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土地区画整理と賃貸借

<土地区画整理と賃貸借>

Xは,酒屋を営んでいる。
Xの先代は,昭和10年頃に,土地100㎡を借りて,木造建物を建築した。
しかし,昭和30年に火災で建物が焼失し,現在の建物(木造)はその当時に建築されたものである。
Xの先代も,賃貸人も死亡し,それぞれの子に相続がされている。
地代は,付近の相場より安い1㎡あたり300円である。
今回,土地区画整理事業が始まり,Xは来年度には建物を収去しなければならなくなったが,賃貸人からは,退去や買取を要望される可能性があるが,どう対応したら良いか。
なお,Xに支払われる補償金は,1000万円程度である。

1 土地区画整理事業と土地賃貸借契約
土地区画整理で仮換地が指定されると,土地の所有者や借地権者は,従前の土地に対する使用収益件を停止され,仮換地指定の効力発生日から仮換地を使用収益できる権能を取得します(土地区画整理法99条1項)。

(仮換地の指定の効果)
第九十九条  前条第一項の規定により仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から第百三条第四項の公告がある日まで、仮換地又は仮換地について仮に使用し、若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができないものとする。

借地権者は,仮換地に建物を移転しなければなりません。
土地については,従前の土地と換地とが同一とみなされますが(土地区画整理法104条),建物は同一のものとみなされるという規定がありません。
そのため,賃貸借契約との関係で建物をどうするか検討する必要があります。
たとえば,今時,と思われるかも知れませんが,①建物をそのまま移動させる場合(建物を曳いていくことが昔はあったようです。),建物は従前の建物と何一つ変わることがありませんから,土地賃貸借契約は従前通りであり,何らの影響も無いことになります。
これに対し,②建物を解体して,換地でそのまま再築する場合は,判例上,建物の同一性は失われるとしています(最高裁昭和62年7月9日判決)。もちろん,③建物を取り壊し,換地に新築する場合は,建物の同一性はありません。
上記②③の場合,土地賃貸借契約に影響があります。
借地法7条,借地借家法7条には,次のような規定があります。

第7条 借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年間存続ス 但シ残存期間之ヨリ長キトキハ其ノ期間ニ依ル
(建物の再築による借地権の期間の延長)
第七条  借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
 借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。

今回のケースでは,借地法が適用されますので,これを前提にしますと,賃貸人の異議がない場合は,堅固建物については,30年,非堅固建物については,20年,賃貸期間が延長されることになります。
なお,賃貸人が異議を述べても,元来の土地賃貸借契約の存続期間内であれば,そのまま再築建物のための借地権に適用されます。そうすると,借地法4条,6条の問題となり,正当事由や自動更新の話になります。正当事由の判断ですが,土地区画整理に基づく建物収去は,自らが希望した場合や,過失で建物を滅失させた場合とは違うので,この点は,プラスに評価されると思われます。

(借地法)
第4条 借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス 但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第6条 借地権者借地権ノ消滅後土地ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス 此ノ場合ニ於テハ前条第1項ノ規定ヲ準用ス
ちなみに,賃貸人から,地代の増額請求の可能性があることに注意が必要です。土地区画整理により,土地の利用価値が高まる場合があるからです。

(土地区画整理法)

(地代等の増減の請求等)
第百十三条  土地区画整理事業の施行に因り地上権、永小作権、賃借権その他の土地を使用し、若しくは収益することができる権利の目的である土地又は地役権についての承役地の利用が増し、又は妨げられるに至つたため、従前の地代、小作料、賃貸借料その他の使用料又は地役権の対価が不相当となつた場合においては、当事者は、契約の条件にかかわらず、将来に向つてこれらの増減を請求することができる。
 前項の規定により従前の地代、小作料、賃貸料その他の使用料又は地役権の対価の増額の請求があつた場合において、同項に掲げる権利を有する者は、その権利を放棄し、又は契約を解除してその義務を免かれることができる。

 

2 結論
Xにおいて土地を買い取ることについては,賃貸借期間の存続を前提に,任意の交渉をされればよいというお答えしかできません。その場合,路線価の借地権価格が参考になるのではないでしょうか。
退去については,Xがすぐに退去を迫られるようなことではありませんが,将来の更新時期に紛争が生じることもありますので,リスクがあることは事実です。少なくとも,賃貸人との交渉経過を保存しておいた方が良いと思われます。再築後,建物買取請求権を行使するというのも不可能ではありません。

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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