従業員にAIを使わせる場合のリスク回避策
ご回答
中小企業にとって他社との競争に勝つためにはAIの活用は必須となっていくことが予想されます。しかし、AIの活用の際に全く措置をとっていないとトラブルに巻き込まれ、むしろ会社に損害を与えることになります。以下の法的リスクと回避策を念頭に置き、具体的な取り組み方をお考え下さい。
1.想定される主な法的リスク
AIを活用する際には、主として次のような法的リスクがあります。
(1)著作権侵害(著作権法第2条、第21条等)
AIの生成物が既存の著作物(例:図、イラスト)と類似し過ぎている等、意図せず他者の著作権を侵害する危険性があります。
特にホームページは公開範囲が広いため、損害賠償請求や差し止めの対象となりやすいのでリスクが大きいです。
(2)機密情報・個人情報の漏洩(不正競争防止法・個人情報保護法)
AIへの指示・命令(プロンプト)に、自社や顧客の未発表の機密情報や個人情報を入力し、それがAIの学習データに取り込まれた場合、守秘義務違反や法令違反に問われます。
(3)善管注意義務違反(民法第644条)
AIが生成した「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」を真に受けて虚偽の内容を広告に掲載した場合、顧客に対する善管注意義務違反として債務不履行責任を負うリスクがあります。
2.リスク回避・軽減のための具体的措置
これらのリスクを回避し軽減するためにはどのような方法があるでしょうか。
(1)AI利用規約(ガイドライン)の策定
まずは、社内でAI利用規約を作り、「入力禁止データ」を明確化し、「最終的な人間によるチェック」を義務付ける規定を設けてください。これは、会社が従業員に対して適切な監督を行っているという証拠になります。
(2)法人向け「非学習型」プランの導入
AIの利用規約を確認し、あるいは企業プランに加入し、入力データがAIの学習に利用されない契約形態を選択することが、情報漏洩を防ぐ大前提です。
(3)権利保証に関する契約書の改訂
顧客との契約において、AI利用の有無や、万が一の際の責任を制限することについて条項を整備しておくことで、予期せぬ巨額の賠償から会社を守ることができます。
(4)類似性調査の徹底
従業員には、生成物をそのまま使用せず、商標調査や画像検索を用いた類似性の確認プロセスを業務フローの中に組み込むべきです。(1)の規約に盛り込み研修をしましょう。
3.結論
AIによる業務効率化は、適切なコンプライアンス体制を構築して初めて成功します。まずは利用規約を整備し、従業員教育を行うことから着手されることをオススメします。なお、AI活用のリスクは業種や企業の規模によって千差万別なので、定期的な見直しや専門家へのご相談も検討して下さい。
月刊東海財界2026年6月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。




