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片岡法律事務所
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名古屋の弁護士Q&A

理由なき降格処分を争う

私は運送会社の課長職でしたが,職場の上司に対し,その怠慢を指摘して注意したところ,特に理由も無く降格され,一般ドライバーとさせられてしまいました。降格の結果,給料も以前は80万円あったのが40万円と大幅に減額されましたか。

私が何らかの懲戒処分を受けた事実も無いのに,このような仕打ちを受けるのは納得できません。何かなりませんでしょうか?

1 ご回答
ご質問の内容だと,懲戒処分を下されたわけでは無いようですね。
そうすると,この件は,人事上の措置として役職や職位を引き下げられた結果,給与が大幅減額したということでしょうか。
基本的に人事権行使は,人事権の濫用とならないことが必要です。
人事権濫用かどうかは,①使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度,②能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度,③労働者の受ける不利益の性質及びその程度,④当該企業体における昇進・降格の運用状況,などの諸事情を総合考慮して判断されます。
したがって,貴殿の場合についても,①特に使用者側で必要性が無いのに,②特に貴殿の能力の適性と関係無く,③大幅な給与の減額を伴う降格がされ,④特に貴殿のような降格の例が他に例を見ないものであったならば,人事権の濫用として,無効になる可能性があります。

 

2 参考判例
★医療法人財団東京厚生会(大森記念病院)事件(降格)(東京地裁平成9年11月18日判決)
使用者に委ねられた裁量判断を逸脱しているか否かを判断するにあたっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度、当該企業体における昇進・降格の運用状況等の事情を総合考慮すべきである。前記のとおり、婦長と平看護婦は待遇面では役付手当5万円が付くか否かにしか違いがないうえに、本件降格が予定表という重要書類の紛失を理由としていることなどに照らすと、Yが降格を行うとの判断をしたことは一応理解できなくはないけれども、一方、〔1〕本件降格が実施された直後に、Xが予定表を発見していることに照らすと、YがXに対し、紛失した予定表を徹底的に探すように命じたのか否かにつき疑問も存し、予定表の発見が遅れたことについてXのみを責めることもできないこと、〔2〕予定表の紛失は一過性のものであり、Xの管理職としての能力・適性を全く否定するものとは断じ難いこと、〔3〕近時、Yにおいて降格は全く行われておらず、また、〔4〕Xは婦長就任の含みでYに採用された経緯が存すること、〔5〕勤務表紛失によってYに具体的な損害は全く発生していないこと等の事情も認められるのであって、以上の諸事情を総合考慮すると、本件においては、Yにおいて、Xを婦長から平看護婦に2段階降格しなければならないほどの業務上の必要性があるとはいえず、結局、本件降格はその裁量判断を逸脱したものといわざるを得ない。」

無理に提出させられた退職届を撤回したい

私は,従業員20名程度のA社に5年間勤務していました。
私は妻子ある同僚男性と交際し,それが社内で露見しました。
部長からは,私に対し,私を懲戒解雇するつもりであるが,すぐ退職届を提出すれば,退職金が出ると思う,と言われたので退職届を提出してしまいました。
同僚男性は特に解雇されることなくA社に勤務しており,なぜ私だけが,という思いです。
会社に対して退職届の撤回を請求したいのですが,可能でしょうか。

1 ご回答
退職の意思表示について強迫取消(民法96条1項)が認められ,撤回が請求できる可能性が高いと考えられます。
一般に,退職届を提出してしまうと,特段の事情が無い限り,撤回は認められないというのが実情です。
しかし,ご相談の事案だと,懲戒解雇が認められる余地が殆ど無いと考えられるのに,退職届を提出しないと重大な不利益が発生すると突きつけ,精神的な威迫を与えた上で,退職届を提出させたと言わざるを得ません。
よって,民法96条1項の強迫が認められる可能性は高いものと言えます。

 

