会社設立時に株式を半数ずつ持った友人との関係が、最近悪化。友人に会社を出て行かせられますか?
会社設立の際、私と友人とで100万円ずつ出資し、100株ずつ均等に所有することにしました。
現在、私も友人も取締役となっており、友人の方が代表取締役となっておりますが、数年前から私と友人との関係は急激に悪化、社内で顔を合わせるだけで口論になり、耐えられなくなってきました。
二人とも、自分から会社を出るつもりはないのですが、何とか友人に会社から出て行ってもらう方法はないでしょうか。
ご回答
今回のようなケースは、これまでに数件担当したことがあります。
仲の良い友人同士で会社を設立する場合、50%ずつ株式を所有する例はたまにあります。対等な関係で事業を起ち上げるのだから、株式も対等でなければ、という思いから、そうされたのだと思いますが、揉めたときは、本当に大変になります。
今回のように、株式会社で過半数の株式を所有している人がいないということは、誰も何も決められない、ということになります。
(1)たとえば、相手方を取締役から解任したいと思っても、株主総会で解任を決議することができません。解任に必要な普通決議には、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数を必要とするからです。
あなたが議案に賛成したくても、友人も賛成してくれないと決議ができないというわけです。もちろん、友人が自分を取締役から解任する議案に賛成するわけがありません。
逆に、同じ理由で、友人もあなたを取締役から解任することはできません。
(2)また、取締役の任期が切れた後、改めて取締役を選任することもできません。
過半数の議決権を有している株主がいないので、二人が一致しなければ取締役の再任すら決議できないのです。
なお、再任決議が無いと、任期切れ取締役となりますが、新たに選任される取締役もいないため、取締役としての権利義務はそのまま維持されます。そのままだから問題はないのかもしれませんが、健全な状態とはいえません。
(3)その他、会社として重要な方針を決定することも、できません。
このような対立状態を「デッドロック」といいます。
このようなデッドロック状態をどう解消したら良いのでしょうか。
(1)1つには、友人から株式を買い取って、友人に取締役を辞任してもらうか、逆に、あなたが友人に株式を売って、自ら取締役を辞任するか、という方法があります。
(2)しかし、二人とも株式を渡したくない、ということであると(例えば、代金の折り合いがつかない場合など。)、「解散」という方法があります。
すなわち、今回のように、あなたと友人とで関係が悪化し、物事が決められなくて、困ってしまっている場合は、裁判所の手続により解散を行うことができることもあります。
会社を解散すれば、清算人が、会社の財産・負債を清算し、残余財産をあなたと友人に配分することになります。
とはいえ、解散は、会社を消滅させることになるため、取引先や従業員に迷惑をかけることになります。また、会社の財産が多額だと、税金の負担が重くなることもあります。解散のための費用もかかるため、双方にメリットはないでしょう。
(3)やはり、望ましいのは、上記(1)の株式売却です。株式を売却すれば、譲渡所得税くらいしかかかりませんので、双方が損をしないよう、上手に価格交渉されてはいかがでしょうか。
月刊東海財界2023年10月号掲載