債権回収には仮差押えが効果を発揮します
ある会社に重機を貸しましたが,レンタル料(約100万円)を払ってくれません。
現在,その会社にはショベルカー(200万円くらいの価値)があるのですが,その他にめぼしい財産はありません。ショベルカーを売って債権者への返済にまわすつもりだが,私の会社には払う金が無いと言っています。
どうしたらいいでしょうか。
1 ご回答
ショベルカーが売られる前に,そのショベルカーを仮差押えすることをおすすめします。
仮差押えをすることで,早期に債権回収を図ることが可能になるかもしれません。
2 補足説明
本件の場合,貴社はレンタル料について相手方会社に対する訴訟を提起し,判決をもらった後で,ショベルカーを差し押さえるというのが本来の手続です。
しかし,判決をもらうまでには早くとも3か月,遅いと1年程度かかる場合があり,その間にショベルカーが売却されてしまう可能性があります。
そのため,民事保全法では,判決までの間,ショベルカーのような動産の処分を禁じたり,場合によっては動産を執行官が取り上げて保管する,といったことを可能としています。
要するに,仮差押えを利用すれば,とりあえず動産(ショベルカー)が売却されなくて済む訳です。
また,債務者によっては,仮差押えをされたままだと仮差押えをされた物が売却できないから,仮差押えを何とか解除してもらおうと,仮差押えをした債権者に対して優先的に弁済をすることもあります。
このように,仮差押えは債権者にとって大きなメリットがあります。
3 注意点
このように,仮差押えはメリットが大きいですが,他方で注意すべき点があります。
①紛争に決着がつくまで担保金を積まなくてはならない,
②ある程度の証拠は迅速に用意する必要がある,
③常に裁判を回避できるわけではない,
といった点です。
仮差押えを行う場合,債務者にとって不利益が生じるため,債権者は担保金を積まなければなりません。たとえば,本件のような場合,60万円ほど担保金を積まなければなりません。とられてしまうわけではありませんが,裁判を行うなど,①紛争に決着がつくまで担保金は取り戻せなくなります。
次に,仮差押えは緊急で行うのですが,②時間が無いのに結構たくさんの証拠の提出を求められる場合があります。迅速に対応する必要があります。
さらに,あくまで仮の差押えですので,③最終的に目的物をお金に換えるためには裁判が不可避です。
以上のメリットデメリットを考慮して,仮差押えを行うか,決めるのです。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。