共有不動産を分筆して、分筆されたそれぞれの土地を、共有持分権者がそれぞれ取得する方法)⑵代償分割(一部の共有者に土地を取得させ、それ以外の共有者が土地を取得した共有者から代償金を受け取る方法)⑶競売分割(競売により土地を売却し、かかる売却代金を共有者間で分ける方法)の3つの方法を明示し、⑴と⑵の分割方法は同列で選択可能、⑶の分割方法は、⑴と⑵のどちらの方法も採ることができない場合に用いられるものということが条文上明らかとなりました。
 以上のとおり、要件や分割の方法等が条文で明記されることになりましたので、共有物分割訴訟がどのような手続なのかを一般の方も理解しやすくなりました。

②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
改正前は、遺産については、家庭裁判所による遺産分割の手続によるべきとされており、地方裁判所による共有物分割訴訟はできませんでした。
しかし、法改正により、相続開始から10年間、遺産分割手続が行われていない場合、遺産分割を経なくても共有物分割訴訟を提起すれば、共有関係を解消することができるようになりました。
※但し、遺産分割の請求を求める相続人から異議の申出があった場合はできません。

③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
改正前にはありませんでしたが、法改正により、例えば、共有者のAさんが所在不明の場合、他の共有者のBさんが裁判所に申し立てをすると、Aさんの共有持分を、Bさんが取得することができるようになりました。
これにより、共有者の一人が所在不明であるために、土地を活用することができないという問題を解消することができるようになりました。

所有者不明土地の解消に向けた法改正

そもそも所有者不明土地とは何か?
登記の記載が不十分であったり、亡くなった方の名義のままになっている等の理由で所有者が不明、又は所有者の所在を知ることができない土地のことを指します。

所有者不明土地の問題点とは?
例えば、道路または公共物を建築するのに土地を収用する必要がある場合に、土地所有者に連絡をとることができないために、収用手続が進まなかったり、土地所有者に連絡がつかないために、固定資産税の課税ができない等の問題が生じています。

所有者不明土地管理命令が新設されました。
上記のような問題を解消するために、所有者不明土地管理命令が新設されました。具体的には、裁判所は、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができるようになりました。
そして、所有者不明土地管理人が当該土地に関する様々な問題に対応することにより、上記のような問題を解消することができるようになりました。

まとめ

以上のとおり、共有関係の解消や所有者不明土地の解消に関して、様々な法改正がなされました。
当事務所では、不動産に関する紛争についても豊富な取扱・解決実績がありますので、ぜひご相談ください。

投稿日:2021年9月15日 13:53|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

債権回収が少しやりやすくなった!?改正民事執行法

令和2年4月1日に改正された民事執行法によって、債権回収が以前より実行しやすくなった(債権者にとって有利になった)ので、アナウンスさせて頂きます。

何が変わったの?

まず、何が変わったのか? ですが、
大きなポイントは2つだと思います。

(1)債務者に対して、格段に強力な方法で、財産の開示を求めることができるようになった。
(2)債務者の財産をより広範囲に調査できるようになった。

ことです。

これらによって、債権者の債権回収は少しやりやすくなったと思います。
以下、具体的に見て行きましょう。

債務者にどこに財産があるか言わせる制度

以前の民事執行法の改正で、「財産開示」という制度が誕生しました。これは、債務者に対して、裁判所への出頭を命じ、債権者から債務者に対し、財産がどこにあるか、尋ねることができる、という制度です。

※債務者に対して判決をとったり、公正証書をとっても、債務者が全く支払いに応じず、債権者としても債務者の財産がどこにあるか分からず、全く債権回収ができない、ということが数多くありました。財産開示は債務者の財産を把握するために有効な制度として誕生しました。

しかし、驚くべきことですが、債務者は出頭しなくても、また財産があるのに無いと嘘をついても、大きな制裁がありませんでした(30万円以下の科料のみ)。そのため、この制度は殆ど利用されず、やるだけ無駄、実効性が無い、と言われていました。