2 参考判例
ちょっと古いですが,以下のような参考判例があります。
広島高裁松江支部昭和48年10月26日判決
「以上の認定によれば、控訴会社がその主張するようなバスガイドの職種の特殊性から被訴人につき将来風紀上の問題を起すおそれがあり、その適格性に疑問があると判断したことには相応の理由があるにせよ、前判示のとおり所定の懲戒解雇事由に該当する事実がないのに前記小山所長らが被控訴人に対し明らかに懲戒解雇に付すべき不当な行状があるとして退職願を提出するよう要求したことは、被控訴人が見習者であつたことを考慮にいれても、違法な強迫行為に当るものというべきであり、違法性がない旨の控訴会社の主張は採用できない。」

タイムカードが無くても残業代は請求できますか?

【タイムカードが無い場合の残業時間】
私は勤務先を1カ月前に辞めましたが,その勤務先は今までどれだけ長時間残業しても残業代を支払ってくれませんでした。
残業をすれば残業代を請求できるということは知っているのですが,その勤務先はタイムカードなどがありませんでした。
こういったタイムカードが無い場合でも残業代請求はできるのでしょうか。

【ご回答】
1 タイムカードがあると良いが無くても請求自体は可能
残業代は,残業時間を把握しないと請求できませんので,タイムカードなどで残業時間を把握する必要があります。
しかし,タイムカードは残業時間を把握するための1つの手段に過ぎませんから,別にタイムカード以外の方法で残業時間を把握できるならば,それで残業時間を認定することは可能です。
たとえば,毎日,業務日報・報告書を提出していたのであれば,当該日報に何時から何時まで労働したかが記載されている筈です。
また,パソコンのログやメールを調べれば,特定の時間まで働いていたことが証明できると思います。
これら客観的な証拠以外でも,日記・メモなどの個人的な証拠でも証拠価値が完全に否定されるわけではありません。
なお,元同僚の労働時間に関する陳述などがとれれば,ある程度残業時間を特定することも可能です。当事務所で取り扱った事例では,元同僚が依頼者の残業時間が毎日最低でも2時間あったことを陳述してくださったおかげで,毎日2時間分の残業時間が裁判所によって認定された例がありました。

 

2 タイムカード以上の残業時間があれば別途請求は可能
以上の通り,タイムカードは残業時間を把握するための1つの方法に過ぎません。
よって,タイムカードで把握されていない残業時間があれば,この時間について残業代が請求できるのは当然のことです。
どのような資料があるのか,具体的にお聴きして,適切な資料を探し,保全する必要があります。

派遣社員と労災事故

【派遣と労災事故】
当社は,派遣会社から派遣社員を受け入れて工場の仕事を担当してもらっていますが,今般,労災事故が発生し,派遣社員が大怪我をしてしまいました。
当社は何らかの責任を負うのでしょうか。負うとして派遣会社に応分の負担をしていただくことは可能でしょうか。

【ご回答】
1 派遣先も責任を負います
まず,派遣社員の方が労災事故に遭ったということですが,派遣社員の一方的な過失で事故が発生したのでしょうか。もし,そうであるならば,貴社が責任を負うことはありません。
しかし,貴社の設備自体に瑕疵があったり,管理体制になにがしかの不備があった場合は,当該派遣社員に対する安全配慮義務違反があったものとして損害賠償責任は免れないと思われます(ただし,派遣社員に過失があったような場合は過失相殺により損害賠償額が減額されることになると思います。)。
2 派遣先と派遣元双方で責任を負う場合があります
次に,派遣先と派遣元があるとき,派遣元に応分の負担を求められるかですが,難しい問題だとは思いますが,一定の負担を要求できる場合があると考えられます。
たとえば,派遣先が派遣元に危険な職場であることを説明していたのに,派遣元が派遣社員に十分な教育や説明をしておらず,それが労災事故の発生原因となったような場合には,当然に派遣元に対して負担を要求できると考えられます。
その負担割合については,判例がほとんどないため(おそらく派遣先と派遣元で協議して決定するため,訴訟にならないものと考えられます。),不明であり,また,ケースバイケースでしょうが,派遣先の方がより重い責任を負うことが多いであろうと考えられます。派遣先の方が危険を管理できるからです。
ご相談のケースは,詳細が不明ですので,明確な回答ができません。両社で協議して負担割合を決定されてはいかがでしょうか。

