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名古屋の弁護士Q&A

老人介護施設で事故が起こったときに、どう対応すればよいでしょうか?

私は介護施設を経営しています。

老人介護施設で、甲さん(78歳)が車椅子に乗ったまま昼食中、食卓テーブルから落ちた物を拾おうとして、立ち上がろうとしたとき、車椅子のストッパーがされていなくて、車椅子が動いたため、転倒し腕と大腿骨を骨折されました。

甲さんのご家族から、かなりの剣幕で、事情を説明して欲しいと申し入れしてきました。
今後、甲さんのご家族にはどのような対応をしていったらいいでしょうか。

ご回答

介護施設として、要介護3以上の方を対象とする特別養護老人ホームと、リハビリを中心とした介護老人保健施設などがあります。

私の顧問先にも介護施設を経営されている法人がありますが、いろいろな問題が発生します。内部でしっかりした介護マニュアル、介護職員らの職務指針や詳細な作業手順を作成して、定期的に研修など重ねています。また事故が発生しかけた際には、ヒヤリ・ハットの事例を記載させ、その情報を皆で共有し、事故の発生防止に努めています。
ここまでしていても、介護施設ではよく事故が発生しています。

ところで、事故が発生した時は、まず加入している賠償責任保険の保険会社にすぐに報告しておく必要があります。
また、介護施設は責任追及を受けることを恐れ、被害者側への説明を十分しないことがありますが、できるだけ丁寧に対応すべきだと思います。もっとも、説明を尽くしたのに、家族が過激な行動に出たときは、それ以上は対応しなくても良いです。ひどい場合は警察の援助を要請したり、弁護士などに対応を委ねてもいいです。

甲さんのような転倒・転落事故は特に多いと思われます。
事故が起きたときには、家族からは、施設側に事故時の状況説明を求められ、担当スタッフ、施設長らがこれにあたりますが、十分内部で状況を把握して説明すべき内容を確定しておくべきで、それぞれがまちまちのことを話すと、不信を招くので注意して下さい。この際は、家族側は録音を録っているので、そのことを意識して話して下さい。念のためこちら側も録音した方が良いです。

介護事業者は、介護サービスの提供を受ける者またはその家族との間で、介護契約を締結しており、被介護者の心身の状態を的確に把握し、施設利用に伴う転倒等の事故を防止する安全配慮義務を負っています。
このような形での転倒はかなり突発的であった可能性がありますが、甲さんの過去の転倒事故の有無、身体の状況、歩行の様子などから、甲さんがこのような動きをする危険性があり、このことを介護事業者が認識しえた場合には、落としても自分で拾わないように、口頭で注意するとか、近くで見守るとかする、事故発生回避義務があったといえそうで、損害賠償義務があるかもしれません。

なお、介護事業者の過失が認められても、過失相殺により、介護事業者の損害賠償金額が一定程度削られることが多いです。

月刊東海財界2020年5月号掲載

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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