交通事故に備えて入っておくべき自動車保険
ところが、相手方は外国人で任意保険に加入しておらず、収入もなく一切賠償できないということです。
私が契約している保険会社に相談したところ、私が最低限の賠償責任保険しか入っていなかったため、自賠責保険金など最低限の補償しか受けられないと説明されました。このようなケースに備えて、どのような保険に加入すべきだったのでしょうか。
ご回答
1 相手方が無保険のケース
当事務所では、近時、多数の交通事故事件を担当しております。相手方が外国人で任意保険に未加入、というケースも数多く経験しました。こうしたケースでは、相手方に支配能力が無いため、ほとんど損害賠償してもらえない(自動車の修理代、怪我に対する治療費・慰謝料・休業損害等)という事態も珍しくありません。
このようなケースに備えて、どのような保険に加入しておくのが良いのでしょうか。
2 車両保険
まずは、車両保険に加入することをお勧めします。
これは、相手方が無資力であったとしても、また、自分にも過失があったとしても、車両保険金額の枠内で、車両の修理代をカバーしてもらえる保険です。
相手方が無資力であっても、過失割合に争いがあっても、相手方との交渉無くすぐに支払ってもらえるので、スムーズです。
3 人身傷害補償保険
次に、人身傷害補償保険に加入することもお勧めします。
これは、やはり相手方が無資力であっても、また過失割合がある事故であっても、人身損害の大部分(約9割程度)を保険会社が補償してくれます。
保険会社が一定の基準で、治療費、慰謝料、休業損害、後遺障害に対する補償等を相手方との交渉無く支払ってくれるので、非常にスムーズです。
これらの損害額は大きく、相手方との交渉が難航するケースが多いため、非常に被害回復に役立ちます。
なお、補償金と本来の賠償金額との差額を相手方に請求することも可能ですから、最終的に100%に近い補償を受けることも可能です。
4 弁護士費用特約
自動的に付帯されることも多いのですが、弁護士費用特約にも加入しておくと良いです。
万が一相手と法的なトラブルになった際に、弁護士への相談・依頼費用を保険でまかなえる制度です。保険料に対してメリットが非常に大きく、トラブル時に大いに役立ちます。
5 保険料とのバランス
もちろん、これらの補償を追加すると保険料も上がります。
したがって、実際に事故に遭った際のリスクを考え、補償と保険料とのバランスを考えて頂きたいと思います。私は、普段から【質問】のような事案に接しているため、必ずこれらの特約を追加するようにしています。
月刊東海財界2025年9月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。




