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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

支払ってもらえない退職慰労金

 株式会社の内紛で創業者メンバーの1人であった取締役の方がいきなり解任され,追放されるといったことがあります。

 この場合,追放される取締役は,どんな法律上の保護が受けられるでしょうか

 しろうと的には,たとえば,①任期までの役員報酬,②退職慰労金,それから,③株式を持っていれば株式譲渡ができるのではないか,と考えられます。

 しかし,この中で,法律上与えられている取締役の保護は,①のみです。

 仁義として,②③をやってくれてもいいじゃないか,と思われるのは至極もっともなのですが,そのような権利を会社法は認めてくれていないのです。

 ②については,退職金規定がない場合はもちろん,退職金規定がちゃんとあったとしても,株主総会において退職慰労金の支払いに関する決議が得られない限りは,取締役に権利はありません

 よって,当該会社の株式の大半を対立相手が保有している場合は,株主総会決議を得られず,退職慰労金も満足に支払ってもらえない可能性があるのです。

 ③についても,株式の買取義務は当該会社にも他の取締役にもありませんから,いわば温情的に買ってもらうしかありません。

 多くのケースでは,追放される取締役の株式は不当と言ってよいほど安い値段で買いたたかれています。でも,非上場の株式だと,買ってもらえないよりマシなので,上場する可能性が無い限りは,安い値段でも買い取ってもらった方が有利だと言うことになります。

 このように,追放される取締役の保護は極めて薄いものです。

 労基法で守られている労働者とは全く異なりますので,中小企業だと役員になることが逆にリスクになるとも言えるのです。

クビ宣告

 

 

投稿日:2014年3月20日 07:38|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

シフト制と有給休暇

 従業員が会社を辞めるとき,あまっている有給休暇を使い切って辞めるというのが一般的です。

 そのとき,残っている有給の日数が何日あるか会社と従業員との間でトラブルになることがたまにあります。

 就業規則があって,有給の届出制度もきちんとしている会社ならトラブルはありませんが,10人以下の従業員で,就業規則も無く,雇用契約書もきちんと取り交わされていない会社では,従業員のとったお休みが公休日なのか,有給日なのかよく分からなくなる場合があります

 たとえば,従業員同士が休みを調整するシフト制を採用しているような会社では,シフト上の「休み」が公休日なのか有給日なのか曖昧になります。

 有給の届けをしていない以上,その休みは公休だ,よって有給日は1日も消化していない,などと従業員から主張されるおそれがあるのです。

 会社側からしてみれば,夏期や正月の時期に長期間休んでいるのに,これがまったく有給扱いされないのは理不尽だ,と感じられるかもしれませんが,有給日・公休日の区別がされていない場合,特段の事情が無い限り,公休扱いと解釈されてしまう可能性が高いのです。

 特に,求人募集などで夏期や正月休みありなどと記載している場合や,夏期や正月に会社全体が休業している場合は,公休扱いとの解釈にほぼなってしまうでしょう。

 会社側は曖昧な取り扱いをするべきではありません。

 会社側としては,きちんと就業規則や雇用契約書で公休がどうなっているかを明らかにするとともに,有給日については有給の届出書類を提出させ(従業員に有給の申請をさせる),公休と有給日とをきちんと区別しないと損をしてしまうことになります。

 

 

 

投稿日:2013年11月22日 10:45|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

飲酒運転で職を失う

 飲酒運転に対する社会の目はどんどん厳しくなっています。

 最近では,行政処分や刑事処分が厳罰化され,認知されるようになったためか,飲酒運転自体相当減少していると言われています。

 近時,東京高等裁判所(東京高裁平成25年7月18日判決)で,プライベート酒気帯び運転による物損事故を起こし,逮捕・新聞報道されるとともに,罰金刑を下された労働者について,懲戒解雇=有効,退職金=7割カットとする裁判例が下されました。

 この労働者は,郵便局で集配業務を担当する従業員だったようですが,本当につまらないことで職を失い退職金の7割を失うことになりました。自業自得だとは言え,なかなか重い制裁です。

