離婚について知っておくべき基本
◆離婚と財産分与
離婚の際に問題となることが多いのが,財産分与です。
法律では,離婚した場合,相手に対して財産分与の請求をすることができる,と定められています(民法768条1項)。
財産分与の請求とは,基本的には,これまで夫婦二人で共同して形成してきた財産の清算をしましょう,というものです。
ですから,たとえ離婚の原因を作ってしまった場合(たとえば不倫した場合)であっても,財産分与の請求はできますので,あきらめないようにして下さい。
ただし,離婚が成立してから2年経過してしまうと,請求できなくなってしまいますので,注意が必要です(同条2項)。
◆財産分与の流れ
財産分与を行うまでには,
①財産分与の対象となる財産を確定する。
↓
②対象となる財産の評価額を確定する。
↓
③どのような割合で分割するかを確定する。
という作業が必要です。
◆①財産分与の対象となる財産を確定する。
(1)財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は,夫婦の共有財産です。
夫婦のどちらか一方の名義になっている財産であっても,婚姻中に夫婦の協力により取得した財産であれば,原則として夫婦の共有財産とみなされます。
不動産,預貯金,車,美術品,株式など,手許にある財産のみでなく,将来支給される予定の退職金,生命保険の積立金のように,手許にない財産も財産分与の対象となることがあります。
また,プラスの財産のみではなく,借金などのマイナスの財産も,財産分与として考慮されます。
(2)財産分与の対象とならない財産
結婚前から所有していた財産,結婚後に相続により取得した財産などは,夫婦の協力によって形成された財産ではないので,原則として財産分与の対象にはなりません(特有財産といいます。)。
しかし,特有財産であっても,その維持に相手方が協力したと認められる場合には,財産分与の際に考慮されます。
結局のところ,財産分与の対象になるかどうかは,それぞれのご夫婦の事情によって判断されるということになります。
◆②対象となる財産の評価額を確定する。
預貯金の場合には,評価するまでもなく金額を確定することができますが,不動産や非上場の株式等の場合には,その評価額を確定する必要があります。
評価の方式について明確な決まりはありませんので,たとえば不動産の場合には,固定資産税評価額,路線価額,不動産業者の査定額など,さまざまな方法による評価が考えられます。
◆③どのような割合で分割するかを確定する。
分割割合は,原則として,財産の形成に対して,夫婦それぞれがどれくらい貢献したか,という点に基づいて判断されます。
最近は,共働きの夫婦ではなく,一方が専業主婦の夫婦の場合でも,2分の1ずつの割合で分割するという例が多いです。
◆きちんと財産分与をしてもらうために
財産分与の流れは以上のとおりですが,明確な基準がない点も多々あり,ご家庭の事情や,ご夫婦のご職業,財産の種類などによって,問題となる事項は千差万別です。
きちんと財産分与をしてもらうために,まずは法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。