ところが、今度の改正では、罰則が大幅に強化され、無視したり嘘をついたりする債務者には、6ヶ月以下の懲役、50万円以下の罰金が科せられるようになったのです。すなわち、債務者は財産開示の期日に出頭しなかったり、出頭しても、財産について嘘をついたりすると、上で書いたような重い刑罰が科せられることになるため、大変なプレッシャーを受けることになります。

今後、プレッシャーに負けて、債務者が正直に財産を開示し、あるいは、債権回収に応じる債権者が増えるのではないか、と予想されます。ただ、刑罰は検察官が起訴しないと科せられないため、この制度が開始されてしばらくしないと実効性が分からないところです。

このように、民事執行法の改正で、債務者は正直に財産を開示しなければならなくなったといえます。

より広範囲の財産調査

上の財産開示の手続をとっても財産が判明しない場合は、裁判所を通じて債務者の預貯金・証券、保有不動産、勤務先を調査する手続きができるようになりました。

(1)まず、今回の民事執行法の改正では、裁判所を通じ、預貯金や証券の有無・内容を金融機関に問い合わせることができるようになりました。

(2)また、登記所に対し、債務者名義の不動産が無いかを問い合わせることができるようになりました。

(3)さらに、債権者は限られますが(養育費を請求する債権者、生命・身体を傷つけられたことによって請求債を持つ債権者)、債務者の勤務先を市町村などに問い合わせることができるようになりました。これによって給与を差し押さえることが可能になります。

特に(3)は非常に強力です。(2)も活用できるところです。

あきらめない

以上のように、比較的強力な手続が用意されていますので、債権回収をあきらめず、断固たる手続をとっていきたいと思います。
(とはいえ、債務者にお金が本当にないときは回収しようがないのですが。。。)

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投稿日:2021年3月18日 09:44|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

債権法改正をサクッと理解しましょう

債権法改正がされたことは新聞報道でご存じだと思います。

では、実施の時期は?と訊かれると、?という方が多いと思います。

2020年の4月1からです。
100年ぶりの大改正ということで、非常に重要な改正がありますが、サクッと大事なところをお伝えしたいと思います。

ちなみに、法務省が債権法改正の楽しい漫画を出しているので、是非参照してみて下さい。一般の方はこれで十分です。

http://www.moj.go.jp/content/001311772.pdf

漫画を読むのも面倒、字も多い!という方のために、以下では一言で何が変わったか、私たちはどう対応すべきか、をまとめます。

時効

(どうなったのですか?)
債権の消滅時効の期間が5年に統一されました。今までは、1年から10年まで債権の内容によって違いましたが(弁護士も混乱するくらい色々ありました。)、これからは全て5年と理解しておけばOKです。

※ただし権利行使できることを知らなかったときは10年となっています。また、不法行為といって交通事故で怪我をさせたような場合は3年の時効となっていますので、長らく権利行使していない、されていないという場合には何年で時効になるか、専門家にご相談下さい。

(具体例)
私は、友達にお金を貸して放置していたら返済期限から6年が経ってしまいました。
もう返してもらえないのでしょうか?

→令和2年4月1日に貸したものなら、5年経過しているため、時効で返してもらえないこともあります。それ以前に貸していたなら10年の時効なので大丈夫なことが多いです。

(どう対応すればいいですか?)
権利行使を放置していると権利は消えてしまうことがあるので、改めて理解していただきたいです。
5年という期間はあっという間に過ぎますから、権利行使のタイミングをカレンダーに書き込むなど絶対に忘れないようにして下さい。

保証

(どうなったのですか?)
賃貸の保証人のように根保証(契約の時点で保証対象が確定していない)と呼ばれる保証では、書面で限度額が合意されていなければ無効になります(令和2年4月1日以降の契約です)。

(具体例)
私は自分のアパートを貸すときに賃借人に連帯保証人を用意してもらいました。
しかし、その時の契約書は、令和2年4月1日より以前に作られたものでした。
賃借人が賃料を支払わないときに連帯保証人に賃料を払ってもらえますか?