 ただし,この裁判では,使用者である日本郵便(株)が退職金の全額カットを主張していましたが,7割カットの限度に止められました

 裁判所はそれ以上退職金を減額するのは行き過ぎだとの判断を下したのです。

 なお,労働者が,仕事で自動車を利用することのない窓口業務の従業員であったならば,懲戒解雇が認められなかった可能性もありました

 労働者としては使用者の一方的な言い分を鵜呑みにすべきではないと思います。

 他方,使用者も,感情的になったり,他の従業員への見せしめという意味合いで,苛烈な処分を下しがちですが,かえって余計な費用を支払うことになりかねませんので,慎重に対応して頂く必要があります。

投稿日:2013年11月12日 10:13|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

労働時間の自己申告制

 今日,ほとんどの会社でタイムカードが設置され,正確な労働時間管理がなされるようになりました。

 しかし,あえて労働時間を自己申告させている会社は少ないながらあります。

 もちろん,自己申告じゃなければ時間管理ができない外回りの仕事が多い(直行直帰が多い)労働者が在籍する会社なら自己申告制をとるのはやむを得ないですが,そのような事情もないのに自己申告制を維持してる会社があります。

 おそらく労働者に促して残業時間を短く申告させることができるから,好都合だ,という考えがあるのではないでしょうか。

 このような安易な時間管理が行われないよう,厚生労働省は,原則としてタイムカード等の客観的な記録をすること,自己申告制を採用せざるを得ない場合も使用者は労働者に対して十分な説明と実態調査を行い,また,労働時間の上限設定等をしないよう通達を出しています(平成13年基発339号)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ufxb-att/2r9852000000ugaf.pdf 。

 したがって,上記のような考えで自己申告制を採用している会社は,労働基準監督署に調査に入られたとき,全従業員に対する未払残業代の支払を余儀なくされる危険があります。また,個別に従業員から未払残業代の請求や付加金の請求がされ,紛争になるおそれもあります。

 むしろ,タイムカードでしっかり時間管理をして,無駄な残業時間にメスを入れた方が全体として良かった,ということにもなりかねません。

 以上のことから,企業の側から相談があった場合,トラブル回避のためタイムカードで管理することを推奨するようにしています。

 

投稿日:2013年10月25日 16:49|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

落とし穴~労災保険給付と求償

  1.  労災保険給付の求償については驚くべき落とし穴がある場合があります。
  2.  ある会社の工場で従業員がリフトカーで作業していたところ,歩行中の清掃員をリフトカーでひいてしまいました。

     清掃員は大けがを負ってしまいました。後遺障害も遺りました。

     清掃員は,労災認定を受けて,400万円の給付金支給を受けましたが,後日,労災からその会社に対し400万円のうち320万円を国に払いなさいという請求が来ました。

  3.  通常,労災給付金が支給されても,給付金の一部を求償されることはありません

     では,なぜ,その会社が給付金の一部を払えと請求を受けたのでしょうか。

     実は,その清掃員が当該会社の子会社の従業員だったからです。

  4.  労災の求償に関する通達(昭和44.3.23基発148号)では,求償しない労災事故の事案を次の場合と規定しています。
    同僚労働者の加害行為による場合
    同一事業主の事業場を異にする労働者の加害行為による場合
    同一作業場内において同時に作業を行う使用者を異にする労働者の加害行為による場合
  5.  ①②の場合に求償しないのは,結局,労災の掛金をその使用者が払っているのであるから,求償すると,何のために使用者が掛金を払っているか分からなくなる,という理屈から分かります。いわば当然のことです。

     しかし,③については,少し趣旨がはっきりしません。

     監督署では,③は,加害者と被害者が同一作業場において互いに危険を共有しているかどうかで判断するという解釈をとっているそうです。

     上記のケースだと,たしかに,③同一作業場内で同時に作業を行っているのですから,あてはまりそうですが,清掃員がリフトカー作業員に危害を加えるといったことは想定できないため,③に該当しないと判断されます。

