一度認めてしまうと取り返しがつきません
事実と違うことを決して認めちゃいけません。
もし一度でも認めてしまうと,やっていない罪でも有罪になってしまうかもしれません。
- 刑事事件で,私たち弁護士が被疑者に面会に行くとき,必ず被疑者に次のような言葉で警告します。
「事実と違うことを決して認めちゃいけません。
もし一度でも認めてしまうと,やっていない罪でも有罪になってしまうかもしれません。」と。 - そのおかげか,私自身が担当した身柄拘束事件で,ありもしない罪を追加されて起訴された例は一つもありません。
もちろん警察も,自白に頼った捜査をするわけではないので,客観証拠も不十分なまま立件してしまう例は殆ど無いでしょうから,私の場合,心配しすぎかもしれません。 - しかし,交通事故については,強引な捜査がされて,一方的な事実認定がされるリスクが大きいです。
私も数多くの交通事故の民事裁判を経験しましたが,刑事記録を取り付けてみて,依頼者(加害者)の方に「私,そんなこと言ってませんけど。おかしいな。」と驚かれる例が散見されます。 - 交通事故は,死亡事故や飲酒運転でも無い限り,せいぜい罰金刑しか科せられず,身柄拘束もないため,加害者側も比較的気楽に捜査を受けてしまっていることが多いです。
気楽な気分で,警察官の誘導に乗って,事実と異なる供述調書を作成してしまったり,実況見分調書で誤った指示説明をしてしまいやすいのです。
面倒くさい,あまりちゃんと聴いていなかった,書類を見ていなかった,等,いい加減な理由で署名・押印をすると,後日の裁判で大変な苦労をすることになります。 - こうした書面が一旦作成されてしまうと,後で違うと争っても,8,9割方ひっくり返せません。
裁判所は,いい加減な対応をした加害者の供述などまったく信用してくれないのです。 - 当たり前のことですが,交通事故であっても,安易に警察官の誘導に乗ること無く,事実をありのまま申告し,違うことは違うときちんと説明して頂きたいです。裁判官は警察官と違って,自分の言うことを信じてくれる,大丈夫だ,と思い込んではいけないのです。