特例有限会社とは何ですか?
私は現在、医療機器の販売を目的とする有限会社の取締役をしています。
私が実際の経営をしていますが、出資割合は20%で、80%は創業者の父が持っていました。父が最近亡くなり、相続人は母と弟です。有限会社はなくなり、特例有限会社となったと聞いていますが、どのように変わったのですか。
また、私はこの事業とは別に、個人として防犯関係のグッズの販売をしており、業績は順調なので法人化したいと思っていますが、どのような会社形態にすれば良いですか。
ご回答
平成18年5月、会社法が施行され、会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類とされ、有限会社がなくなり、合同会社が新設されました。
有限会社は、会社法施行後は、当然に株式会社となって、社員総会は株主総会、社員は株主、持分は株式、出資1口は1株とみなされています。しかし、役員任期に関する制限はなく、決算の公告義務もないなど、有限会社法で認められたメリットがそのまま残っています。
特例有限会社は、定款変更をして、通常の株式会社となることも可能ですが、役員の任期について法定の制限が及び、決算の公告義務も生じます。
特例有限会社は、会社の発行する株式は譲渡制限株式であり、公開会社になることはできません。株主の譲渡承認は株主総会が行うことになりますが、株主間の株式の譲渡は自由です。
取締役会・監査役会・会計監査人等は認められておらず、法定機関としては株主総会と取締役以外には監査役(会計監査)しか設置できません。
従って、特例有限会社の支配権については、株式会社と同じように考えておけばいいでしょう。
次に、会社形態の選択についてですが、さきに説明した通り、会社形態は4種類あります。登記件数から見ると、平成28年時点で、株式会社77.10%、特例有限会社18.1%、合同会社4.8%となっています。合名会社、合資会社はとても少ないです。ところで、令和2年の新設会社のうち、合同会社は30424社で、他の3種類の会社形態と比べると、増加率がきわだっています。
合同会社は、社員がすべて有限責任社員で、出資の範囲内に責任が限定されていること、株主総会が必要なく、定款自治が可能で、経営の自由度の高さが大きな魅力です。
合名会社と合資会社は、全社員若しくは一部社員が、無限責任社員となり、会社の債務について個人責任を負うことから、ほとんど選択されません。
実は、私も合同会社は、株式会社と比較して対外的な信頼が低いので、あまり選択されないだろうと予想していました。しかし、合同会社は、広範な定款自治や、簡略な統治構造などに注目が集まり、間接有限責任であることも手伝って、予想以上に普及しました。さらに、設立費用も少ないことが魅力です。
合同会社は、不動産業、経営コンサルタント業、専門・技術サービス業、情報サービス関連、飲食業でよく利用されています。
月刊東海財界2021年3月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。