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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正

共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正がありましたので、アナウンスさせて頂きます。

共有関係の解消に関する法改正

共有関係の解消を促進する必要性とは?
被相続人が土地を生前に所有していた場合、当該土地は相続人間で共有されることになりますので、当該土地を売却したり賃貸したりするためには、他の共有者の同意が必要となってきます。
しかし、共有者間での土地の管理方法等に関する話し合いがまとまらないために、土地の活用を諦めて当該土地を放置するケースが出てきており、これが社会問題となっております。
そこで、土地を放置するケースを減らすために、共有関係の解消をしやすくするための法改正がこの度なされました。

具体的に何が変わったのか?
大きな変化としては、以下の3点が挙げられます。
①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
以下、上記①から③について説明していきます。

①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
・共有物分割訴訟の要件について、改正前は、「協議が調わないとき」しか条文には明記されていませんでしたが、一部の者が協議に応じない等によりそもそも「協議をすることができないとき」も含まれることが明らかになりました。
・裁判による共有物分割の方法として、⑴現物分割(共有不動産を分筆して、分筆されたそれぞれの土地を、共有持分権者がそれぞれ取得する方法)⑵代償分割(一部の共有者に土地を取得させ、それ以外の共有者が土地を取得した共有者から代償金を受け取る方法)⑶競売分割(競売により土地を売却し、かかる売却代金を共有者間で分ける方法)の3つの方法を明示し、⑴と⑵の分割方法は同列で選択可能、⑶の分割方法は、⑴と⑵のどちらの方法も採ることができない場合に用いられるものということが条文上明らかとなりました。
 以上のとおり、要件や分割の方法等が条文で明記されることになりましたので、共有物分割訴訟がどのような手続なのかを一般の方も理解しやすくなりました。

②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
改正前は、遺産については、家庭裁判所による遺産分割の手続によるべきとされており、地方裁判所による共有物分割訴訟はできませんでした。
しかし、法改正により、相続開始から10年間、遺産分割手続が行われていない場合、遺産分割を経なくても共有物分割訴訟を提起すれば、共有関係を解消することができるようになりました。
※但し、遺産分割の請求を求める相続人から異議の申出があった場合はできません。

③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
改正前にはありませんでしたが、法改正により、例えば、共有者のAさんが所在不明の場合、他の共有者のBさんが裁判所に申し立てをすると、Aさんの共有持分を、Bさんが取得することができるようになりました。
これにより、共有者の一人が所在不明であるために、土地を活用することができないという問題を解消することができるようになりました。

所有者不明土地の解消に向けた法改正

そもそも所有者不明土地とは何か?
登記の記載が不十分であったり、亡くなった方の名義のままになっている等の理由で所有者が不明、又は所有者の所在を知ることができない土地のことを指します。

所有者不明土地の問題点とは?
例えば、道路または公共物を建築するのに土地を収用する必要がある場合に、土地所有者に連絡をとることができないために、収用手続が進まなかったり、土地所有者に連絡がつかないために、固定資産税の課税ができない等の問題が生じています。

所有者不明土地管理命令が新設されました。
上記のような問題を解消するために、所有者不明土地管理命令が新設されました。具体的には、裁判所は、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができるようになりました。
そして、所有者不明土地管理人が当該土地に関する様々な問題に対応することにより、上記のような問題を解消することができるようになりました。

まとめ

以上のとおり、共有関係の解消や所有者不明土地の解消に関して、様々な法改正がなされました。
当事務所では、不動産に関する紛争についても豊富な取扱・解決実績がありますので、ぜひご相談ください。

投稿日:2021年9月15日 13:53|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

債権回収が少しやりやすくなった!?改正民事執行法

令和2年4月1日に改正された民事執行法によって、債権回収が以前より実行しやすくなった(債権者にとって有利になった)ので、アナウンスさせて頂きます。

何が変わったの?