     釈然としませんが,本来的には国から加害者に求償するのが原則ですから,求償しない場合を限定的に解釈しても,それは国の勝手だ,ということでしょうか。

投稿日:2013年8月02日 08:34|カテゴリー:労働問題

増えるメンタル関係の労災支給決定

 会社内でメンタルヘルスの問題が増加しています。それに伴って,メンタルヘルス絡みの労災支給決定も増加しつつあります。

 以前は,業務を原因とした精神障害(たとえば鬱病)が発生したとして,労働者側が労災認定を請求してもなかなか認められませんでしたが,最近,この傾向が変わってきています。

 厚生労働省の資料として,次のようなものがあります。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7-att/2r9852000001f1o2.pdf

 表2-1によりますと,精神障害の労災補償に支給決定率が,それまで30.3%だった決定率が平成24年度に一気に39.0%まで増加していることが分かります。

 このように急激に決定率が増加したのは,精神障害の労災の認定に際して,「業務による心理的負荷評価表」が使用されるようになったことが理由だそうです。

 どういうものかは,http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120118a.pdf をご覧頂きたいのですが,会社での出来事の労働者に与える心理的負荷を数字で評価して,合計点が一定以上だと,精神障害を認める,という基準をもうけたことが一因だそうです。

 たとえば,退職を強要された場合,退職の意思がないと言っているのに,執拗に退職を求められた場合や理由を説明されないまま解雇された場合には心理的負担の強度がⅢとなるなど,です。

 労災支給決定が出ると,会社としては,その後に,安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求される可能性もありますから,労働者に重い心理的負荷をかけ続けないよう,コントロールすべきだということになります。

 

投稿日:2013年7月31日 11:05|カテゴリー:労働問題

職場内のいじめは早めに解決

 最近,学校でのいじめ問題がマスコミをにぎわせていますが,職場においてもいじめ問題は存在します。

 学校と違って,いじめる方もいじめられる方も大人ですから,当事者同士で解決できるはず,と思われるかもしれません。

 しかし,いじめられる方が,無口な人であったり,ため込んでしまったりする人だと,重大な結果を招きかねません。やはり,芽が小さいうちに解決すべきです。

 もし,あなたが管理職や経営者で,部下からいじめの報告が上がってきたら,直ちにいじめの事実の有無を積極的に調査し,速やかに善後策を講じて,職場環境の調整をする必要があります。

 それをしないまま,その部下が精神疾患となり自殺してしまうようなことがあれば,安全配慮義務違反があったとして,自死に関する莫大な損害賠償責任を負担するおそれがあります(安全配慮義務というのは,雇用者側が職務から生じる一切の危険から職員を保護しなければならないという義務のことです。)。

 いじめ問題を放置して安全配慮義務違反が認められた例として,東京高裁平成15年3月25日判決があります。

 同判決では,適切な措置を講じていれば,職員が職場復帰することができ,精神疾患も回復し,自殺に至らなかったであろうと推認できる,と述べ,雇主(市)の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を認めました。

 もっとも,いじめがあればいじめた方を厳しく処分すればいいかというと,そう単純ではありません。

 以前,当事務所で対応した団体交渉の事案では,いじめをした当事者が,経営者に対し,労働組合を通じて,いじめを理由とする懲戒処分の白紙撤回を要求してきたことがありました。

 労働組合の担当者曰く,これはいじめではなく,職員間の喧嘩に過ぎず,経営者が職員間の喧嘩に口出しすべきではない,とのことでした。

 「いじめ」を職員間の喧嘩だと軽くとらえるならば,たしかに経営者が口出しすべき事柄ではないかもしれません。

 しかし,上記のような重大な事態に発展する可能性を考えると,組合の意見には賛同できません。

 いじめの有無や程度については緻密に調査した上,厳格な対応をとるべきではないかと感じています。

 

投稿日:2013年7月22日 19:29|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

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