未払賃金と会社役員の責任について

【未払賃金と会社役員の責任について】
私が経営しているA社は2名の従業員がいます。何とか給料は払えていましたが,経営不振で1名を解雇することになりました。解雇した1名から,先日残業代を払えという請求がありました。
会社は赤字続きで到底残業代を支払える状態ではないため,支払えない旨回答しようと思いますが,私個人の責任は追及される可能性は無いでしょうか。

1 結論
倒産の危機にあり割増賃金を支払うことが困難な状況にあったなど特別な事情がある場合は責任追及されませんが,そうでない場合は,責任追及される可能性があるかもしれません。
あなたのケースでは,赤字続きであったということですから,特別な事情があったと言え,責任追及はされないだろうと思われます。

 

2 判例
大阪地裁平成21年1月15日判決は,取締役及び監査役の善管注意義務ないし忠実義務は,会社の使用者としての立場から遵守されるべき労働基準法上の履行に関する任務懈怠も包含すると解されるから,取締役及び監査役は,会社に労働基準法37条を遵守させ,被用者に対して割増賃金を支払わせる義務を負っているとして,被告らに任務懈怠が認められるとして,請求を一部認容した事例です。
この判例によると,倒産の危機にあり割増賃金を支払うことが困難な状況にあったなど特別な事情に無い限りは,時間外労働の割増賃金を支払わなかった会社の役員が個人責任を追及されるおそれがあります。
この判例の内容は確立した裁判例になっているとは言い難い(これと反する判例もあります。)ですので,今後も必ず踏襲されるとは限りませんが,注意はしておいた方が良いです。
残業代がそもそも発生しないように,就業規則上の工夫や給与の支払方法の工夫をした方が良いと考えます。

1人加盟組合との団体交渉を拒絶できますか?

この度,当社の外部の労働組合から,団体交渉を要求されました。
団体交渉の議題は個別の紛争に関するものではなく「賃上」であり,労働組合側は,当社の誰が組合員かを明らかにしません。
組合いわく,組合員の名前を明かすと,当社から組合員に不当な圧力が加わる可能性があるとのことで,一向に名前を明らかにしないのですが,当社としても,当社の従業員が組合員となっているか否か分からない以上,団体交渉には応じられないと考えております。
組合員の氏名を明らかにするまでは団体交渉を拒絶できますでしょうか?

(結論)
団体交渉の拒絶はできますが,絶対に団交拒否にならないという訳ではなく,たとえば,従業員1人でも組合員となっていることが分かる資料が示されたら,団体交渉を拒絶できません。

 

(理由)
新星タクシー事件(東京地裁判決昭和44年2月28日)では,団交議題が解雇撤回のケースにおいて,当該被解雇者が組合員であることを明らかにすれば足り,被解雇者以外の組合員の氏名,人数を明らかにすることは当該議題に関する限り不要と判示されています。
したがって,労働組合は,組合員名簿や組合規約などの提出をすべき法的な義務は無いし,これをしなくとも会社は団体交渉に応諾する義務があるとされています。
もっとも,当該組合に一人も従業員が加入していない可能性がある場合には,当該組合が労働者の代表であるか会社には分からないと言えます。
したがって,使用者が雇用する労働者の代表者であることを証明する何らかの資料が提示されない限りは,団体交渉を拒絶できるものと解されます(※組合員全員の氏名が明らかになっていないことを理由にすることはできません。)。
なお,確定した裁判例が無いため,この問題については,明確な回答ができませんのでご了承下さい。

抵当権の設定をするなら土地・建物両方をとろう

債権の担保のため,債務者の不動産に抵当権を設定しようと思っています。うわさでは,土地だけ抵当権を設定しておけばいい,建物はどちらでもいい,と聴きますが,その通りでしょうか。

