元請け会社の現場監督から依頼をうけた工事について、元請け会社から支払いを出来ないと言われました。
工事を受注し、現場に入りましたが、現場監督さん(元請会社の)から、予定された工事とは別の工事も対応してほしい、と依頼がありました。
そこで私は、100万円なら工事を対応します、と話をしたところ、現場監督さんは、それでいいから至急取りかかってくれ、と言われました。
私は、現場監督さんから、元請会社名義の注文金額を書いた念書を作成してもらい、指示通り、工事を完成させました。
しかし、工事完成後に元請会社に100万円を請求したところ、元請会社から、現場監督には契約を結ぶ権限はない、とのことで、50万円しか払えないと断られました。
納得できないのですが、どうしたらよいでしょうか?
ご回答
1 原則、社長(代表取締役)と話をせよ
今回の元請会社のように、担当者の無権限を理由に契約を反故にされるケースはたまにあります。
法人と契約を締結するとき、一体誰と話をすればいいのでしょうか?
大原則は、会社の社長(代表取締役)です。
法人登記簿謄本を調べれば、代表取締役が分かりますので、その人と契約交渉しましょう。
口頭で合意するにせよ、書面を取り交わすにせよ、契約を締結するときは、必ず「代表取締役」を相手にするのです。
なぜなら、代表取締役はいかなる場合も法人の代表者として権限を持っているからです。
他方、その他の取締役や従業員は、代表取締役から権限を与えられれば、契約を締結できますが、権限を与えられなければ、契約締結できません。
代表取締役が、どの取締役や従業員に、いかなる権限を与えているか、必ずしも分からないため、心配ならば、代表取締役と話をして下さい。
また、自分の部下に対しても、代表取締役を相手にするよう、きちんと教えておく必要があります。
事例の現場監督のように、権限がない人と合意しても、相手方会社に契約の効力を対抗できず、無意味となります。
特に相手方会社と初めて取引をする場合、会社内での権限の定めが全く分からないのですから、確実に権限があると確認がとれない限り、契約してはいけません。
2 契約締結権限が誰にあるか明確に伝えよう
逆に、権限のない自社従業員が、取引先に迫られて、勝手な約束をしないように、取引先等に対して、従業員に金銭に関する権限はない、と事前に通知しておく工夫も考えられます。
実際の例ですが、気弱な現場監督が、下請業者から迫られて、工事代金を勝手に増額したり、勝手に発注してしまった、ということがありました。
当然、現場の従業員に対して、勝手な合意をするな、と指導することも重要ですが、最初から、取引先に対し、この現場の従業員には契約締結権限はない、代表者の自分しか契約締結権限がない、とメールなどで通知しておけば、余計なトラブルを避けられるでしょう。
例えば、会社から取引先に出す注文書等に、契約締結担当者を代表者と指定しておく等すれば、他の従業員と勝手に交渉はしないでしょう。仮に交渉しても無効となります。
月刊東海財界2023年11月号掲載