美容エステを経営していますが、架空予約されて困っています
私は、美容エステを経営しています。テレビで取り上げられたため、1日のお客様も約100名こられます。ネットでの予約システムを採用し、朝9時から夜8時の間で、1時間刻みで同時刻に10名ずつ予約申し込みを受付しています。
ところが、約5ヶ月前、予約したのに来店しないことが1週間に10件あり、架空の名前、電話番号でした。
その後、約2ヶ月前から連日のように、合計150件の架空予約がありました。
別々の人がやったと思いますが、5ヶ月前にはお客さんのAと料金で激しい口論となったことがあり、2ヶ月前には従業員Bを解雇したので、AとBが5ヶ月前と2ヶ月前のそれぞれの架空予約の犯人だと思っています。今後の対策を教えて下さい。
ご回答
このような架空予約をされると、その分、他のお客様の予約が入れられないので、経済的損失が発生しますし、経営者の方も、他の従業員も不安になります。
この場合、まず予約システムを契約した会社に相談して、予約者のIPアドレス(ルーターやパソコンに設定されている、インターネット上の住所のようなもの)を突き止めることが出発点になります。
IPアドレスは、接続業者にログが残っていると、使用者が特定できますが、契約者情報(名前、住所等)はプロバイダが持っている個人情報なので、簡単には開示しません。ただ、本件は犯罪になり得るので、開示請求に応じる可能性があります。この段階で警察に相談された方がいいでしょう。
警察が迅速に対応しない可能性があるので、「とても困っているし、被害も大きい」と、訴えてみて下さい。
ところで本件は、偽計業務妨害罪にあたる可能性があります。偽計業務妨害罪とは、「虚偽の風説を流したり偽計を用いたりして、人の業務を妨害する罪(刑法233条)」で、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
具体的に説明すると、①「虚偽の風説」(真実とは異なる情報)を、②「流布」することが必要です。「流布」とは、不特定多数の人に対し、情報を広めることです。③「偽計を用いる」の偽計とは、人を欺いたり、人の錯誤や不知に乗じることで、④「他人の」、⑤「業務を妨害」することが構成要件となります。
事業が倒産寸前だ、販売商品が有害物質を含んでいると、虚偽の書き込みをネットに流すことは該当するでしょう。本件のような前例は少ないと思いますが、構成要件を吟味すると、偽計業務妨害にあたるか微妙ですが、A、Bがいずれも犯人だとすると、B は、かなりの損害を与えているので該当しそうです。
しかしAは悪質性が低く、回数も少ないので悪戯でやっているように思います。実は軽犯罪法の中に、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」との規程があり、これに違反しそうです。刑罰も拘留又は科料とされています(科料は1000円以上1万円未満とされ、罰金より軽い刑です)。
本件ではAが軽犯罪法に違反、Bが偽計業務妨害罪にあたると思われます。
月刊東海財界2019年11月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。