1 結論
もし,建物が建っている土地にだけ抵当権を設定した場合,土地を競売しても大変な損をします。抵当権を設定するなら,土地と建物両方に登記を設定して下さい。また,保存登記が無い建物についても保存登記をして必ず抵当権を設定して下さい。

 

2 理由
建物が建っている土地にだけ抵当権を設定した場合(建物・土地ともに債務者の所有だったと仮定します。),債務者がお金を払えずに抵当権を実行すると,建物には法定地上権が成立する場合があります。
法定地上権は賃借権のようなものだと理解して下さい。
このため,競売しても,土地は,更地としての価値がありませんので,大幅に価値が下がります。よって債権回収に当たっては,土地だけに抵当権を設定するというのは完全な誤りです。
なお,建物が未登記であったとしても,この法定地上権は成立することになりますから,債務者に保存登記をさせた上で,抵当権を設定する必要があります。ご注意下さい。

定年を迎えた従業員の雇用について

Y社は,60歳定年制を就業規則で定めているが,高齢者雇用安定法の改正に伴い,労使協定で継続雇用制度を導入した。
制度の内容としては,65歳まで嘱託として再雇用するが,1年更新の契約であり,一定の基準を満たす者のみ更新されるというものである(「一定の基準」は,定められていない。)。なお,労働条件は,会社と従業員とが協議して決める。
Xは,勤務態度が良好でなかったことから,60歳定年に伴い,定年退職後に再雇用されなかった。
Xは,これを不服とし,従業員としての地位確認請求をY社に対してした。
Y社はこれに応じなければならないか。

1 結論
基本的には応じなくても良いと思われます。

 

2 理由
高年齢者雇用安定法9条は,次のように規定されています。

(高年齢者雇用確保措置)
第九条  定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一  当該定年の引上げ
二  継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該 高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三  当該定年の定めの廃止

同法9条を素直に読むと,65歳までの雇用が当然に義務づけられているかのようにも読めます。
しかし,9条は,会社と労働者の間に私法的効力を認めることまで規定していないしどのような契約内容が成立するか規定されてないです。また,同法10条における制裁もごく軽微なものです。
したがって,9条により,当然に会社と定年後の労働者との間で労働契約が成立することは無いと言えます。裁判例でも同様の理由により,契約の成立を認めていない判例が多いです。
本件では,再雇用契約を締結する前は,契約内容が固まらないため,いずれにしても,XがYに対し従業員としての地位の確認を請求することはできないと言えます。

 

3 過去の裁判例のエッセンス ※正確な内容については原典をあたって下さい。
・高年齢者雇用安定法9条の法的効力
(岐阜地裁平成23年7月14日判決)→労働者側敗訴
原告が再雇用を拒絶した被告会社に対して地位確認請求をしたもの。
結論としては原告の請求を棄却。
原告は,解雇権濫用法理を主張→裁判所は再雇用契約の締結を求める権利は労働者に無いと判断し,解雇権濫用法理の適用の余地はないと判断。←高年法9条1項に私法的効力はないことを前提とする(私法的効力を認める旨の規定がない,制度内容が一義的でない,10条の制裁は軽いものであること)。
被告会社の再雇用基準は高年法9条に違反するものではない。
再雇用規程の内容からして,勤務条件は一切定まっていないため,実際に再雇用の契約が締結された場合にしか定年後の労働契約上の権利を主張できない。
原告が再雇用基準にあてはまるかどうかについては全く審理せず。

 

(大阪高裁平成23年3月25日判決)津田電気計器事件→労働者側勝訴(上告中)
詳細な再雇用基準がある事案である。
裁判所は,継続雇用の申込があった場合に,使用者側に採否の自由があるわけではなく,基準を満たす労働者は継続雇用を承諾しなければならないと判断。
本件では基準を満たすので,原告の地位確認を認める。解雇権濫用の法理を類推適用した画期的な内容であった。
その上で,継続雇用が認められた場合の賃金額が明確に定められているため,あてはめをして,賃金支払の請求も認めるものとした。

 

