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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

株式の内容は株式ごとに変えられる

 平成26年2月19日,東京証券取引所が,複数議決権方式を利用したCYBERDYNE(株)の新規上場を承認しました。複数議決権方式の会社の上場は日本で初めてだということです。

 CYBERDYNE(株)は,身体機能を改善させるサイボーグ型のロボットを発表した会社として有名です(http://www.cyberdyne.jp/products/HAL/index.html)。メディアにも結構取り上げられ,注目も高いです。

 具体的に同社にはどのような議決権が存在するか,ですが,①上場する株式の方の議決権と,②上場しない株式(B種類株式)の議決権が,1:10なのだそうです(つまり,②の株式が①よりも10倍の議決権を持つということです。もっとも,配当は株式数に応じて平等だそうです。)

 このように,会社の株式について複数の内容を認めることは,会社法上認められており,非上場の小規模な会社においては,色々と活用されてきました。

 たとえば,私が経験したある事案では,ある人物の株式(株式数は全体の90%もありました。)だけ定款変更により議決権を完全に無くしてしまい,その人物の相続人が議決権を行使できない状態にされていた,というものがありました。

 この会社では,残り10%の株式を保有する人物が会社経営を支配することができます。被相続人としては,相続人に是が非でも会社経営をさせたくなかったのでしょう。

 このような極端な内容の株式も,株主たちがいいと言うならば,自由に作り,普通の株式と併存させることができます。

共同出資

 ただ,上場している会社の場合は,多数の関係者が株式を取引するので,内容が異なる株式がいくつもあると混乱のもとです。よって,東証は,議決権の内容が異なる株式が発行される会社についての上場を禁じていました。その規則が2008年に改正され,上場が許されるようになったのですが,ようやく今回第1号が出たのです。

 今後,このような複数議決権方式の会社の上場がどれだけあるかは分かりませんが,柔軟な資金調達の見地からは,望ましいことです。

 

投稿日:2014年3月27日 11:33|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

原状回復費用の相談がありました

 

 先日,「原状回復費用は意外に高くならない」というテーマで投稿させて頂きましたが,偶然,その翌日にあるお客様から,原状回復についてのご相談がありました。

賃貸住居?

  最近,退去をした物件で,建物管理会社(名古屋では大手の業者でした)から,「原状回復費用が30万円くらいになる。20万円の保証金は返せないし,むしろ,追加で10万円支払ってもらいたい。」という連絡と見積書が届いたそうです。

 

 お客様によると,10年借りていたけど,汚損した部分も無い,とのことで,なぜそのような高額な請求になるか理解できない,とのことでした。

 私からは,原状回復ガイドラインに違反するような請求の可能性があるので,抗議した方がいい,とアドバイスしました。

 それから数日後,そのお客様から電話があった際,管理会社から,突然,保証金を5万円だけ返すという解決でどうか,と連絡があったとの話でした。

 このように,早期に大幅な減額提案があると,果たして最初の提案が妥当だったのか,大いに疑問です。

 根拠も無く高額な原状回復費用をふっかけて,ごねる人にだけは譲歩するという手法はあまり感心できないものです。

 電卓と家

 

 

投稿日:2014年3月06日 09:53|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

意外に高くならない原状回復費用

 皆さんは,賃貸住宅にお住まいになられた経験が1度くらいあるのではないでしょうか?

 賃貸住宅を借りる際には保証金や敷金を大家さんに差し入れるのが通常ですが,これらは家賃が未払になったときや退去時に部屋に汚損・傷等がある場合の原状回復費用を担保するためのお金です。

 このうち,家賃未払は賃借人も自覚しているでしょうから,もめることはありません。問題は,原状回復費用です。

 きれいに使っていて目立った傷も無いのに原状回復費用が請求されたり,傷があるのは確かだけど原状回復費用が異常に高かったりして,結果的に保証金はゼロ,と連絡されることもあります。

 感覚的には,たしかにひどい使い方をしていれば保証金がゼロになることはありますが,特に傷をつけていなければほぼ全額に近い金額が返還されるべきものです。

 まず,賃借人が負担しなければならない原状回復費用は,特別損耗に関するものに限定されます。

 特別損耗とは,通常使用で経年劣化した部屋の汚れ(通常損耗)を除く,賃借人の故意・過失により,部屋を汚損させたような場合を指します。

 そして,特別損耗が発生している場合でも,賃借人が負担すべき原状回復費用は,当該部分の修復に必要な費用に限定されますし,減価償却を考慮に入れることも可能です。

 たとえば,壁クロスの一部を汚損させたとしても,汚損部分のみ張り替えることができるのであれば,一部分のみのクロス張り替えだけ負担すれば足ります。

 また,長年住んでいたならば,壁クロスの価値も毎年減価している筈ですので,新クロスの張り替え費用の一部を負担すれば足ります。

 つまり,原状回復費用としては,大家さんが請求する金額の一部の一部で済むこともあるということです。高額すぎる原状回復費用が請求された場合は,相談して頂きたいです。

賃貸住居?

