成年後見制度はどういう場合に使われていますか
成年後見制度はどういう場合に使われているのでしょうか。その実情を簡単にご説明します。
- 増えてきた成年後見制度の利用
近年,成年後見の申立てに関する相談が増加しています。
成年後見の相談をされる方が増えたのは,高齢化社会が進んで,認知症のお年寄りが増加したことが背景だろうと思います。
認知症のお年寄りが当事者として各種契約するためには成年後見人が不可欠です。 - 相続紛争の前哨戦
今も昔も,認知症のお年寄りはいましたが,現在ほど成年後見制度が活用されてはいませんでした。
以前はコンプライアンスの意識が低かったので,意思能力に多少問題があっても契約を結ぶのに関係者もそれほど気にしていなかった傾向がありました。
コンプライアンスが重視されるようになった昨今では,きちんと後見人をつけるべきという考えが浸透していると言えます。また,現在,成年後見制度がよく利用される例としては,お年寄りの財産確保のケースがあります。
たとえば,認知症の親を介護するため同居している子供と,そうでない子供とがいて,親の財産の管理方法を深刻な対立が生じたとします。
親と同居していない子供は,親の財産管理から遠ざけられ,事実上手出しできません。
そこで,同居していない子供が成年後見人の選任を申立てることで,親の財産の管理権限を第三者(弁護士等)に移管するのです。
これによって,同居している子供が勝手にお金を使うことはできなくなります。同居していない子供にとっては,後見人の費用だけ遺産は減りますが,不正支出がされるリスクが無くなるわけです。
このように成年後見制度は,相続紛争の前哨戦(財産保全)として利用されているのです。
- 成年後見人を選任しなかった場合
ここで,あれ?と疑問に思われるかもしれません。
たとえ成年後見人をつけなくても,不正支出があった場合には,相続開始後に同居している子供に責任追及ができるのではないか?と。しかし,不正支出かどうかは,証拠上分からないことがあります。
また,相続財産のほとんどを費消されてしまったら,あとで相手方から取り返すのは手続上困難を伴います。結局,不正支出を事前に止める方が手間が少ないことが多いです。