(東京高裁平成22年12月22日判決)西日本電信電話定年制事件→労働者側敗訴
原告が地位確認と,損害賠償を請求した事案。
高年法9条1項の私法的強行性を否定した。
同条項は,使用者の裁量を柔軟に認めるものとして,被告の継続雇用制度を違法と判断しなかった。

 

(大阪高裁平成22年12月21日判決)NTT東日本事件→労働者側敗訴
高年法9条1項の私法的強行性を否定。
9条は特定の継続雇用制度を推奨しているものではなく,多様な制度を容認している。
もっとも継続雇用にあたり,必要性合理性の無い大きな不利益変更がある場合には,継続雇用制度を定めたことにはならない。本件では必要性合理性のある不利益変更であるため,同条に反するとまでは言えない。

パワハラについて

龍達工業の織田総務課長は、困り顔で顧問弁護士の下を訪れました。織田課長の相談は次のようなものでした。

堂林という新入社員が,態度が悪かったため,担当の課長が「意欲がない,やる気がないなら,会社を辞めるべきです。会社にとっても損失です。あなたの給料でアルバイトが何人雇えると思っているのですか?」という叱責メールを堂林に送りました。叱責メールの文字は赤字で,しかも会社の同僚全員に一斉メールしました。
堂林は,担当課長のこのような行為はパワハラであり,訴えてやる!とテレビ番組の真似をして息巻いています。
会社として,何か対応した方が良いでしょうか?

パワハラって何?

 

織田 最近,パワハラという言葉をよく耳にします。新入社員が上司に楯突くときに使うようです。
一口にパワハラといってもどのような行為がパワハラなのか,よく分かりません。
言葉が一人歩きしているような気がしてなりません。

 

弁護士 セクハラと並んでパワハラという言葉は,認知度が高くなっていますね。
セクハラは,雇用機会均等法11条で定義されていますが,パワハラは法律上の定義がなされていません。
一般には,指導に名を借りた暴言・暴力,誹謗中傷,侮辱,職場における各種無視,過重・無理な業務を指示する,若しくは何もさせない,等の言動が繰り返されると,パワハラと言えるのだと思います。
織田 何となくは分かりましたが,非常に曖昧ですね。どういった事実があるとパワハラとして責任を負うことになるのですか?

 

弁護士 要は,社会通念上,許容される範囲を超えているかどうかがポイントになるでしょう。
言動の態様,行為者の地位,言動のねらい,必要性・合理性,言動によって従業員が受けた不利益の程度,反復継続性といった点が問題になると思います。

 

問題となった事例

 

織田 現実の裁判では,どんな事案でパワハラが認められているのでしょうか?

 

弁護士 まさしく今回のような事例で,東京高裁は,上司の責任を認めました(東京高判平成17年4月20日)。
裁判所によると,指導や叱咤激励の目的があったのは理解できるが,赤い大きな字のフォントを使ったり,職場の同僚全員にわざわざメールを送ったのは,許容限度を超えている,ということでした。
ただ,請求認容額は,5万円でした。

 

また,東芝府中工場事件では,ある従業員が春闘のビラを配っていたことから,上司に目をつけられ,上司から些細なミスについても、逐一始末書の提出を求められるようになった,という事案で,上司は感情に走りすぎたきらいがあるとのことで,違法と言わざるを得ないという結論になりました(東京地裁八王子支部平成2年2月1日)。
請求認容額は,15万円でした。

 

織田 上司にはいささか厳しい結論ですね。ましてや,我が社のケースでも違法と言われてはたまりません。

 

弁護士 まあでも,5万円のために裁判をする人はいないので,それほど心配しなくてもいいでしょう。
ただ,上司たるもの,ストレスの発散のような形で不必要に部下を叱ったりすると,しっぺ返しをくらいます。
今回の場合は,上司に「やりすぎた,すまん。」と謝罪させ,丸く収めた方がよさそうです。

 

弁護士 厄介なのは,被害従業員が精神的な疾患にかかり,仕事を辞めざるを得なくなるような場合です。こういうケースでは,従業員側が会社や上司が悪いと思い込むので,会社を巻き込んでの訴訟になりがちです。
パワハラの報告を受けたときの初期対応を誤ると,使用者である会社の責任まで認められてしまうことがあります。

 

織田 いわゆる使用者責任(民法715条)というものですか?

