店舗やオフィスを借りるときには期間と中途解約に着目しよう
建物や土地を借りる場合,一般的には,借主側が保護されていて有利だと考えられています。
ところが,借主側にとって,とても不利な内容の契約が取り交わされることがあり,これによって借主が予想外のダメージを受けるケースがありますので,その事例と対策について解説します。
(事例)店舗の借主からの途中解約は可能?
X社は衣服販売を行う小売業の会社です。
業績は順調で,地域の有名スーパー店の隣にある建物を借りて3店舗目を出すことになりました。
X社は,Yさん(地域では有名な地主)から,当該建物を5年間という期間で借りました。
ところが,X社が店舗を借りて3年後,有名スーパーその場所から撤退することになりました。
その後のテナントは未定です。
X社は,スーパーのような集客力のある店舗が隣にあったからこそこの建物を借りていたのですから,スーパー撤退に伴い,速やかに撤退したいと考えています。
しかし,Yさんは,契約書では5年間の賃貸期間となっているため,期間の最後までの賃料を支払ってくれない限り,中途解約には応じられない,と主張しています。
契約書では,特に中途解約の条項が見当たらないため,5年間ずっと借り続けないといけないのか,X社の社長さんはとても悩んでしまいました。
(対策)
こういった相談は頻繁ではないのですが,今まで3,4件はありました。
借地借家法では,基本的に借主が保護されています。
たとえば,建物の借主は正当な理由がない限り,建物を追い出されない,というように大変手厚い保護を受けています(定期借家契約を除きます。)。
ところが,建物から出たい,という場合,借主に保護は与えられていません。
もし,賃貸借契約書に「中途解約は許されない。それでも中途解約する場合は,5年分の賃料を一括して支払わなければならない。」という条項があったとしたら,X社も契約時に慎重に吟味していたと思います。
しかし,単純に,
①賃貸期間は5年,
②中途解約条項が定められない,
としか規定がない場合に,X社が中途解約できないというのは酷すぎないか,とも思われます。
一般的な解釈としては,賃貸借契約書において,契約期間をわざわざ定めている趣旨からしますと,当該期間は契約が継続し,中途解約はできないのが原則であると考えられています。
中途解約が規定されていない場合は尚更です。
なので,残念ですが,本件のような事案ではYさんの主張が通ってしまうことが多いです。
ただし,特別な事情があれば中途解約が可能なことも一応ありますし,交渉によって違約金を安くすることができるかもしれませんから,弁護士にご相談頂いた方がよろしいかと存じます。
賃貸借契約は長期間にわたるものですが,ひな形が使われるケースが多いため,特に問題はないだろう,とあまりきちんと目を通さない会社の方は多いです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。
投稿日:2020年10月05日 08:55|カテゴリー:弁護士の役立つ情報