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会社法改正でどのような議論がされていますか?

ためになる実務~会社法制の見直しに関する中間試案(その1)
片岡 憲明
1 中間試案の公表
新聞では度々報道されているが,現在,法制審議会会社法制部会では,会社法制の見直しについて調査・審議が行われており,昨年12月には,中間試案が公表されている。審議のペースを考えると,本年の後半から来年の前半にかけて会社法の改正案が国会に提出される可能性がある。
そこで,公表された中間試案の内容について,その一部を紹介すると共に併せて議論状況を解説したい。

 
2 論点と内容
中間試案の内容は,大きく3つに分かれる。「第1部 企業統治のあり方について」,「第2部親子会社に関する規律について」,「第3部 その他」である。
今回は,第1部 企業統治のあり方のうち,(1)取締役会・監査役の監督機能強化の重要部分を取り上げる。

 
ア 社外取締役の選任義務付け
現行会社法では,社外取締役の選任は義務付けられていない。
中間試案では,社外取締役の選任義務付けに関し,次の3つの案が掲げられている。

【A案】 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限る。)において,一人以上の社外取締役の選任を義務付けるものとする。
【B案】 金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において,一人以上の社外取締役の選任を義務付けるものとする。
【C案】 現行法の規律を見直さないものとする。

上記のうち見直し不要とするC案は,監査役会の半数以上を占める社外監査役と機能が重複すること,例外無き義務づけは経営を硬直させること,何より人材確保が著しく困難であること,を理由として挙げており,経済界も強くC案を推す。
しかし,耳目を集める会社不祥事が頻発した実情や,中国・韓国ですら上場会社に社外取締役の設置を義務付けている状況からすると,C案の採用は難しいであろう。
なお,A案とB案とは,対象範囲を分ける視点が異なり,A案よりもB案の方がより限定的である。
B案の会社の具体例としては,上場会社や1億円以上の有価証券(株券や社債券等)の募集・売出を行った会社,過去5年間において株券等の保有者が1000人以上になったことのある会社(資本金5億円以上)等である。
社外取締役義務付けが,市場の信頼を高めるという趣旨であるならば,B案のように,社外取締役が義務づけられる会社の範囲を市場に関与する会社とするのが合理的である。なお,中間試案に対する日弁連意見書においてもB案に賛成している。

 
イ 社外取締役等の要件の厳格化
社外取締役が義務付けられるだけでも会社に対する負担は重いが,更に重い負担となるのが,社外取締役等の要件の厳格化である。
現行会社法では,社外取締役については,現在も過去も当該会社や子会社の業務執行取締役,執行役,支配人,使用人ではないことを要件とし,社外監査役については,上記に加え,取締役,会計参与ではないこと,を要件としている。
中間試案では,A案として,「親会社の取締役,執行役,支配人,使用人でないこと」を追加するとともに,「当該会社の取締役らの配偶者・2親等内の血族・姻族でないこと」も追加することを掲げている。
なお,親会社だけでなく兄弟会社の関係者でないことや重要な取引先の関係者でないことといった要件を追加するかについては,なお検討するものとしている。
このように要件を厳格化する一方で,現行法では何十年前であっても当該会社関係者であったならば社外性が否定されているところ,A案を採用する場合は,10年間,当該会社関係者でなければ社外性が認められる旨の緩和策も提案されている。
なお,B案は,現行法を見直さないとするものである。
中間試案に対する日弁連意見書では,A案に賛成すると共に,上記なお書き部分についても基本的に賛成し,更に,社外取締役に弁護士等の法律専門家の選任を義務づけるべきとの内容となっている。
いずれにしても,社外取締役等の要件の厳格化に伴い人材確保が困難となることが予想され,弁護士会としても,積極的に社外取締役等への弁護士の活用を呼びかけていく必要があるものと思われる。

 
ウ 監査・監督委員会設置会社制度
(ア) 新しい業務監査機関
聞き慣れない名称であるが,中間試案で導入を検討されている会社制度として,監査・監督委員会設置会社がある。
現行法では,業務監査機関として,監査役・監査役会,監査委員会(委員会設置会社)が設置可能である。ここに新たな業務監査機関として,監査・監督委員会を用意する。
監査・監督委員会の構成委員(監査・監督委員)は,業務を執行しない取締役で構成され,人数は3名以上,うち過半数が社外取締役というものだ。
上記委員会の構成員は取締役であるため,もちろん,取締役会に出席し,各種議決権を行使し,取締役の業務執行に対する監査・監督を直接行うと共に,監査・監督委員会に与えられた各種権限を行使して,その独立性を確保する。
この制度の眼目は,社外取締役の選任を促進しガバナンス強化を行う点にある。

 
(イ) 既存の会社制度との違い
もっとも,社外取締役を導入するだけならば,従前の会社制度でも十分可能でありわざわざ新制度導入の必要は無いとの疑問も生じる。
たしかに,監査役会設置会社においても,社外取締役を導入することは会社の自由であった。しかし,監査役会設置会社では,社外監査役を2名以上選任する必要があるため,これに加えて社外取締役を選任するというのは会社にとって負担が重い。
また,委員会等設置会社でも,監査委員会の外に指名委員会・報酬委員会を置く必要があり,これら全ての委員会に社外取締役を過半数置く必要があるため,やはり負担は重いのである。
これら既存の会社制度とは異なり,社外取締役が過大な負担無く置ける会社制度として,監査・監督委員会設置会社の導入が検討された。

 
(ウ) 監査・監督委員会設置会社の構成
なお,監査・監督委員会設置会社の構成は,①取締役会,②監査・監督委員会,③会計監査人という1通りの組み合わせしかない。監査役も監査役会も置けない。

 
(エ) 監査・監督委員会の権限
監査・監督委員会の権限は,現行法の監査役会と極めて類似のものが想定されている。
たとえば,監査・監督委員選任の同意権,委員取締役の選任に関する議題・議案提出請求権,委員取締役の解任は株主総会での特別決議が必要であること,株主総会における各種意見陳述権,任期が2年であること,報酬の決定が他の取締役から独立していること等である。
これらの権限によって,委員取締役の独立性が担保されることになる。
以上の通り,監査・監督委員会設置会社は,工夫された制度ではあるが,中間試案では,監査・監督委員会の負担を軽くしようと,常勤の委員を不要としたり(監査役会では常勤監査役が必須),取締役会が取締役に決定を委任できる業務執行の決議事項の範囲が委員会設置会社と同等になる場合が規定されている等,ガバナンス強化の趣旨に反する事項も掲げられており,問題点が指摘されているところである。
ガバナンス強化の趣旨に反する組織にならないよう今後も注視する必要があると言える。

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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