→限度額を定めた契約をしておかないと無効になり、払ってもらえなくなる可能性が高いです。

(どう対応すればいいですか?)
賃貸をされている方などは、直ちに契約書を見直し、極度額欄を設ける必要があります。
あるいは、保証人を会社にするなど、限度額を定めなくても保証契約が有効になる者を保証人とする工夫が必要です。

瑕疵担保責任の見直し

(どうなったのですか?)
買ったものが壊れていた場合やサービスに欠陥があった場合などに、契約不適合があった場合に、履行の追完、損害賠償、解除、代金減額が請求できることが規定されました。

今までは「瑕疵」という言葉が使われてきましたが、今後は、「契約不適合」という言葉になり、責任追及できる範囲が変わるかもしれません。
被害回復のためのバラエティが増えました。

契約不適合という名前が独り歩きして大きな変更があるというように世間では思われていますが、あまり変わりはありません。

その他

いろいろな改正がありましたが、当事務所では債権法改正の勉強会を10回以上行い、習熟に努めました。
紛争が発生した時は是非ご相談頂くとともに、契約書の改定など、ご相談頂ければと考えております。

投稿日:2020年11月07日 13:43|カテゴリー:最近の法律問題

知らない間に債権譲渡されてた!?建築会社の債権の回収事例

取引先がお金を払ってくれないとき、皆様はどういう対応をされていますか?

借金のかたに●●をとる、ということはよくあります。
たとえば、工場にある機械とかオフィスにある什器備品とか色々です。

取引先が第三者に対して債権を持っている場合には、「債権を担保にしたい。」というニーズがあるのではないでしょうか?

私が関与した事案で、ある会社から債権の譲渡を受け、全額債権を回収できた事案があったので、ご報告します。

(事例)建築会社の債権回収

 
X社は、建築系の請負工事を業務とする会社です。

Y社は、X社に元請からの工事を丸投げしていました。
X社はY社に毎月、工事代金を請求していました。

Y社は徐々に支払が遅れていき、3か月待って欲しいと言って月々の支払を完全にストップしてしまいました。
合計1500万円の未払となってしまいました。

X社としては、Y社が半年後に数千万円入ってくる債権があるため、これで回収しようと思っていました。
X社としては、半年も先の債権であるため、念のため当事務所に相談に訪れました。

(対応)債権譲渡登記事項概要ファイルを確認

念のため、当事務所のパソコンでY社の「債権譲渡登記事項概要ファイル」を閲覧してみました。
(だれでもお金を払えばホームページから見られます https://www1.touki.or.jp/operate/03-12.html

そうしたところ、なんと!回収を予定していた債権が既に別の債権者(金融会社)に譲渡されていることが登記の表示から判明しました。
驚いたY社からX社に「これどういうことなの?」と追及してもらい、債権を戻させました。

その上で、Y社からX社に債権譲渡登記によって債権譲渡をしてもらうことになりました。
無事その債権で取立てができ、全額回収できました。

債権譲渡登記とは?

さて、「債権譲渡登記」とは何でしょうか?
債権は、借金のカタにとるものとしては都合のいいものですが、難点があります。

それは、その債権の債務者に自分の信用不安を悟られてしまうということです。

本件でいうと、Y社は、債権譲渡を行う際、通常は、その債権の債務者に「譲渡通知」をしなければならないのです(民法467条1項)。

このような通知をしては、債務者から「Y社はやばい」と思われてしまい、その債務者は今後Y社との取引をやめてしまうかもしれません。
噂がよそにも広がって取引が失われかねません。

このような債権譲渡の難点を払拭するべく、譲渡通知をせずに債権譲渡をする仕組みが平成10年からできています。
それは、法務局で債権譲渡登記をすることによって、こっそり債権譲渡をしてしまうという仕組みです。

