お金を貸すときに気をつけた方がいいことを教えてください。
その会社は、私の2000万円で不動産を買い、これを高く転売して、私に2000万円を返済し、更にもうけの一部を分配してくれる、とのことでした。
しかし、不動産の売買はうまくいかず、資金を返してもらえませんでした。
会社代表者は、分割して返済する、と約束したので、1か月50万円の分割払いの合意書を作りました。
しかし、2回ほど返済した後は、パッタリと返済してもらえなくなりました。
内容証明で請求しましたが、相手方は、弁護士をつけて「投資資金なので失敗したら返済する必要が無い。」とか「分割払いだから、全額の返済期限は来ておらず、一部の返済で良い。」、など理解できない主張をしています。私は、お金を貸すときにどうしたら良かったのでしょうか。
ご回答
1 投資の主張
もうけ話でお金を渡している場合、借主から、借りたお金は投資用資金であって、投資に失敗したら返さなくても良いものであった、と主張されることがあります。
よって、投資が失敗しても、元金は確実に返済してもらえるよう、借主の投資の成果の内容に関係なく、元金全額を返済する必要があることを金銭消費貸借契約書で明確に記載しておくべきです。
2 代表者個人の連帯保証
本件では、相談者は会社に資金を貸し付けていますが、会社と個人とは別人格ですから、会社の借入金を代表者個人が返済する義務がありません。
したがって、会社の代表者には、連帯保証人となってもらう必要があります。
代表者に連帯保証人になってもらえば、会社と個人両方の財産から債権回収できるので、大変有効です。
可能なら、代表者以外にも親族等に連帯保証人となってもらえば、さらに債権回収は確実となります。
3 分割払と期限の利益喪失条項
本件では、分割払いの合意をしています。
ここで重要なのは、期限の利益喪失条項を入れておくことです。
よく分割払いの合意では、「毎月末日までに金50万円ずつ支払うものとする。」という条項を入れますが、これに期限の利益喪失条項を入れるべきです(条項例:「但し、借主が一度でも分割金の支払いを期限内に支払わなかった場合には、ただちに期限の利益を失い、債務の残額を一括して支払う。」)。
この条項が入っていないと、支払いを怠っても、毎月50万円ずつしか支払いを請求できず、一括請求ができないのです。
本件では、喪失条項が定められていないので50万円ずつしか回収できないことになります。裁判を起こしても、20か月経過するまで、全額を返してもらえないのです。
4 抵当権など担保をとること
多額のお金を貸すときは、相手方の不動産に抵当権を設定しておくのが最も安全です。
他に債権者がいるときでも、抵当権さえ設定していれば、優先して債権回収することもできるからです。
仮に借主が破産しても、確実に回収できるという数少ない選択肢です。
5 結論
お金を貸すときに上記に気をつけると回収可能性が高まりますので、どうか意識していただきたいです。
月刊東海財界2024年12月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。