 

弁護士 さすが,お詳しいですね。
使用者責任という形だと,加害従業員の責任が認められれば,即会社の責任が認められることになりやすいです。
管理職にはパワハラについての研修を行って,管理職を監督することも転ばぬ先の杖ですよ。

 

織田 よく分かりました。社内でも励行したいと思います。

転職・引き抜き

龍神商事の落合社長は,大変慌てた様子で顧問弁護士の下に訪れました。落合社長の話は次のようなものでした。
長年右腕として厚遇してきた営業部の川上部長(取締役兼務)が知らないうちに同業のアトランタ興業に引き抜かれることになってしまいました。
それだけでなく川上部長は営業部の半数にあたる10名ほどの従業員を同時にアトランタ興業に移籍させたのです。
やり方も汚くて,部下達を慰安旅行と偽って連れ出しアトランタ興業への転職を迫り,アトランタ興業の社長まで登場させて,全員をその日のうちに転職させたそうです。
営業部が半分になった龍神商事の売上は半分以下に落ち込んでしまいました。

転職の自由? 
落 川上部長を呼び出して,話し合いの機会をもうけましたが,川上部長は「自分の力を試したくて うずうずしていた部下達の背中を押しただけで,何も悪くない。転職の自由は誰にでもある。」などと,交渉は平行線でした。

 

弁 職業の自由と言っても何をしてもいいというわけではありません。
転職の自由は最大限に保障されなければなりませんが,単なる引き抜きではなく,①退職の時期を考慮しあるいは事前に予告を行う等,会社の正当な利益を侵害しないよう配慮することなく,②会社に内密に移籍の計画を立て,かつ③一斉に大量の従業員を引き抜く等,社会的相当性を逸脱し極めて背信的な方法で行われた場合,当該首謀者らも責任を負います(東京地裁平成3年2月25日判決)。
したがって,本件では,川上氏は重要なポストにあったのに,会社に大打撃を与えるような人数の引き抜きを秘密裏に且つ騙し討ち的な方法で実行したのですから,損害賠償責任は免れないでしょう。

 

落 では,川上部長にきっちり責任をとってもらいましょう。

 

弁 私から,川上部長に内容証明を送り,交渉をしてみます。

 
書面を取り付けよう 

 
弁 あらかじめ川上部長に誓約書などを取り付けておくと,川上部長に対する警告になったり,交渉も楽になったと思います。

 

落 誓約書ってどんなのですか?

 

弁 たとえば,退職の場合,2年間は近隣地域の同業他社には就職できないとか,近隣地域での営業活動を自粛する,等を誓約させるのです。

 

落 どういうタイミングでやるんですか?
弁 従業員が管理職や役員になるタイミングで取り付けるのが望ましいですね。

 

落 今後は必ずとるようにします。

 

弁 そうして下さい。

トラック運転手と休憩時間

トラック運転手に対して与えなければならない休憩時間について教えて下さい。

 

1 休憩時間の原則
まず、トラック運転手に限らず、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上、の休憩時間を与えなければなりません。

 

2 いつ休憩を与えればいいか
始業から終業までの間に任意の時間で入れられます(労基法43条1項)。分割も制限されていません

 

3 休憩時間の一斉付与の原則は除外される
運送業については、休憩時間の一斉付与の原則が排除されています(労基規則31条)。
したがって、事業場全体で何時から何時と定める必要もありません。

 

4 手待ち時間を休憩時間に充てられるか
使用者の指揮監督にあり、労働者が自由に使えない時間は、労働時間です。
したがって、トラック運転手の手待ち時間も又労働者が自由に使えないので労働時間にあたります。

 

逆に、指揮監督から外れ、労働者が自由に使える時間は休憩時間です(昭39.10.6基収第6051号)。
したがって、
たとえば、積荷の到着間隔が確実に30分を超えるような場合、トラック運転手に対し、
「何時から何時までを休憩時間とします。何時には職場に戻って、積荷が届いたらすぐ作業できるよう待機してください」など指示を出し、
事前に休憩時間を指定すれば、
その時間を労働時問から除外することも可能になります。
しかし、後から、待機時間の一部を休憩時間にするような対応はできません。

顧客名簿の管理は大事!