Y社がいよいよ支払を遅滞させるようになったら、債務者に対してX社から譲渡登記がされていることを証拠と共に通知して、債権回収を行います。
このような債権譲渡登記制度はあまり知られていませんが、債権回収の手段として、とても使えます。

まとめ

債権譲渡登記は、認知度の低い制度ですが、知っている人は知っています。
今回のように、債権譲渡登記を調べれば、債権譲渡の有無を確かめることができます。

調べてみて債権譲渡がなされていない債権については、債権譲渡登記をすることで、他の債権者に先んじて債権回収を行うことができます。

みなさんも債権回収のために債権譲渡登記の活用を考えてみたらいかがでしょうか
(但し、相手方の協力が必要なので注意して下さい。)。

投稿日:2020年10月13日 10:13|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

店舗やオフィスを借りるときには期間と中途解約に着目しよう

建物や土地を借りる場合,一般的には,借主側が保護されていて有利だと考えられています。
ところが,借主側にとって,とても不利な内容の契約が取り交わされることがあり,これによって借主が予想外のダメージを受けるケースがありますので,その事例と対策について解説します。

(事例)店舗の借主からの途中解約は可能?

X社は衣服販売を行う小売業の会社です。
業績は順調で,地域の有名スーパー店の隣にある建物を借りて3店舗目を出すことになりました。

X社は,Yさん(地域では有名な地主)から,当該建物を5年間という期間で借りました。
ところが,X社が店舗を借りて3年後,有名スーパーその場所から撤退することになりました。
その後のテナントは未定です。

X社は,スーパーのような集客力のある店舗が隣にあったからこそこの建物を借りていたのですから,スーパー撤退に伴い,速やかに撤退したいと考えています。

しかし,Yさんは,契約書では5年間の賃貸期間となっているため,期間の最後までの賃料を支払ってくれない限り,中途解約には応じられない,と主張しています。
契約書では,特に中途解約の条項が見当たらないため,5年間ずっと借り続けないといけないのか,X社の社長さんはとても悩んでしまいました。

(対策)

こういった相談は頻繁ではないのですが,今まで3,4件はありました。
 
借地借家法では,基本的に借主が保護されています。
たとえば,建物の借主は正当な理由がない限り,建物を追い出されない,というように大変手厚い保護を受けています(定期借家契約を除きます。)。

ところが,建物から出たい,という場合,借主に保護は与えられていません。

もし,賃貸借契約書に「中途解約は許されない。それでも中途解約する場合は,5年分の賃料を一括して支払わなければならない。」という条項があったとしたら,X社も契約時に慎重に吟味していたと思います。

しかし,単純に,
①賃貸期間は5年,
②中途解約条項が定められない,
としか規定がない場合に,X社が中途解約できないというのは酷すぎないか,とも思われます。

一般的な解釈としては,賃貸借契約書において,契約期間をわざわざ定めている趣旨からしますと,当該期間は契約が継続し,中途解約はできないのが原則であると考えられています。
中途解約が規定されていない場合は尚更です。

なので,残念ですが,本件のような事案ではYさんの主張が通ってしまうことが多いです。

ただし,特別な事情があれば中途解約が可能なことも一応ありますし,交渉によって違約金を安くすることができるかもしれませんから,弁護士にご相談頂いた方がよろしいかと存じます。

賃貸借契約は長期間にわたるものですが,ひな形が使われるケースが多いため,特に問題はないだろう,とあまりきちんと目を通さない会社の方は多いです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年10月05日 08:55|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

求人広告トラブル:求人難につけこんだビジネスに気をつけて!!