 

投稿日:2014年2月27日 17:03|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

医療法人の理事長の権限

 当事務所では,社団医療法人内での経営紛争の相談をいくつも受けた経験があります。

 特に理事長と他の理事が経営方針で対立するような場面では,理事長の権限の大きさを考慮する必要があります。

 理事長の権限ですが,医療法46条の4では, 医療法人の代表権は理事長のみに帰属すると定められています。

 つまり,理事長は医療法人の代表者として,医療法人のためにいかなる契約も締結することができるのです(もちろん,医療法人の目的外の行為はできませんが。たとえば,理事長個人が使うためにリゾートマンションを医療法人で購入する,などです。)。

 では,理事会や社員総会で,理事長の権限を制限する決議をした場合はどうでしょうか。

 これについては,解釈上,医療法77条が一般社団法人及び一般財団法人77条5項を準用していないため,理事長の代表権に加えた制限は第三者の善悪にかかわらず対抗できない(つまり相手方が制限があることについて知っていても争えない),と解釈されています。

 つまり,いったん理事長になってしまえば,極めて強大な権限を有することになるのです。

 したがって,理事長が身勝手な行動をしているようなケースでは,理事長の行動に待ったをかけるためには究極的には理事長職を解職するしか無いことになります。

 しかし,理事長職の解職には大変な困難を伴います。そのことについては,また次の機会にご説明したいと思います。

病院建物画像

 

投稿日:2014年1月30日 13:32|カテゴリー:医療法務, 弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

賃料の増減額請求

 世間ではあまり知られていないことですが,一定の場合,借りている土地の賃料の改定を請求できることがあります。

 たとえば,工場を建てるために土地を借り,工場を建設したがが,土地を借りたのがバブルの頃で,賃料が異常に高い場合,賃料の減額を請求できる場合があります(借地借家法11条)。

 当事務所で扱った件では,借り手の立場で事件を受任し,小泉政権下で定められた賃料を数万円減額した例があります。

 しかし,このような賃料の改定を請求できる賃貸借は,「建物所有目的」の賃貸借に限られます。

 たとえば,青空駐車場として借りているような土地については,借り手がそこに建物を建築する目的で借りているわけではありませんから,「建物所有目的」にはなりません。よって,賃料の改定を請求することはできないということになります。

 なぜ,建物所有に限られているかというと,建物所有目的だと,賃貸借が長期間になることが前提となっていますし,建物を取壊しから保護すべきですから,長期間の賃貸借が不合理とならないよう柔軟な賃料改定が必要だからです。

 問題は,ゴルフ場などで,土地の一角にクラブハウスを建築するような場合,です。

 果たして,「建物所有目的」で土地を借りたと言えるでしょうか。

 旧借地法の裁判例では,ゴルフ練習場として使用する目的で土地が賃貸された場合には,たとえ事務所用建物を建築することが予定されていたとしても,建物所有目的にあたらないと判断しています(但し,契約期間が争いとなった裁判例です。)。

 そうだとすると,一般的にゴルフ場の賃貸借契約については,賃料の改定は難しそうです。

 近時,最高裁で,ゴルフ場を経営するために借りている土地について,借り手側(ゴルフ場経営会社)の地代減額請求を棄却した裁判例がありました(最高裁平成25年1月22日判決)。

 この裁判の事案では,どうやら問題となっている土地上には建物が建っていなかったようですので,どちらにしても,建物所有目的では無いと判断されたでしょうが,仮に,なにがしかの建物が建築されていた場合,最高裁がどう判断するかは明確で無いと思います。

 ゴルフ場経営のために土地を借りる場合は,長期に亘って借りることを前提にしていますし,賃料の改定を認めても良さそうですが,皆さん,どうお考えになられますでしょうか?

