取引先から3000万円もの売掛金を滞納されています。回収するためにはどうしたらいいですか?
A建設会社とはこれまで、500万円程度の取引を3回して、いずれも、約束通り代金の支払いをしてくれました。
今回は、大きな建築現場で使う資材の注文を受けて、売掛金が3000万円となりました。ところが、「建築主が工事代金を払ってくれないので、売掛金の支払いを待ってほしい」と言われました。私は、社長が個人保証してくれることを条件に、待つことにしました。
ところが支払期限がきても、支払われないので調べたところ、自宅に最近抵当権設定登記がなされていました。売掛金を回収するためにはどうしたら良いですか。
ご回答
まずは、A建設会社の資産状況と、社長の自宅の権利関係、資産価値を確認する必要があります。
そして、急いで売掛金の請求をすべきですが、相手方が誠意を持って、支払い方法を説明するなら、交渉で回収することも可能かもしれません。
しかし、難しいなら、すぐに弁護士へ委任し、法的手続きを取った方が良いです。
法的手続きとしては、民事訴訟を提起して、判決をもらうことを目指します。判決にいたる途中で、裁判所が間に入って、和解手続き(話し合いによる解決)に入ることが多いと思います。相手方が支払っていけるような、確実性がある内容なら、和解による解決もいいでしょう。この場合、和解調書を作成して終了しますが、和解調書は判決と同等の効力があり、これに基づいて強制執行もできます。
しかし、このような和解ができなければ、できるだけ早く判決をもらうべきです。
判決には、本件のような事例では、A建設会社と社長に対して、金銭の支払いを命じ、仮執行宣言が付けられます。
仮執行宣言が付けられると、すぐに、A建設会社及び社長の財産(不動産、預貯金や売掛金などの債権、自動車などの動産)を対象にして強制執行(民事執行法に基づきます)できます。
この場合、一番困るのは、強制執行すべき対象となる財産が見つけられないことです。令和2年4月1日改正法では、①財産開示手続の見直し(財産開示手続について、出頭しなかったりした場合には、刑事罰が科され得ることになりました。)、②第三者からの情報取得手続(不動産に関する情報取得手続、給与債権に関する情報取得手続、預貯金債権に関する情報取得手続)が新設されました。
本件では、社長の自宅不動産に抵当権設定登記がなされてしまったことが惜しまれます。
早い段階で、保全手続を利用して、自宅の仮差押えをして、その後の処分ができないようにしておくべきだったと思います。勿論、この不動産に、すぐに抵当権設定登記をしておく方が良かったですが、仮差押えとは、相手方の財産を仮に差押さえて、その後、第三者に売却したり、抵当権設定登記などの処分を止めることができます。後日、勝訴判決を得てから、その不動産を競売して、回収を図ることが可能です。
月刊東海財界2023年6月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。