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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

何もとりきめがない場合の利息

金銭の貸し借りなどで,特にとりきめがない場合,利息は5%となります。ただし,商売の関係だと6%になります。

この利息の利率が下がると自動車保険料が上がるのですが,それは一体どういうことなのでしょう。

 

1 合意があればそれに従う

 金銭の貸し借りで当事者間が利息・遅延損害金の利率を取り決めておけば,取り決めた利率になるのが原則です

 たとえば,年利2%にしたり,年利10%にすることは自由であり,その通りの内容になります。

 もっとも,とんでもない高利の利息を契約すると,貸金業法や出資法などの規制法により,無効になる可能性がありますので,常識の範囲内で利率は設定する必要があります。

2 合意が無い場合は原則5%

 上のような合意が無い場合,民法では利息・遅延損害金を年利を5%と定めています(民法404条)。

 たとえば,交通事故でけがをしてしまったときの損害賠償額についても事故発生日から年5%の利息がつきます。

 したがって,交通事故発生からたとえば5年経過して判決が下ると,本来払わなければいけない金額よりも25%高い金額を支払わされることになります。

 なお,商行為の場合には,商法の適用があるため,年6%となる場合もあります。

3 民法改正のお話

 30年くらい前ならともかく,今のような超低金利時代に,5%は高金利すぎるのではないでしょうか。

 そのような問題意識から,この金利を下げるべきという意見が度々出されていました。

 しかし,今般,報道されているように,民法の抜本改正に合わせ,この利息についても見直しがされることになっています

 どうも3%を初期値とし変動金利制を導入するようです。

 変動するとなると,弁護士にとっては利息計算も細かくなり面倒な話です。

疑問を持つ人

4 自動車保険料の大幅値上げの可能性

 報道では,このように金利が大幅に引き下げられることから,自動車保険料が大幅に上がる可能性が高い,との報道がされています。

 なんで民法の金利が引き下げられると自動車保険料が上がるのか,意味が分からない!と思われるかもしれません。

 実は,交通事故の損害賠償の計算では,後遺障害が発生した場合の逸失利益(障害が無ければ得られたはずの収入に相当する損害)計算にあたって,民法の利息を前提にしていました。

 逸失利益は,将来に得られるはずの収入を現時点で受け取ってしまうものですから,利息分を控除しないと不公平です。その控除される利息を年利5%を前提に計算していたのです。

 たとえば,年収300万円の人があと20年働けたとすると,逸失利益を300万円×20=6000万円と計算できそうですが,そうではなく,5%を毎年割り引いた係数をかけて計算します。20年の係数は12.462ですから,300万円×12.462=3738万6000円となります。この場合では2200万円も金額が違うわけです。

 年利が5→3%に変わると,上記の係数がかなり変わる(大きくなる)ため,被害者にとってとても有利になります。他方で保険会社は多額の保険金を支払わなければならなくなります。

 そのため,報道にある通り,自動車保険料が大幅値上げになることが予想されるわけです。

 現在の金利環境をふまえれば利息を下げることも理解できるのですが,自動車保険料が大幅値上げされると任意保険に加入しない(できない)お年寄りドライバーが増え,おちおち道も歩けない状況になるのでは?と心配するのですが,杞憂でしょうか。

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投稿日:2014年7月10日 14:20|カテゴリー:交通事故, 弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

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