落合商事は、薬局に業務用コンピューターを販売する会社です。
落合商事で営業として働いていた山崎氏は、落合商事から預かった顧客名簿を見ながら得意先に営業していました。
やがてトップセールスマンになった山崎氏は、落合商事から同業他社のツバメ電子に引き抜かれました。
山崎氏はツバメ電子に引き抜かれるにあたって、落合商事の得意先全員に挨拶状を出し、その中でちゃっかりツバメ電子の宣伝までしましたが、こんなことは落合商事の顧客名簿を持って行かなければできないことです。
恩を仇で返すようなやり方で許せませんので、山崎氏に対して法的手続きをとって頂けませんか?

顧客名簿が営業秘密としてきちんと管理されていたならば、比較的損害賠償を請求しやすいと言えます。

 

1 営業秘密なのか?
不正に取得した「営業秘密」を使用した場合、不正競争防止法2条1項などによって、使用者は損害賠償責任を負います。
では、顧客名簿は「営業秘密」にあたるのでしょうか。

 

2 管理がポイントに 
「営業秘密」は、秘密として管理されているものであることが必要です。秘密として管理されていないと、営業秘密にあたらないと判断されてしまいます。
したがって、どういう管理をすべきかが重要な問題になります。
判例は、はっきりした答えを出していませんが、一般的には、営業秘密が、従業員や部外者から一見して分かる程度に秘密管理状態に置かれていることが必要だと判断しています。

 
たとえば、当該営業秘密を記載した書類が会社内の机に無造作に放置してあるような場合は、従業員全員が見ることができるので、秘密とは言い難いでしょう。営業秘密にアクセスできる従業員が限定されていなければなりません
また、従業員と秘密保持契約を締結せずにいるよりも、きちんと秘密保持契約を締結していた方が、秘密にしていたと言えます。就業規則にも従業員に対し顧客名簿の持ち出しを禁止しておけば、なお良いでしょう。

 
さらに、顧客名簿に何も書かれていないよりも、部外秘と記載されていた方が、秘密にしていたと言えます。
つまり、①アクセス者の限定、②従業員との契約(含 就業規則)、③秘密であることを顧客名簿に記載することなどがポイントです。

 

3 日頃の対策 
顧客名簿等の重要書類は、以上の点を意識して管理して頂きたいと思います。
また、被害を未然に防ぐためには、営業秘密を従業員に開示する際に、当該従業員が必要とする部分に限って開示する等の、手立てを講じておくべきでしょう。

上場していない株式は譲渡できますか?

私は、ある会社の取締役を務めている時に、
会社の株式を100株持っていました。
このたび、取締役を退任することになったのですが、
会社は株式を引き取ろうとしません。
この会社は上場していませんが、株式を譲渡できますか?

まず、株式は自由に譲渡できるのが原則です(会社法127条)。
もっとも、会社の定款で
「株式の譲渡による取得については会社の承認を要する。」
などと、譲渡制限がうたってある場合、
会社(取締役会乃至株主総会)の承認が必要となります。

 
譲渡制限がある場合、
株式の譲渡ができなくなるわけではありません。
単に、
譲渡の際、承認が必要なだけです。
会社が承認しない時は、
会社が買い取るか、会社が指定する人物が買い取ることに
なります(会社法140条)。
会社が責任を持って譲渡先を決めない場合は、
あなたが譲渡したいと思っている人に譲渡することができることになります。

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月曜日~土曜日9:00~18:00(休業日日曜・祝日)※予約のあるご相談は、時間外でも対応いたします。

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