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名古屋の弁護士Q&A

破産から保証金を守る

破産から保証金を守る

顧問会社で商社のX社の総務課課長さんが弁護士の下を訪れました。
我が社は,準ゼネコンのY社から,Y社所有のビルの3階を借りて,名古屋支店を置いています(賃料月30万円)。
この度,Y社が破産するという弁護士からの通知がありました。
たまたま,我が社は,通知があった半年後にこのビルを退去することになっていたのですが,保証金を300万円ほどいれています。
保証金は戻ってくるのでしょうか。
また,保証金が戻ってこないとすると,半年間の賃料を払うのもバカバカしいのですが,何とかならないのでしょうか。

3つのシナリオ
弁護士 今回の保証金の話ですが,場合を分けてご説明する必要があります。
①最悪のシナリオ~退去前にビルが売れず,かつ何らの法的な対処もしない場合です。
②最善のシナリオ~退去前にビルが売れた場合です。
③次善のシナリオ~退去前にビルが売れなくとも,法的な対処をすることで①を避ける場合です。

 

①最悪のシナリオ
弁護士 まず,何もせず,しかも,ビルが第三者に任意売却されることもなく,御社がビルを退去することになった場合,御社の保証金は殆ど戻ってこなくなります。

 

課長 破産の通知が来ても誠実に家賃を払っている我々にとっては,あまりにむごい仕打ちではありませんか?

 

弁護士 そうですよね。しかし,保証金返還請求権を特別扱いしたら,他の債権者からはどうして?と疑問が出るでしょうね。

 

課長 なるほど。他の債権者も低い配当となるのですからしょうがない,ということですか。

 

②最善のシナリオ~棚からボタ餅
弁護士 しかし,運良く御社が退去する前にビルが任意売却されると,保証金は全額戻ってくることになります。

 

課長 え!どういうことですか?

 

弁護士 実は,保証金返還請求権は,賃貸借契約にお供をする権利なのです。したがって,御社の退去前にビルが任意売却されると,買った第三者に御社との賃貸借契約が引き継がれますが,保証金返還請求権もこれにお供して引き継がれますから,その第三者が払う必要が出てきます。

 

弁護士 賃借人の立場で言ったら当然のことですよね。保証金が新しいオーナーに引き継がれないとしたら,賃借人の関係の無いところで,保証金を回収できなくなってしまいますから。他方,新オーナーは,買うときに,いくら保証金を返せばいいか,預かっている保証金額を旧オーナーに尋ねることができますから,不合理ではありません。

 

課長 なるほど。でも,我が社が退去した後に売れた場合には引き継がれない,というのも変な話ですね。

 

弁護士 あくまで賃貸借契約にお供する,ということからすると,賃貸借契約が終わってしまうと,お供しなくなるわけですね。

 

弁護士 いずれにせよ,第三者が御社の退去前にビルを買ってくれれば,御社の損失はゼロです。

 

課長 しかし,それでは運任せになりますよね。

 

弁護士 そこで,③の話をさせて頂きます。

 

③次善のシナリオ~寄託請求

 

 

弁護士 ①で述べましたように,御社が何も手を打たずに,放置しておくと,賃料は退去までしっかり払わされるわ,保証金は殆ど戻ってこないわ,ひどい結果となります。そこで,「寄託請求」をして頂くと良いです。

 

課長 一体何ですか?

 

弁護士 要するに,「これから納める賃料を預かっておいて下さいね。退去するときに,保証金額を上限として,納めた賃料分を返してもらいますよ。」という制度です。破産法70条に規定されています。

 

課長 我が社のケースでは,保証金全額は戻ってこないとしても,これから払う30万円の賃料の半年分を確実に返してもらえる,ということでしょうか。

 

弁護士 その通りです。寄託請求の理屈を簡単に説明しましょう。賃貸借契約が終わり,借りていたものを返す際,未払賃料があったら保証金に当然に充当されます。寄託請求をすると,寄託された賃料は毎月の賃料に充当されなかったことになります。寄託請求しておかないと,毎月払うお金は毎月の賃料に充てられたことになり,保証金から差し引くべき未払賃料が存在しないことになります。

 

課長 難しいですが,何となくは理解できました。いずれにしても,知らないと大損になるところでした。

 

弁護士 寄託請求をする賃借人は,ほぼ皆無に近いです。ご相談頂いて本当に良かったです。

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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