自宅売却のための不動産業者や契約形態の選び方について教えてください。
ご回答
不動産業者選びは迷いますが、大手有名会社が必ず良いとは限りません。大手だと情報量・経験・売却力が高いと思いがちですが、実は、取り扱う不動産情報には、大きな差がありません。不動産業界ではレインズという指定流通機構が利用されていて、どの不動産業者でも売買物件情報を見ることができるからです。むしろ、地元で古くから不動産業を営んでいる中堅業者(宅地建物取引業者の認可番号で確認)の方が、売買情報を多く持ち、こまめに動くので、売買成立に至るケースが多いと思います。
ところで、不動産業者の仲介手数料は、売買代金が400万円を超えるときは、売買代金の3%+6万円とされています(宅地建物取引業法で定める上限額)。また、仲介手数料は成功報酬で、売買が成立した時に支払うものなのです。そのため、なかなか売却できないと、売却価額を下げるように迫ってくることがあります。
仲介を依頼する場合は、必ず媒介契約書を作成しますが、契約書には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、業者は専任媒介か専属専任媒介を勧めることが多いです。
一般媒介は、最も制限が少なく、複数の業者に仲介を依頼することができ、依頼者が自分で購入希望者を見つけて売買することも可能です。この契約の場合、他の業者と競合するため、熱心に仲介活動をしないと思われがちです。
専任媒介は、1社のみに依頼する契約で、他の業者へ依頼することはできませんが、自分で買い手を見つけて売買することはできます。契約締結の翌日から7日以内にレインズへの登録義務があり、14日に1回以上依頼者への販売状況の報告義務があります。契約の有効期限は3ヶ月です。一般媒介よりも、一生懸命仲介活動すると言われています。
専属専任媒介は、基本的な内容は専任媒介契約と同じですが、自分で買い手を見つけて契約することは禁止されています。レインズへの登録は5日以内にしなければならず、依頼主に対する報告義務は7日に1回以上と定められています。
私が、受任業務の過程で不動産売却をするときには、複数の業者と、仲介手数料も減額させて、一般媒介契約を結び、もっとも高い買い手を探させます。業者は、早く高く買う買い手を探さなければ、仲介手数料が入ってこないわけですから、通常一生懸命買い手を探してくれます。逆に、専任媒介や専属専任媒介でも、業者の動きがにぶく感じることがあり、レインズへの登録を怠ったり、依頼主に対する報告義務を怠ったり、おざなりな報告しかしてこない例も見受けられます。
月刊東海財界2022年2月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。