放置車両の撤去法
賃借人のYは,車を置いたまま,行方不明になってしまい,1年が経過しています。
賃料の支払いも当然滞っています。
Yに連絡をとろうにも,携帯電話や自宅電話は通じません。
車を撤去したり,未払賃料を払ってもらうためには,どのようにしたらいいのでしょうか。
1 結論
その1 Yに対して訴訟を提起することができます。弁護士を通じて交渉することもできます。
その2 車が所有権留保されているならば,所有者名義人に対して,車両の撤去及び未払賃料の支払いを請求するべく,訴訟提起する余地があります。
2 理由
その1は,張本人であるYに対する請求です。
問題は,Yをどのように見つけ出すかですが,Yの住民票が移っている場合には,弁護士ならば,移転先の住民票を取り寄せることができます。住民票によって,移転先のYの所在を確認し,Yと交渉したり,訴訟提起することが可能となります。
住民票によってもYの移転先が不明な場合は,公示送達等の手段で訴訟を提起することが可能です。もっとも,この場合,Yの資力はあてにできませんので,撤去費用や未払賃料の回収は事実上不可能になります。
その2は,車検証上,オートローン会社が所有権者として名を連ねているような場合です。
張本人のYが相手ではないので,一定の条件を満たす必要があります。
大まかに言うと,オートローンの残債務全額の弁済期が到来している場合は,撤去義務等をオートローン会社が負担します。
3 判例
最高裁平成21年03月10日判決は,「動産の購入代金を立替払した者が,立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において,買主との契約上,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有,使用する権原を有せず,その経過後は買主から当該動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは,所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,上記弁済期が到来するまでは,特段の事情がない限り,撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,上記弁済期が経過した後は,留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない。」と判示しています。
最高裁判例へリンク
つまり,オートローン会社も巻き込むことができる,という判例です。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。