厚労省のデータによると,平成30年の有効求人倍率は1.61倍であり,前年よりも0.11ポイント上回ったとのことです。
このような大変な求人難の時代において,中小企業の窮状につけこんだビジネスが最近横行していますので,その事例と対策について解説します。

事例

ある日,ハローワークに求人申込みをしたX社のもとに,東京のY社から営業の電話がかかってきました。
キャンペーンでインターネットの求人広告が4週間無料で出せる,と勧誘するものでした。

X社の担当者は「4週間無料」という言葉に飛びつき,Y社から案内のFAXを送ってもらい,Y社の営業担当に言われるがまま,申込書に署名・押印をしてFAX返信しました。

その後,Y社の担当者からは,何の音沙汰もありませんでした。

X社の担当者もY社のことをすっかり忘れてしまったまま,4週間経過後,突然Y社から50万円の支払を求める請求書が送られてきました。

X社の担当者は慌ててY社に連絡を入れましたが,Y社からは,FAX文書中に「規約」があり,4週間が経過すると有料に切り替わる旨,有料に切り替わる4日前までに書面で解約を申し入れる必要がある旨の規定があり,それに同意して申し込みをしたから,広告掲載料を払うのは当然,と言われてしまいました。
たしかにFAX文書には,その旨の記載がありました。

ちなみにY社のホームページは,とても雑で素人が作ったようなデザインで,広告効果は期待できないものでした。

対策

こういった相談は最近大変多くなっています。
規約の内容や手口がほぼ同じであるため,何らかの組織的背景があるのではないか,とすら感じております。

さて,皆さんは「事例」を読んで,解約忘れを利用したあこぎなビジネスであり,こんな会社にお金を支払う義務は無いだろう,と思われたかもしれません。

ところが,本件のような事業者間の取引では,契約書の記載が特に重要視されますし,消費者を保護する法律も原則として適用が無いため,「規約」に記載されたとおりの法律関係が生じてしまう可能性が高いです。
つまり,掲載料を負担せざるを得なくなるかもしれないわけです。

もっとも,本件の場合,有料期間への切換えが全く説明されなかったり,ホームページに広告効果が全く無い等,高度の悪質性を主張し,支払を免れることができるかもしれません。
安易に業者に支払いをせず,速やかに弁護士に相談して頂きたいものです。

そもそもですが,このような被害は,日頃から契約時に書面を隅々まで読んでいれば避けられたことです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年9月04日 10:16|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

7月6日、大分に証人尋問に行きました。

本日は、大分で遺言に関する裁判の期日があったため、朝7:40セントレア発大分行きの飛行機に乗って大分の裁判所に行きました。

大分では、3日前に台風が直撃した上に、前日には梅雨前線が停滞して豪雨となり、大雨警報が発令中とのことで、飛行機内でも、もしかすると中部国際空港に引き返す可能性もあるため、ご了承頂きたいとの放送がありました。
なるほど、機内から見た九州は厚い雲に覆われ、その様子を見通すことができないような状況です。

また、高度が下がると機内がかなり揺れるとのことでした。
最終的な着陸の可否は大分の上空まで行かないと分からないということで、どうなることやら、と思いました。

無事、8:50に大分空港に着陸し、バスで大分駅まで向かうことにしました。

大分空港があるのは国東というところで、大分市までは高速バスで1時間10分もかかります。
証人尋問は、午後1時10分から予定されていますので、余裕があります。

途中、別府市を通りました。別府市は、大分市の隣にあり、同じ湾の中にあるイメージです。楽しそうな観光地を横目に大分市にバスは入りました。

前日の大雨の爪痕が見られるかと思いますが、実は大分市周辺は全く豪雨の影響を受けておらず、又、降り立ったときも小雨がぱらつく程度で拍子抜けしてしまいました。それでも、いつ豪雨が襲来するかと不安でした。

