1人加盟組合との団体交渉を拒絶できますか?
団体交渉の議題は個別の紛争に関するものではなく「賃上」であり,労働組合側は,当社の誰が組合員かを明らかにしません。
組合いわく,組合員の名前を明かすと,当社から組合員に不当な圧力が加わる可能性があるとのことで,一向に名前を明らかにしないのですが,当社としても,当社の従業員が組合員となっているか否か分からない以上,団体交渉には応じられないと考えております。
組合員の氏名を明らかにするまでは団体交渉を拒絶できますでしょうか?
結論
団体交渉の拒絶はできますが,絶対に団交拒否にならないという訳ではなく,たとえば,従業員1人でも組合員となっていることが分かる資料が示されたら,団体交渉を拒絶できません。
理由
新星タクシー事件(東京地裁判決昭和44年2月28日)では,団交議題が解雇撤回のケースにおいて,当該被解雇者が組合員であることを明らかにすれば足り,被解雇者以外の組合員の氏名,人数を明らかにすることは当該議題に関する限り不要と判示されています。
したがって,労働組合は,組合員名簿や組合規約などの提出をすべき法的な義務は無いし,これをしなくとも会社は団体交渉に応諾する義務があるとされています。
もっとも,当該組合に一人も従業員が加入していない可能性がある場合には,当該組合が労働者の代表であるか会社には分からないと言えます。
したがって,使用者が雇用する労働者の代表者であることを証明する何らかの資料が提示されない限りは,団体交渉を拒絶できるものと解されます(※組合員全員の氏名が明らかになっていないことを理由にすることはできません。)。
なお,確定した裁判例が無いため,この問題については,明確な回答ができませんのでご了承下さい。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。