支払ってもらえない退職慰労金
株式会社の内紛で創業者メンバーの1人であった取締役の方がいきなり解任され,追放されるといったことがあります。
この場合,追放される取締役は,どんな法律上の保護が受けられるでしょうか。
しろうと的には,たとえば,①任期までの役員報酬,②退職慰労金,それから,③株式を持っていれば株式譲渡ができるのではないか,と考えられます。
しかし,この中で,法律上与えられている取締役の保護は,①のみです。
仁義として,②③をやってくれてもいいじゃないか,と思われるのは至極もっともなのですが,そのような権利を会社法は認めてくれていないのです。
②については,退職金規定がない場合はもちろん,退職金規定がちゃんとあったとしても,株主総会において退職慰労金の支払いに関する決議が得られない限りは,取締役に権利はありません。
よって,当該会社の株式の大半を対立相手が保有している場合は,株主総会決議を得られず,退職慰労金も満足に支払ってもらえない可能性があるのです。
③についても,株式の買取義務は当該会社にも他の取締役にもありませんから,いわば温情的に買ってもらうしかありません。
多くのケースでは,追放される取締役の株式は不当と言ってよいほど安い値段で買いたたかれています。でも,非上場の株式だと,買ってもらえないよりマシなので,上場する可能性が無い限りは,安い値段でも買い取ってもらった方が有利だと言うことになります。
このように,追放される取締役の保護は極めて薄いものです。
労基法で守られている労働者とは全く異なりますので,中小企業だと役員になることが逆にリスクになるとも言えるのです。