大分駅に10時に到着。大分駅はビックリするほど立派でした。
大きな時計が掲げられた駅ビルは、かなり真新しく大きく、名古屋の百貨店とそれほど遜色はなかったです。

食事は、アーケード街の中にある地元の人に勧められた海鮮の店へ。
そこで、あじの刺身と鶏天プラを頂きました。刺身は新鮮だったし、鶏天プラもおいしかったです。

その後、大分の裁判所へ向かいました。
大分の裁判所までの道程で感じたのですが、町並みは整備されきれいで、岐阜とは大違いです。ビルはどれも新しく、岐阜駅周辺のように老朽化したビルが建ち並んでいるということもありません。アーケードもシャッターが下りてしまっている建物が全くありませんでした。想像以上に大きな街でした。

とはいえ、官公庁はあまり関係無いのか、大分の裁判所は古めかしい昔ながらのつくりで、新しく建てられた別棟のみが現代化されていました。

尋問は午後1時10分から始まり、2人の証人、原告・被告の尋問を行いました。
尋問中は非常に白熱し、敵味方で追及したりされたり4時間緊張が続き、疲労困憊しました。自分としては結果はまずまずだったかな、と思っています。相手方の尋問も巧みで一方的に攻めるといった所までは至りませんでした。止むを得ない結果であったと思います。

帰りは、大分駅で空港行きのバスを待つ間にお土産を買いました。「荒城の月」という大分銘菓を購入しました。銘菓だけに結構高かったです・・・。

大分空港は午後8時10分発のセントレア行きの飛行機に乗り、9時20分に到着。依頼者と別れ、帰路につきました。飛行機は朝と夜の1便ずつしかなく、どうやら羽田とセントレアくらいしか行き先が無かったので、これでよく運営しているな、という印象です。

総じて、遠隔地の裁判は本当にアウェイ感があるので、消耗しますが、得がたい経験ですので、大事にしなければなりません。以前、札幌で尋問したときも良い経験をしたな、と思ったのですが、今回も貴重な経験となりました。
また、機会があれば遠隔地での尋問を経験してみたいと思っております。

投稿日:2017年7月09日 13:13|カテゴリー:随筆・雑文

独占禁止法・下請法研修 ―実務において活用するための手続等について

1 はじめに
平成29年3月2日,弁護士会館5階で,「独占禁止法・下請法研修」が開催されました。
講師は,公正取引委員会中部事務所の総務管理官でした。公取委職員が当会で講演するのは初ではないか,ということで私も心待ちにしていました。
司法制度調査委員会(企画者)から「独占禁止法や下請法の一般的説明に止まらず,弁護士がどう公取委に申請して権利実現をすべきかも説明してほしい。」と依頼していましたが,その期待に正面から応えて頂きました。以下,具体的内容をご報告します。

2 最近の主な事件
最初に,近時の排除措置命令・課徴金命令の事例が紹介されました。入札談合やカルテルの例が挙げられましたが,アメリカやEUにまで波及した事例もありました(アルミ電解コンデンサおよびタンタル電解コンデンサの製造販売業者らによる価格カルテル事件)。課徴金額も100億円を超える事例もあることに衝撃を受けました。

3 独占禁止法の概要
独占禁止法の目的ですが,市場競争を制限する行為を禁止し以て消費者の利益を図るというものであり,公取委は法の解釈適用にあたっては消費者の利益を一番重視しているとのことでした。

(1) 私的独占(法2条5項)
私的独占は,市場をほぼ独占する強大な1社が他社の市場参入を制限するような行動をとるという類型のものです。
日本インテルの他の半導体メーカーに対する競争制限行為について平成17年の勧告審決が下された事例が紹介されました。

(2) 不当な取引制限(法2条6項)
複数の業者が寄り集まって競争制限を行う類型です。価格カルテルや入札談合があります。

ア 入札談合
入札談合については,競争制限の行為の類型・業種・企業規模・違反の経歴・役割の主導性によって課徴金の算定方法は決まっているとのことでした。
課徴金減免申請(リーニエンシー)についても説明がありました。これは,調査開始日前に談合等の違反を公取委に申請した当事者が課徴金を減免される制度で,同制度を導入後,違反の端緒として圧倒的な成果を上げているとのことです。