まず、何が変わったのか? ですが、
大きなポイントは2つだと思います。

(1)債務者に対して、格段に強力な方法で、財産の開示を求めることができるようになった。
(2)債務者の財産をより広範囲に調査できるようになった。

ことです。

これらによって、債権者の債権回収は少しやりやすくなったと思います。
以下、具体的に見て行きましょう。

債務者にどこに財産があるか言わせる制度

以前の民事執行法の改正で、「財産開示」という制度が誕生しました。これは、債務者に対して、裁判所への出頭を命じ、債権者から債務者に対し、財産がどこにあるか、尋ねることができる、という制度です。

※債務者に対して判決をとったり、公正証書をとっても、債務者が全く支払いに応じず、債権者としても債務者の財産がどこにあるか分からず、全く債権回収ができない、ということが数多くありました。財産開示は債務者の財産を把握するために有効な制度として誕生しました。

しかし、驚くべきことですが、債務者は出頭しなくても、また財産があるのに無いと嘘をついても、大きな制裁がありませんでした(30万円以下の科料のみ)。そのため、この制度は殆ど利用されず、やるだけ無駄、実効性が無い、と言われていました。

ところが、今度の改正では、罰則が大幅に強化され、無視したり嘘をついたりする債務者には、6ヶ月以下の懲役、50万円以下の罰金が科せられるようになったのです。すなわち、債務者は財産開示の期日に出頭しなかったり、出頭しても、財産について嘘をついたりすると、上で書いたような重い刑罰が科せられることになるため、大変なプレッシャーを受けることになります。

今後、プレッシャーに負けて、債務者が正直に財産を開示し、あるいは、債権回収に応じる債権者が増えるのではないか、と予想されます。ただ、刑罰は検察官が起訴しないと科せられないため、この制度が開始されてしばらくしないと実効性が分からないところです。

このように、民事執行法の改正で、債務者は正直に財産を開示しなければならなくなったといえます。

より広範囲の財産調査

上の財産開示の手続をとっても財産が判明しない場合は、裁判所を通じて債務者の預貯金・証券、保有不動産、勤務先を調査する手続きができるようになりました。

(1)まず、今回の民事執行法の改正では、裁判所を通じ、預貯金や証券の有無・内容を金融機関に問い合わせることができるようになりました。

(2)また、登記所に対し、債務者名義の不動産が無いかを問い合わせることができるようになりました。

(3)さらに、債権者は限られますが(養育費を請求する債権者、生命・身体を傷つけられたことによって請求債を持つ債権者)、債務者の勤務先を市町村などに問い合わせることができるようになりました。これによって給与を差し押さえることが可能になります。

特に(3)は非常に強力です。(2)も活用できるところです。

あきらめない

以上のように、比較的強力な手続が用意されていますので、債権回収をあきらめず、断固たる手続をとっていきたいと思います。
(とはいえ、債務者にお金が本当にないときは回収しようがないのですが。。。)

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投稿日:2021年3月18日 09:44|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

知らない間に債権譲渡されてた!?建築会社の債権の回収事例

取引先がお金を払ってくれないとき、皆様はどういう対応をされていますか?

借金のかたに●●をとる、ということはよくあります。
たとえば、工場にある機械とかオフィスにある什器備品とか色々です。

取引先が第三者に対して債権を持っている場合には、「債権を担保にしたい。」というニーズがあるのではないでしょうか?

私が関与した事案で、ある会社から債権の譲渡を受け、全額債権を回収できた事案があったので、ご報告します。

(事例)建築会社の債権回収

 
X社は、建築系の請負工事を業務とする会社です。

Y社は、X社に元請からの工事を丸投げしていました。
X社はY社に毎月、工事代金を請求していました。

Y社は徐々に支払が遅れていき、3か月待って欲しいと言って月々の支払を完全にストップしてしまいました。
合計1500万円の未払となってしまいました。

X社としては、Y社が半年後に数千万円入ってくる債権があるため、これで回収しようと思っていました。
X社としては、半年も先の債権であるため、念のため当事務所に相談に訪れました。

(対応)債権譲渡登記事項概要ファイルを確認

念のため、当事務所のパソコンでY社の「債権譲渡登記事項概要ファイル」を閲覧してみました。
(だれでもお金を払えばホームページから見られます https://www1.touki.or.jp/operate/03-12.html

そうしたところ、なんと!回収を予定していた債権が既に別の債権者(金融会社)に譲渡されていることが登記の表示から判明しました。
驚いたY社からX社に「これどういうことなの?」と追及してもらい、債権を戻させました。

その上で、Y社からX社に債権譲渡登記によって債権譲渡をしてもらうことになりました。
無事その債権で取立てができ、全額回収できました。

債権譲渡登記とは?