投稿日:2013年7月25日 10:47|カテゴリー:最近の法律問題

ショムニで描かれた,従業員を監視する会社

 先週より,人気ドラマ「ショムニ」の2013年度版が始まりました。

 「ショムニ」は,会社から使えないと烙印を押された従業員達が,雑務ばかりをやらされる「庶務二課」(ショムニ 今でいうところのリストラ部屋ですね。)なる部署に送られ,様々な迫害を受けながらも,江角マキコをはじめショムニの面々が,たくましく能力を発揮し,むしろ会社を窮地から救う,という,痛快ドラマです。

 江角マキコが,OL制服に身を包み,脚立を担ぎ,廊下をねり歩く姿がとても印象的です。

 さて,

 昨日放映されていた「ショムニ」の第2話では,

会社が業員のインターネット閲覧履歴やメール送信歴を全て閲覧できるようにし,従業員を監視するという内容でした。

 近時,会社のパソコンがインターネットに常時接続しているため,仕事をするふりをして,業務とは無関係のホームページを閲覧して業務をさぼっていたりSNSで内部情報を流出させてしまったり,といった問題が頻発しており,会社が従業員を監視する必要性も高まってきました

 ショムニは,いささか大げさに描かれていましたが,多くの会社で,多かれ少なかれ,一定の監視がなされてきていると感じています。

 このように会社の監視が日常的になった結果,従業員の職務怠慢の事実を掴んだ会社側が,安易に従業員に懲戒処分を下してトラブルになるケースが増加してきました

 安易な懲戒処分は認められていないのが実情です。

 たとえば,
1日あたり2通の私用メールをしていた場合に職務専念義務違反にはあたらない,とした裁判例(東京地裁H15.9.22判決),
7か月のうちに28回の私用メールをしたこと,チャットソフトをダウンロードしたこと,を理由とする減給処分が無効とされた裁判例(札幌地裁H17.5.26判決),
6か月間に1700件余りIPメッセンジャーで私的連絡をしていた従業員に下された解雇処分を無効とした裁判例(東京地裁平成19年6月22日判決)
などがあります。

 要は,常識論でしょうが,社員同士の世間話の延長的なものは,会社も許容しなければならないでしょう。

 会社は,就業規則で私的なメールやHP閲覧を厳しく制限し,また,従業員に周知徹底をさせておかないと,懲戒処分を下すのも容易ではありません。

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投稿日:2013年7月18日 17:02|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

ややこしい国際取引紛争

 グローバル化した今日,商品を海外から仕入れて国内で販売することは非常に多くなりました。

 それに伴い,国際取引にまつわる紛争も増加しつつあります。当事務所でもいくつか国際取引に関する相談があります。

 国際取引にまつわる紛争については,2つの大きな問題があります。

 1つ目は,①日本の裁判所で訴訟ができるか(管轄の問題),2つ目は,②どこの国の法律が適用されるか(準拠法の問題),です。

 まず,①日本の裁判所で訴訟ができないならば,相手方の国で紛争を解決するほかありません。したがって,裁判管轄がどこになるかは最重要です。

 それよりは重要度が劣りますが,2つ目の②準拠法の問題も重要です。

 仮に日本で裁判ができるとしても,どこの国の法律が適用されるかで当事者の有利不利が決まることがあるからです。

 読者の方の中には,日本で裁判するのに日本法を適用しないの?と驚かれる方もいらっしゃるでしょうが,実際,日本の裁判所では他国の法規が解釈適用されて判決が下される場合もあるのです。

 これら①②の事項は,極めて重要な事項ですので,契約書にきちんと謳っておくのが一般的です。しかし,ごく稀にきちんと定めていない場合があり,こういった慎重でない契約をする時に限って,紛争が生じがちです。

 契約締結の際には,売買条件等にばかり目が行きますが,紛争可能性を常に視野に入れて,管轄や準拠法等の契約条件をきちんと定めることが,無用な紛争回避や費用支出を回避する第1歩になると思います。

 なお,①管轄や②準拠法については,色々法律や判例がありますので,またの機会にアップしたいと思います。

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投稿日:2013年6月07日 19:08|カテゴリー:中国情報, 弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

テレビガリレオの第7話犯人の動機

 現在,視聴率20%代をキープしている東野圭吾原作のテレビガリレオの第7話で,相続が犯人の動機になる場面がありました。

 父,母,子の3人家族で,父母が何者かに殺害された状態で発見され,発見時には,先に父が殺害されその後に母が殺害されたような物的状況となっていました。

 真相は,父が母を殺害した後,自殺したというものなのですが,犯人(子)は,その死亡順序を父→母に偽装したのでした。

 偽装の動機について,子供が母の連れ子で,父と養子縁組をしていなかった事実が明かされます。

 もし,母→父が死亡順序だと,父の遺産は,養子縁組していない子には相続されません。しかし,父→母だと,父の遺産は母に相続された後,連れ子に相続されることになります。

