横領など社内不正にどう対応するか?
現在のところ、本人を問い詰めていないですが、どう進めていけば良いでしょうか。
また、今後、同様の問題が生じないように対応方法を教えて下さい。
ご回答
1 色々な不正がある
今まで、私は、色々な不正事例の相談を受けてきました。
①病院の窓口従業員が、窓口で受け取った入院費用を横領していた。
②高齢者福祉施設の従業員が、自分のために購入した物品の代金を、高齢者のためのものと仮装し、高齢者に負担させていた。
③従業員が、法人の預金通帳から多額の現金を出金し横領していたが、バレないように通帳の写しをパソコンで偽造、通帳残高を偽っていた。
④不動産会社の従業員が、顧客から不動産売買の手付金を預かったが、会社に報告せず、そのまま横領していた。
このように、不正と一口にいっても色々な種類があります。
なお、まだ本人を追及していない場合、追及したら否認をした場合など様々なパターンがあります。
2 追及前に証拠を固めるのが重要
もし、不正をした本人を追及する前であったならば、必ず、確実な証拠を追及前に押さえましょう。関係者を聴取したり、本人を泳がせて再度不正した場面を撮影するなど、証拠を固めるのです。
というのも、証拠を固めておかないと、万が一本人が不正を否認したときに、必要の措置(従業員の解雇等の懲戒処分、損害賠償請求)ができなくなってしまう可能性があるからです。
また、本人が不正を認めたら、直ちに不正を認めた旨の録音や念書を用意し、証拠化しておくべきです。
証拠を確保しないまま、処分をしてしまった結果、後で返り討ちに遭うケースも少なくありませんので、弁護士等の専門家に早期の段階で対応方法を相談して頂くことをお勧めします。
3 不正を予防する仕組みを
お金を扱う部門では、どうしても不正が発生しやすいです。
不正が発生しないように予防する体制・仕組みを作る必要があります。
まずは、①現金や預金が入ったり出たりする手続の各段階、現預金の保管方法を確認して下さい。
次に、②それぞれの段階で、どのような不正が発生しうるか、列挙してみて下さい。
最後に、③それらの不正を防止する方法を検討して下さい。
③についていえば、(1)絶対に誤魔化せない資料との照合、(2)複数人でのチェック、等の工夫をして頂くと良いと考えます(例:通帳原本を1か月に1回、複数人で確認する。)。
あと、④ルールが現実に運用されているか確認することも大事です。
転ばぬ先の杖、是非、1度、社内の手続を見直して頂ければ、と思います。
月刊東海財界2024年4月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。