上記減免申請は,まずは電話等で公取委に相談し,減免申請にあたってはHPからもダウンロードできる所定書式で公取委にFAX送信しなければならないとのことでした。FAX送信日時で受付順位を仮認定する必要があるからだということでした。
上記申請書面は,違反行為をある程度具体的に事実摘示を行うことが要望されました。
なお,立入検査は基本的に予告なしで行うが,立入検査拒否は今まで無かったとのことでした。なので間接強制の制度はあるが,利用されたことは無いとのことでした。

イ 価格カルテル
近時,海外当局による日本企業の摘発例が散見され,特に自動車産業の盛んな愛知では,日本でカルテルの対象となった自動車をアメリカに輸出していることから,米当局に身柄拘束されたり,罰金が課せられるケースがあるとのことでした。

(3) 企業結合(法10,13~16条)
企業が結合して,一定規模になる場合の規制です。
地銀や家電や鉄鋼の合併の際問題があれば,当事者に解消措置を講じさせた上で容認している例が殆どです。
企業結合に関する申請は適用要件や申請書類が細かいため,企業結合で不安なときは早めに公取委にお電話下さいとのことでした。

(4) 不公正な取引方法(法2条9項)
ここで,事前相談制度という制度の説明がありました。事前相談制度では,独禁法に関する問い合わせを公取委から書面で回答してもらえます。
しかし,同制度では,HP上で氏名も含め相談内容が公表されてしまうこと,実際に取引行為を始めてからでは相談できないこと,等から,秘密で相談したいというニーズには合致せず,あまり問い合わせが無いのが実情です。
事前相談制度以外にも,公取委は電話や来庁による一般的な相談を受け付けており,本人でも弁護士でも対応してもらえます。
この場合,相談内容が公表されることはありません。ただ,一般論であるため,回答が曖昧になってしまうという限界があります。
なお,相談の事例は集約され,重要なものは,HPで公表されているので参考にしてほしいとのことでした。

http://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/

不公正な取引方法の類型は8つほどありますが,特に問題となるのが,不当廉売,再販売価格の拘束,優越的地位の濫用です。
不当廉売の事例では,平成27年末に,常滑市のガソリン販売をめぐるユニーオイルとコストコに対する警告事例が紹介されていました。
優越的地位の濫用の事案は,その要件(優越的地位,正常な商慣習に照らして不当,濫用行為)が曖昧であること,立証のハードルが高いこと,から,課徴金が課せられても,訴訟で争われることが多く,なかなか解決までに時間がかかるというのが実情のようです。
このように優越的地位の濫用がなかなか適用が難しく,手続に時間がかかるいことから,下請業者の救済を簡易かつ迅速なものにすべく下請法が存在します。

4 下請法の概要

(1) 下請法の適用範囲
下請法は簡易迅速に手続を進められる一方,その適用範囲には制限があります。
取引内容や資本金によっては適用が無いケースがある点が重要です。
たとえば,単純な製品の売買は適用が無く,仕様が指定されて特別に受注生産したような場合(製造委託)でなければならない等適用条件がありますので,ひとまず電話で確認してもらえればありがたいとのことでした。
また,建設業は所管ではないので,注意が必要とのことでした(建設業法では下請法と同様の規定があります。)。

(2)  親事業者の義務
大きく,書面交付,代金の支払期日を定める,遅延利息の支払,取引記録の作成保存の義務があります。

(3)  親事業者の禁止事項
11の禁止事項がありますが,特に重要なのは,下請代金の支払遅延,代金減額,買いたたきの禁止です。
下請代金は商品受領等から60日以内に代金の支払をしなければならないことになっています。
又,発注時に決められた代金額をいかなる名目でも事後的に控除してはいけません。たとえば,事務手数料等名目で代金を減額する等です。
買いたたきについて,上記の減額と何が違うかですが,減額は発注後に代金を減らすことであるのに対し,買いたたきは発注前から代金が低く決められているような場合を指します。通常の対価を著しく下回る代金額を十分協議すること無く決定することは禁止されています。

