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上場株式の買取請求

上場株式について,合併や減資等に反対する株主は株式買取請求が可能です。
今回は,その手続について,さわりをご説明します。

 
1 投下資本回収のための株式買取請求
会社法上,株主の投下資本の回収方法は,株式譲渡が原則とされているが(会社法127条),譲渡では満足に投下資本を回収できない場合,例えば合併等によって株価が下落したような場合には,例外的に,株主は会社に対して株式の買取を請求できる。

 
2 株式買取請求権を行使する具体的手続
以下,吸収合併に反対する消滅会社株主を例にとり,株式買取請求の具体的手続を説明する(会社法785条及び786条参照)。
①株主総会前に会社に反対の意思表示。
②株主総会で反対の議決権行使。
③合併の効力発生日の20日前から前日までの間に,会社に対して,株式数等を明らかにして(一部行使も可。)買取請求権を行使(以後,撤回は原則不可。)。
④合併効力発生日に株式買取の効力発生。
⑤合併効力発生後30日以内に会社と買取価格を交渉し,交渉決裂の場合は更に30日以内に価格決定の申立を行う。

 
3 株券の電子化に伴う手続
前項に掲げた手続をふめば,会社法上,株式買取請求権を行使できる筈だが,上場株式については,平成21年1月の株券電子化の影響で、④までの間に行う手続がある。

 
(1) 個別株主通知
株券の電子化に伴い,上場会社の株主名簿の書換は,証券保管振替機構からの年2回の総株主通知に基づくことになった(社債,株式等の振替に関する法律151条1,4号)。つまり,株主名簿は年2回しか更新されなくなり,会社が株主名簿でもって現在の株主を特定することは事実上不可能になったのである。
そのため,少数株主権等を行使する株主は,行使の前提として「個別株主通知」を行う必要がある(振替法154条)。
具体的には,株式口座のある証券会社で,「個別株主通知申出書」を提出し,会社に個別株主通知を行うのである(代理人が作成・提出する場合,株主の実印付委任状と印鑑証明書が必須となる。)。

 
(2) 事前の口座振替
第2項④の通り,株式買取請求の効力は合併の効力発生日に生じ,同日対象株式は消滅会社に移転,消滅会社の自己株式になるため,存続会社株式が割り当てられることも無い(会社法749条3項)。
しかし,対象株式を株主口座に残したままだと,口座上,対象株式につき合併に伴う株式割当がされてしまう。一旦割当があると,事後修正に困難を伴う。
そのため,証券保管振替機構では,金融庁等と協議し,買取請求権を行使する株主に対し,合併前に対象株式を会社の自己株式保管口座に振り替えるよう,指導しているとのことである(具体的には「口座振替依頼書」を提出させる)。
もっとも,以上のような取扱は,法令上の根拠も無く(これに反するような条文もある。振替法155条),株主の感覚(対価をもらっていないのに株式名義の移転を先行させることの不公平さ。)にも反するため,上記指導に従うか悩ましい。立法的解決が待たれるところである。

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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