君子、危うき(SNS)に近寄らず
先日、ある著名人Aがインスタグラム(公開)で写真を投稿していました。体調不良なのに危険なアトラクションに挑むという内容でした。その後、Aが怪我をしたことを知りました。
私は、Aのインスタグラムに公開されていた写真をスクリーンショットして、SNS(公開)で「ちょっと無謀すぎますね~」と画像投稿しました。
そうしたところ、3か月後に、Aの代理人弁護士から、慰謝料150万円を請求する内容証明郵便が届きました。
大事になり、どう対応したらいいか、大変悩んでおります。
ご回答
1 匿名であってもバレます。
ツイッター(現X)やインスタグラムでSNSを楽しんでいらっしゃる方も増えてきました。かくいう私もフェイスブックをやっていますし、ツイッター、インスタグラムもアカウントを持っております。
最近、テレビ等でも報道されていますが、不用意なSNSの書き込みを理由として訴えられるという事件が増えています。
匿名で投稿していても訴えられるのか、と驚かれるかもしれませんが、弁護士が法的手続をとれば、匿名のSNS投稿であっても、投稿者の氏名・住所を特定できることが多く、最終的に投稿者が訴えられるケースも多いです。
2 SNS投稿の際には名誉毀損、著作権、肖像権、プライバシーに注意しましょう。
今回、Aは公開のインスタグラムで写真を投稿していますし、投稿内容も、無謀と指摘する程度のものですから、この程度のもので慰謝料を請求するのはおかしいとも考えられます。
しかし、問題は、Aの撮った写真を転載してしまった点です。
これは、Aの著作物を無断で複製しているという点で、形式的には著作権侵害になってしまいます。
また、無断でAの写真を使っていることから、肖像権侵害にもなる可能性があります。
以上、相談者の行為は違法とされる可能性があります。
3 賠償額は場合によっては高くなりますが、請求者の言いなりになってはいけません。
2で述べたように、相談者が違法となる可能性がありますが、賠償金はいくらになるでしょうか。
SNSによる権利侵害での慰謝料ですが、内容の悪質性によって千差万別であり、数万円の場合もあれば、100万円を超えるような場合もあります。
また、注意しなければならないのは、慰謝料とは別に投稿者を特定するための弁護士費用(調査のためのもの)なども請求されるおそれがあることです。
50万円程度の費用が認められたケースもあります。
どの程度の慰謝料なのか、いくらの調査費用がかかったのか、きちんと資料を確認したり、判例を調べたりして、交渉する必要があります。
4 君子危うきに近寄らず、です。
SNSは楽しいのですが、不用意に投稿すると、特に著名人に関しては、リスクが高いです。
名誉毀損や著作権等には十分気をつけて、SNSをたしなんでいただきますよう、お願いします。
月刊東海財界2024年新年号掲載