さて、「債権譲渡登記」とは何でしょうか?
債権は、借金のカタにとるものとしては都合のいいものですが、難点があります。

それは、その債権の債務者に自分の信用不安を悟られてしまうということです。

本件でいうと、Y社は、債権譲渡を行う際、通常は、その債権の債務者に「譲渡通知」をしなければならないのです(民法467条1項)。

このような通知をしては、債務者から「Y社はやばい」と思われてしまい、その債務者は今後Y社との取引をやめてしまうかもしれません。
噂がよそにも広がって取引が失われかねません。

このような債権譲渡の難点を払拭するべく、譲渡通知をせずに債権譲渡をする仕組みが平成10年からできています。
それは、法務局で債権譲渡登記をすることによって、こっそり債権譲渡をしてしまうという仕組みです。

Y社がいよいよ支払を遅滞させるようになったら、債務者に対してX社から譲渡登記がされていることを証拠と共に通知して、債権回収を行います。
このような債権譲渡登記制度はあまり知られていませんが、債権回収の手段として、とても使えます。

まとめ

債権譲渡登記は、認知度の低い制度ですが、知っている人は知っています。
今回のように、債権譲渡登記を調べれば、債権譲渡の有無を確かめることができます。

調べてみて債権譲渡がなされていない債権については、債権譲渡登記をすることで、他の債権者に先んじて債権回収を行うことができます。

みなさんも債権回収のために債権譲渡登記の活用を考えてみたらいかがでしょうか
(但し、相手方の協力が必要なので注意して下さい。)。

投稿日:2020年10月13日 10:13|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

店舗やオフィスを借りるときには期間と中途解約に着目しよう

建物や土地を借りる場合,一般的には,借主側が保護されていて有利だと考えられています。
ところが,借主側にとって,とても不利な内容の契約が取り交わされることがあり,これによって借主が予想外のダメージを受けるケースがありますので,その事例と対策について解説します。

(事例)店舗の借主からの途中解約は可能?

X社は衣服販売を行う小売業の会社です。
業績は順調で,地域の有名スーパー店の隣にある建物を借りて3店舗目を出すことになりました。

X社は,Yさん(地域では有名な地主)から,当該建物を5年間という期間で借りました。
ところが,X社が店舗を借りて3年後,有名スーパーその場所から撤退することになりました。
その後のテナントは未定です。

X社は,スーパーのような集客力のある店舗が隣にあったからこそこの建物を借りていたのですから,スーパー撤退に伴い,速やかに撤退したいと考えています。

しかし,Yさんは,契約書では5年間の賃貸期間となっているため,期間の最後までの賃料を支払ってくれない限り,中途解約には応じられない,と主張しています。
契約書では,特に中途解約の条項が見当たらないため,5年間ずっと借り続けないといけないのか,X社の社長さんはとても悩んでしまいました。

(対策)

こういった相談は頻繁ではないのですが,今まで3,4件はありました。
 
借地借家法では,基本的に借主が保護されています。
たとえば,建物の借主は正当な理由がない限り,建物を追い出されない,というように大変手厚い保護を受けています(定期借家契約を除きます。)。

ところが,建物から出たい,という場合,借主に保護は与えられていません。

もし,賃貸借契約書に「中途解約は許されない。それでも中途解約する場合は,5年分の賃料を一括して支払わなければならない。」という条項があったとしたら,X社も契約時に慎重に吟味していたと思います。

しかし,単純に,
①賃貸期間は5年,
②中途解約条項が定められない,
としか規定がない場合に,X社が中途解約できないというのは酷すぎないか,とも思われます。

一般的な解釈としては,賃貸借契約書において,契約期間をわざわざ定めている趣旨からしますと,当該期間は契約が継続し,中途解約はできないのが原則であると考えられています。
中途解約が規定されていない場合は尚更です。

なので,残念ですが,本件のような事案ではYさんの主張が通ってしまうことが多いです。

ただし,特別な事情があれば中途解約が可能なことも一応ありますし,交渉によって違約金を安くすることができるかもしれませんから,弁護士にご相談頂いた方がよろしいかと存じます。

賃貸借契約は長期間にわたるものですが,ひな形が使われるケースが多いため,特に問題はないだろう,とあまりきちんと目を通さない会社の方は多いです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年10月05日 08:55|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

求人広告トラブル:求人難につけこんだビジネスに気をつけて!!