なお,下請法違反については,下請業者が自主的に申告することは状況として困難であるため,随時行う書面調査により端緒を得ます。そうして得た端緒をもとに調査・検査を進め,違反事実があれば勧告・指導を行います。これらは強制力を持たないですが殆どの企業が処分に従って対処しています。

5 下請法違反を発見した場合の処理
違反者側で,調査着手前に自発的に違反の申し出をし,違反をやめて相手の不利益を回復し,再発防止策を講じる等すれば,勧告を回避できます。勧告は,社名が公表されるので,これを回避することは重要です。
下請業者側は,親事業者と示談交渉すると共に公取委に相談・申告してプレッシャーをかけることも法の実現に有効です。
なお,公取委への相談は匿名でも可能であり,守秘義務は可及的に守られます。申告の際には,発注書面や支払状況の資料,事実関係の時系列表等を用意してもらえると非常に動きやすいということでした。まずは気軽に電話で相談してみてほしいとのことでした。

6 最後に
講演は,非常に分かりやすく実践的な内容でしたので,今後も講演を公取委にお願いできればと感じました。

 

司法制度調査委員会副委員長 片岡 憲明

投稿日:2017年4月05日 13:47|カテゴリー:最近の法律問題

少年事件の手続きの流れ

20歳未満の方(少年)が罪を犯した場合,20歳以上の方(成人)が罪を犯した場合とは異なる手続きによって処分されることになります。

最近,わき見運転をしていて,自転車に乗っている方をはねて死亡させてしまったという少年事件の付添人をしたので,その事件を例にお話しします。

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(1)まずは警察署に留置

少年は,人をはねて死亡させてしまったので,過失運転致死罪に問われることになりました。そして,人の死亡という重大な結果を生じさせてしまったため,少年は警察に逮捕され,勾留されることになりました。

勾留されると,10日間(延長されれば最大20日間)警察署の留置場に入れられ,取調べを受けることになります。

 

(2)家庭裁判所に送致

成人であれば,取調べが済めば起訴(あるいは不起訴等)されることになりますが,少年の場合,直ちに裁判にかけられることはなく,事件は家庭裁判所に送致され,少年審判を受けることになります。

少年は,観護措置として少年鑑別所で拘束されて,反省文を書いたり,各種のテストを受けたりして,自分のしてしまった行為について反省を深めました。

 

(3)少年審判期日

少年鑑別所に移ってから通常4週間以内に少年審判期日が開かれます。

少年審判期日には,少年と両親が同席し,家庭裁判所調査官,付添人(弁護士が担当します)も立会い,審判官(裁判官)が少年と両親に色々質問します。その後,付添人,調査官が質問して,調査官,付添人が意見を述べます。

そしてすぐに審判官が審判を宣言します。その内容は次の通りです。

① 審判不開始(非行事実が認められない場合等)

② 不処分(保護処分を行わないとする決定)

③ 保護処分(保護観察,少年院送致等)

④ 検察官送致(刑事処分が適当と認められる場合。地方裁判所等に起訴されます。)

人が死亡する等結果が重大であったり,少年の年齢が成人に近かったりする場合には,検察官送致されることが多いです。本件事件も,人が亡くなってしまうという重い事件だったため,少年は検察官送致となりました。

 

(4)その後

地方裁判所に起訴されると,通常の成人の事件と同じ手続きによって進行していきます。

本件少年の事件は,現在地方裁判所に係属中です。少年の将来のために,執行猶予を獲得できるよう弁護活動を続けています。

 

未成年者は,周りの人の影響を受けやすかったり,自分の行動を反省することで考え方を再形成することが可能であったりするなど,成人にはない特徴があります。

刑事手続も成人とは異なる特殊なものなので,お困りの際は専門家にご相談ください。

 

弁護士 大口悠輔

投稿日:2016年11月26日 19:08|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

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