自宅の売却時に専任媒介契約をすすめられました。注意することはありますか?
ご回答
私は、地域ごとで、仲介を依頼する不動産業者を決めています。遺産相続、離婚事件などで、不動産を売買する機会がよくあるので、不動産業者と密接な関係を持っておくことは大事です。また、不動産の時価を査定してもらう案件も多いので、不動産鑑定理論をある程度勉強している業者と提携しています。
不動産業者もいろいろで、丁寧に親身に売買成立に向けて動いてくれる業者もありますが、不誠実と思われる業者も少なからずあります。不動産業者の選定は慎重に、どなたかの紹介を受けて、定評がある業者に依頼したいものです。
ところで、媒介契約には以下の3種類があります。
一般媒介契約とは、3つの中で最も制限が少なく、複数の不動産会社に仲介を依頼することができ、依頼者が自分で購入希望者を見つけて売買することも可能です。ただ、レインズ(指定流通機構)への登録義務は任意で、販売状況の報告義務はありません。私は、ほとんどのケースで、この契約を利用していますが、より多くの不動産業者に情報を届けて、成約の可能性を高くすることが良いからです。
ただ、不動産業者からすると、一生懸命販売活動をしても、他の不動産業者が契約を決めれば、それまでの労力が無駄に終わるため、販売活動に身が入らないという危惧もあります。
専任媒介契約とは、1社のみに依頼する媒介契約で、他の不動産業者に仲介を依頼することはできません。しかし、レインズへの登録が義務化され、依頼者への販売状況の報告義務が14日に1回以上と定められています。1社としか媒介契約を結べないため、業者も、売却するために一生懸命販売活動するはずだ、と思われます。加えて、定期的な販売状況の報告義務が課せられて、レインズへの登録が義務化されていることも、メリットだと言われています。ただ、他社との競争がないため、不動産業者が、営業活動をしっかりやらない心配もあります。
もう一つの専属専任媒介契約は、あまり利用されていないので、説明を省略します。
今回のケースのように、不動産業者は、他の業者との競争を避けるため、専任媒介契約を勧めることが多いと思います。
私の考えでは一般媒介契約が、一番良いと思います。経験上、専任媒介契約を結んでも、一般媒介契約を結んだ場合に比べて、より熱心に買手を探してくるという実感がなく、一般媒介契約でも、買手を探す力がある不動産業者であれば、他の業者に先んじて買い手を見つけてこれるからです。
なお、仲介手数料は、国交省告示(令和元年が最新)で上限が決められ、多くの業者が、契約書で上限近くの金額を決めていますが、安くしてくれる場合もあります。
月刊東海財界2023年7月号掲載