厚労省のデータによると,平成30年の有効求人倍率は1.61倍であり,前年よりも0.11ポイント上回ったとのことです。
このような大変な求人難の時代において,中小企業の窮状につけこんだビジネスが最近横行していますので,その事例と対策について解説します。

事例

ある日,ハローワークに求人申込みをしたX社のもとに,東京のY社から営業の電話がかかってきました。
キャンペーンでインターネットの求人広告が4週間無料で出せる,と勧誘するものでした。

X社の担当者は「4週間無料」という言葉に飛びつき,Y社から案内のFAXを送ってもらい,Y社の営業担当に言われるがまま,申込書に署名・押印をしてFAX返信しました。

その後,Y社の担当者からは,何の音沙汰もありませんでした。

X社の担当者もY社のことをすっかり忘れてしまったまま,4週間経過後,突然Y社から50万円の支払を求める請求書が送られてきました。

X社の担当者は慌ててY社に連絡を入れましたが,Y社からは,FAX文書中に「規約」があり,4週間が経過すると有料に切り替わる旨,有料に切り替わる4日前までに書面で解約を申し入れる必要がある旨の規定があり,それに同意して申し込みをしたから,広告掲載料を払うのは当然,と言われてしまいました。
たしかにFAX文書には,その旨の記載がありました。

ちなみにY社のホームページは,とても雑で素人が作ったようなデザインで,広告効果は期待できないものでした。

対策

こういった相談は最近大変多くなっています。
規約の内容や手口がほぼ同じであるため,何らかの組織的背景があるのではないか,とすら感じております。

さて,皆さんは「事例」を読んで,解約忘れを利用したあこぎなビジネスであり,こんな会社にお金を支払う義務は無いだろう,と思われたかもしれません。

ところが,本件のような事業者間の取引では,契約書の記載が特に重要視されますし,消費者を保護する法律も原則として適用が無いため,「規約」に記載されたとおりの法律関係が生じてしまう可能性が高いです。
つまり,掲載料を負担せざるを得なくなるかもしれないわけです。

もっとも,本件の場合,有料期間への切換えが全く説明されなかったり,ホームページに広告効果が全く無い等,高度の悪質性を主張し,支払を免れることができるかもしれません。
安易に業者に支払いをせず,速やかに弁護士に相談して頂きたいものです。

そもそもですが,このような被害は,日頃から契約時に書面を隅々まで読んでいれば避けられたことです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年9月04日 10:16|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

少年事件の手続きの流れ

20歳未満の方(少年)が罪を犯した場合,20歳以上の方(成人)が罪を犯した場合とは異なる手続きによって処分されることになります。

最近,わき見運転をしていて,自転車に乗っている方をはねて死亡させてしまったという少年事件の付添人をしたので,その事件を例にお話しします。

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(1)まずは警察署に留置

少年は,人をはねて死亡させてしまったので,過失運転致死罪に問われることになりました。そして,人の死亡という重大な結果を生じさせてしまったため,少年は警察に逮捕され,勾留されることになりました。

勾留されると,10日間(延長されれば最大20日間)警察署の留置場に入れられ,取調べを受けることになります。

 

(2)家庭裁判所に送致

成人であれば,取調べが済めば起訴(あるいは不起訴等)されることになりますが,少年の場合,直ちに裁判にかけられることはなく,事件は家庭裁判所に送致され,少年審判を受けることになります。

少年は,観護措置として少年鑑別所で拘束されて,反省文を書いたり,各種のテストを受けたりして,自分のしてしまった行為について反省を深めました。

 

(3)少年審判期日

少年鑑別所に移ってから通常4週間以内に少年審判期日が開かれます。

少年審判期日には,少年と両親が同席し,家庭裁判所調査官,付添人(弁護士が担当します)も立会い,審判官(裁判官)が少年と両親に色々質問します。その後,付添人,調査官が質問して,調査官,付添人が意見を述べます。

そしてすぐに審判官が審判を宣言します。その内容は次の通りです。

① 審判不開始(非行事実が認められない場合等)

② 不処分(保護処分を行わないとする決定)

③ 保護処分(保護観察,少年院送致等)

④ 検察官送致(刑事処分が適当と認められる場合。地方裁判所等に起訴されます。)

人が死亡する等結果が重大であったり,少年の年齢が成人に近かったりする場合には,検察官送致されることが多いです。本件事件も,人が亡くなってしまうという重い事件だったため,少年は検察官送致となりました。

 

(4)その後

地方裁判所に起訴されると,通常の成人の事件と同じ手続きによって進行していきます。

本件少年の事件は,現在地方裁判所に係属中です。少年の将来のために,執行猶予を獲得できるよう弁護活動を続けています。

 

未成年者は,周りの人の影響を受けやすかったり,自分の行動を反省することで考え方を再形成することが可能であったりするなど,成人にはない特徴があります。

刑事手続も成人とは異なる特殊なものなので,お困りの際は専門家にご相談ください。

 