 これはミステリーで定番の法的知識でもあり,謎解きの前におおよその筋が分かってしまいました。

 ミステリーのトリックを見抜くとすぐに人に喋ってしまいたくなるのが人情ですが,一緒に見ている家族のためにはぐっと我慢しなければいけませんね(笑)。

 ちなみに,興醒めなことを申し上げると,この件だと,連れ子は,母の父に対する損害賠償請求権を取得し(殺されたため),これを相続することになりますから,実質的に父の遺産の一部を取得できることになります。

 そこまで調べてもらえると,我々弁護士としても,「よく勉強しているなー。」と思えるのですが,さすがに言及はありませんでした。

ミステリ

 

投稿日:2013年5月30日 09:57|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題, 随筆・雑文

振り込め詐欺に対する有効な対抗策

 振り込め詐欺の被害については,広く社会に認識されるようになっているので,なぜ未だに無くならないのか,疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

 しかし,詐欺の手口は日々巧妙化しており,金融庁とか弁護士などの肩書きを名乗られたり,何人もの人間から責め立てられるように電話が入ってくると,一人暮らしの高齢者は指定された口座に振り込んでしまうのです。

 基本的に一旦振り込んでしまうと,取り戻すことはほぼ不可能ですが,唯一,「少しは」有効と思われる回収手段があります。

 それは,銀行振込を利用した犯罪行為(例えば、振り込め詐欺やヤミ金融など)の被害者から依頼を受けた弁護士が,所定の書式で,振込先銀行にFAXを入れ,振込先銀行において当該口座を凍結してもらい(必ずではないですが),しかるべき手続を経て,凍結口座の預金を分配してもらえるという制度です。

 振り込め詐欺等の被害者の財産を守るためには,振り込んだ預金口座を一刻も早く凍結させることが必要ですが,おそらくこの方法が最も迅速ではないかと思います。しかし,一般に相談頂くのが,被害後数日を経過していることが多いので,空振りに終わることが多いのが実情です。もう少し早ければ,と,無念でなりません。

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投稿日:2013年5月16日 15:45|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

割に合わないインサイダー取引

 現在アベノミクスで株価が上昇し,株式の取引が活況を呈しています。皆様も株式取引には大きな関心を寄せていらっしゃるのでは無いでしょうか。

 こうした株式取引が活発な状況下では,インサイダー取引の摘発例も多くなります。

 インサイダー取引というのは,皆様もよく耳にされると思うのですが,会社と特別な関係を持つ者が,その地位ゆえに一般投資家が知り得ない,投資判断に影響のある重大な情報を知り,その情報が公表される前に,証券取引を行うような場合を指します。NHK職員によるインサイダー取引の例などは記憶に新しいのでは無いかと思います。

 こうした取引は,投資家の信頼を損ない,市場の公正性を傷つけることから,厳しく金融商品取引法で禁じられています。

 インサイダー取引は,目の前にえさがぶら下がっているようなものですから,多くの方が手を出してしまいがちです。バレないだろうという思いもあるのだろうと思います。しかし,インサイダー取引を監視している証券取引等監視委員会によれば(職員の方から直接お聴きしたことがあります。),独自の調査に加え,広く公衆から情報提供を受け付けていて,タレコミも多数あるそうです。

 そうしたタレコミからインサイダー取引が露見して,告発されてしまった場合,刑事罰は重く,5年以下の懲役,500万円以下の罰金(金商法197条の213号),さらに利益が没収・追徴されるという刑事制裁を受けることになります(同法198条の2第1項・2項)。刑事制裁までいかなくとも,課徴金という行政的制裁があり,利益はゼロとなるばかりか,マイナスになりかねません。

 このようにインサイダー取引はバレてしまうと重い制裁を受けるし,どこからバレるか分かりません。

 また,インサイダー取引に該当するケースは意外に広いため(今後ご紹介できたらと思います。),証券がらみでいいネタがあると言われて飛びつくと重大な結果を招きかねません。甘い話には乗らないというのが鉄則でありましょう。

 

投稿日:2013年5月15日 17:10|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

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