共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正
共有関係の解消に関する法改正と、所有者不明土地の解消に向けた法改正がありましたので、アナウンスさせて頂きます。
共有関係の解消に関する法改正
共有関係の解消を促進する必要性とは?
被相続人が土地を生前に所有していた場合、当該土地は相続人間で共有されることになりますので、当該土地を売却したり賃貸したりするためには、他の共有者の同意が必要となってきます。
しかし、共有者間での土地の管理方法等に関する話し合いがまとまらないために、土地の活用を諦めて当該土地を放置するケースが出てきており、これが社会問題となっております。
そこで、土地を放置するケースを減らすために、共有関係の解消をしやすくするための法改正がこの度なされました。
具体的に何が変わったのか?
大きな変化としては、以下の3点が挙げられます。
①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
以下、上記①から③について説明していきます。
①共有物分割訴訟の内容が理解しやすくなりました。
・共有物分割訴訟の要件について、改正前は、「協議が調わないとき」しか条文には明記されていませんでしたが、一部の者が協議に応じない等によりそもそも「協議をすることができないとき」も含まれることが明らかになりました。
・裁判による共有物分割の方法として、⑴現物分割(共有不動産を分筆して、分筆されたそれぞれの土地を、共有持分権者がそれぞれ取得する方法)⑵代償分割(一部の共有者に土地を取得させ、それ以外の共有者が土地を取得した共有者から代償金を受け取る方法)⑶競売分割(競売により土地を売却し、かかる売却代金を共有者間で分ける方法)の3つの方法を明示し、⑴と⑵の分割方法は同列で選択可能、⑶の分割方法は、⑴と⑵のどちらの方法も採ることができない場合に用いられるものということが条文上明らかとなりました。
以上のとおり、要件や分割の方法等が条文で明記されることになりましたので、共有物分割訴訟がどのような手続なのかを一般の方も理解しやすくなりました。
②遺産分割手続を経なくても共有物分割訴訟が利用できるようになりました。
改正前は、遺産については、家庭裁判所による遺産分割の手続によるべきとされており、地方裁判所による共有物分割訴訟はできませんでした。
しかし、法改正により、相続開始から10年間、遺産分割手続が行われていない場合、遺産分割を経なくても共有物分割訴訟を提起すれば、共有関係を解消することができるようになりました。
※但し、遺産分割の請求を求める相続人から異議の申出があった場合はできません。
③所在不明の共有者の共有持分を他の共有者が取得できるようになりました。
改正前にはありませんでしたが、法改正により、例えば、共有者のAさんが所在不明の場合、他の共有者のBさんが裁判所に申し立てをすると、Aさんの共有持分を、Bさんが取得することができるようになりました。
これにより、共有者の一人が所在不明であるために、土地を活用することができないという問題を解消することができるようになりました。
所有者不明土地の解消に向けた法改正
そもそも所有者不明土地とは何か?
登記の記載が不十分であったり、亡くなった方の名義のままになっている等の理由で所有者が不明、又は所有者の所在を知ることができない土地のことを指します。
所有者不明土地の問題点とは?
例えば、道路または公共物を建築するのに土地を収用する必要がある場合に、土地所有者に連絡をとることができないために、収用手続が進まなかったり、土地所有者に連絡がつかないために、固定資産税の課税ができない等の問題が生じています。
所有者不明土地管理命令が新設されました。
上記のような問題を解消するために、所有者不明土地管理命令が新設されました。具体的には、裁判所は、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができるようになりました。
そして、所有者不明土地管理人が当該土地に関する様々な問題に対応することにより、上記のような問題を解消することができるようになりました。
まとめ
以上のとおり、共有関係の解消や所有者不明土地の解消に関して、様々な法改正がなされました。
当事務所では、不動産に関する紛争についても豊富な取扱・解決実績がありますので、ぜひご相談ください。
投稿日:2021年9月15日 13:53|カテゴリー:弁護士の役立つ情報