弁護士 大口悠輔

投稿日:2016年11月26日 19:08|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

診療情報の開示を求められたら

 

患者さん以外の第三者から,「患者さんの診断書を作成してほしい」とか,「患者さんの診療情報を教えてほしい」と依頼された場合,どう対応したら良いでしょうか。

  1.  家族だからと言って当然に開示していいものではありません。
     
    たとえば,その第三者が患者さんの家族だったとしても,診療情報は個人情報の最たるものですから,患者さんの同意なしに開示してよいものではありません。
     このように原則として患者さんの診療情報を第三者に開示してはならないことをよく覚えておいて下さい。
     ただ,そのような杓子定規だと,実務的に業務が滞るということであれば,患者さんの開示に対する反発や開示の必要性などを慎重に判断し,自己責任で開示して頂ければと思います(決して開示をおすすめしているわけではありませんので注意して下さい。)。
    病院の建物
  2.  できれば同意書をとって下さい。
     患者さんからの同意ですが,口頭での合意でも構いませんが,慎重を期するならば同意書をとった方が無難です。患者さんに説明するのが大変であるならば,開示を要求した方に対して,患者さんから同意書をとるよう要求しても良いと思います。
  3.  患者さんに理解能力が無い場合
     たとえば,家族から,患者さんについて成年後見の申立をしたいから,診断書を作成したり,診療情報を開示してほしいと依頼がされることもあるかもしれません。
     この場合,患者さんが意識不明であったり,痴呆で理解能力が無い場合には,その必要性を慎重に判断して開示しても良いでしょう。
     しかし,患者さんの理解能力がほぼ正常だと思われる場合には,まずは患者さん意思を確認するべきです。
     当該家族に,患者さんの同意書を取り付けるよう促すのが穏当だと言えます。

 医者とおじいさん

投稿日:2014年10月08日 12:58|カテゴリー:医療法務, 弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

何もとりきめがない場合の利息

金銭の貸し借りなどで,特にとりきめがない場合,利息は5%となります。ただし,商売の関係だと6%になります。

この利息の利率が下がると自動車保険料が上がるのですが,それは一体どういうことなのでしょう。

 

1 合意があればそれに従う

 金銭の貸し借りで当事者間が利息・遅延損害金の利率を取り決めておけば,取り決めた利率になるのが原則です

 たとえば,年利2%にしたり,年利10%にすることは自由であり,その通りの内容になります。

 もっとも,とんでもない高利の利息を契約すると,貸金業法や出資法などの規制法により,無効になる可能性がありますので,常識の範囲内で利率は設定する必要があります。

2 合意が無い場合は原則5%

 上のような合意が無い場合,民法では利息・遅延損害金を年利を5%と定めています(民法404条)。

 たとえば,交通事故でけがをしてしまったときの損害賠償額についても事故発生日から年5%の利息がつきます。

 したがって,交通事故発生からたとえば5年経過して判決が下ると,本来払わなければいけない金額よりも25%高い金額を支払わされることになります。

 なお,商行為の場合には,商法の適用があるため,年6%となる場合もあります。

3 民法改正のお話

 30年くらい前ならともかく,今のような超低金利時代に,5%は高金利すぎるのではないでしょうか。

 そのような問題意識から,この金利を下げるべきという意見が度々出されていました。

 しかし,今般,報道されているように,民法の抜本改正に合わせ,この利息についても見直しがされることになっています

 どうも3%を初期値とし変動金利制を導入するようです。

 変動するとなると,弁護士にとっては利息計算も細かくなり面倒な話です。

疑問を持つ人

4 自動車保険料の大幅値上げの可能性

 報道では,このように金利が大幅に引き下げられることから,自動車保険料が大幅に上がる可能性が高い,との報道がされています。

 なんで民法の金利が引き下げられると自動車保険料が上がるのか,意味が分からない!と思われるかもしれません。

 実は,交通事故の損害賠償の計算では,後遺障害が発生した場合の逸失利益(障害が無ければ得られたはずの収入に相当する損害)計算にあたって,民法の利息を前提にしていました。

 逸失利益は,将来に得られるはずの収入を現時点で受け取ってしまうものですから,利息分を控除しないと不公平です。その控除される利息を年利5%を前提に計算していたのです。

 たとえば,年収300万円の人があと20年働けたとすると,逸失利益を300万円×20=6000万円と計算できそうですが,そうではなく,5%を毎年割り引いた係数をかけて計算します。20年の係数は12.462ですから,300万円×12.462=3738万6000円となります。この場合では2200万円も金額が違うわけです。

 年利が5→3%に変わると,上記の係数がかなり変わる(大きくなる)ため,被害者にとってとても有利になります。他方で保険会社は多額の保険金を支払わなければならなくなります。

 そのため,報道にある通り,自動車保険料が大幅値上げになることが予想されるわけです。

 現在の金利環境をふまえれば利息を下げることも理解できるのですが,自動車保険料が大幅値上げされると任意保険に加入しない(できない)お年寄りドライバーが増え,おちおち道も歩けない状況になるのでは?と心配するのですが,杞憂でしょうか。

 020

投稿日:2014年7月10日 14:20|カテゴリー:交通事故, 弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

遺言執行者って何でしょうか?

遺言執行者を決めておくと遺言の内容を迅速かつ確実に実行できるので,遺言書には必ず書いてもらっています。

 

1 遺言執行者って何?

 遺言書の作成についてアドバイスを求められるときに,必ず書いておいて下さいね,とアドバイスするのが,「遺言執行者」の定めです。

 遺言執行者とは,簡単に言うと,遺言書に書いてある内容をその通り実現する特別な権限を与えられた者です。

 具体的には,遺言者名義の預金を解約したり,生命保険を解約したり,貸金庫の開錠,登記の移転手続など,遺言に書いてある内容を実行できます。

 遺言執行者には弁護士や司法書士など資格者がなることは当然できますが,相続人やご親族の方など素人もなることができます

2 遺言執行者が決まっていないと少し面倒

 このような遺言執行者が決まっていないと,不都合があります。たとえば,「財産を●●に遺贈する」などと記載しても,受遺者の方はすぐに財産を受け取ったり,登記が受けられないことがあります

 ちなみに,遺言執行者が決められていない場合には,裁判所に決めてもらうことができますが,誰がなるかは裁判所が決めますし,決まるまでは時間がかかるため,やはり早く遺言の内容を実行したい場合には不便です。

 以上のようなことから,私が作成に関与した遺言書では必ず遺言執行者を指定しています。遺言者の依頼があって私自身が遺言執行者になることも多いです。

おじいさんとお金

3 記憶に残る遺言執行

 私も遺言執行者を何回か担当したことがありましたが,記憶に残る遺言執行があります。

 それは,資産家の遺言者がめぐまれない子供のための育英基金に全遺産を寄付する,という件でした。

 遺言者の方は,生前から,育英基金を設立していて,亡くなってから,その財団に全財産を寄付することを計画されたのでした。

 私は,遺言者からの依頼で,遺言書を作成し,遺言執行者となることもお引き受けしました。

 遺言者がお亡くなりになった後,私は遺言執行者として,多種多様な財産を整理し,全て育英基金に引き継ぎがせて頂ました。

 具体的な手続は,銀行に出向いて貸金庫を開けたり,預金を解約したり,登記手続きを行ったり,ご自宅に伺ってどんな財産があるか一つ一つ写真撮影して点検したり,と,とても地味で手間のかかる仕事でしたが,故人の高潔な遺志を実現する一助となることができ,とてもやりがいを感じた事件でした。

投稿日:2014年7月03日 14:54|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 相続

利益相反について

 弁護士は,弁護士職務規程というルールにのっとって仕事をしていますが,その中でも重要なのは,利益相反の禁止です。

 利益相反の禁止というのは,たとえば,以前相談に乗った顧客の相手方から,相談に乗った同じ件で,依頼や相談があった場合に,相手方から委任を受けたり相談を受けたりしてはならない,というものです。

クビ宣告

 よくあるのが,離婚や相続の案件で,一方当事者から相談があり,それからしばらくして,他方当事者から相談の依頼があり,知らずに相談を受けてしまうような場合です。

 当事務所でも希にそういうことがあり,気付けばすぐに相談をすぐに中止するのですが,名字が違っていたり,数か月間あいだが空いていたりしたら,利益相反だと気付かず相談を受けてしまうことがあります。

 この利益相反は,法律事務所の単位で問題になるため,同じ事務所のAという弁護士が相談を受けているだけで同じ事務所のB弁護士が相談を受けることすらできなくなります。

 したがって,沢山弁護士がいる事務所では,利益相反が頻発することになります。

 顧客だけでなく,顧客の相手方まで気にしなければならないというのはなかなか神経を使います。

 弁護士は信頼あっての仕事ですので,やむを得ないことです。

 

投稿日:2014年6月26日 13:25|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

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