特別縁故者にあたる場合
甥は一生独身で,親兄弟も全員亡くなっていますが,私が甥の遺産を相続することはできますか。
ちなみに甥は癌になっていたのですが,私は毎日親代わりに看護していました。
1 結論
家裁の手続を経て,遺産の全部又は一部を取得できるかもしれません。
2 理由
相続人になりうるのは,民法上,配偶者,子(代襲,再代襲相続人を含む),親や祖父母などの直系尊属,兄弟姉妹(代襲相続人を含む)のみです。
したがって,死亡した本人から見て,叔父さんや従兄弟には相続権がありません。
但し,特別縁故者という制度があり,申し立てて要件が満たされれば特別な関係にある縁者に相続財産の一部又は全部が分与される場合があります。
したがって,叔父さんや従兄弟が特別縁故者にあたる場合には,相続財産が取得できることもあります。
特別縁故者に該当する場合ですが,具体的には,
①被相続人と生計を同じくしていた者
例えば,内縁の夫婦,事実上の養親子,子の妻
②被相続人の療養看護に努めた者
付添婦,看護婦など報酬をもらっていた人は除き,対価以上の看護をした者
③その他被相続人と特別な縁故があった者
生前,死後に縁故があった人です。
具体的には,被相続人が,遺言は作らなかったものの,死んだ後は●●に財産を渡す旨話をしていた,
生前の交流が多かった,
毎月1回会って金銭/衣類を仕送りした,
被相続人から援助を受けていた,
小遣いを渡していた,
近所迷惑があった際に代わりに謝罪しに行った,
葬儀を主催したり,墓を守ったり,遺産を管理したりした,
等々です。生前死後の関わりについて総合判断されて,決まります。
なお,密接度に応じて,与えられる財産額も増減します。
本件では,甥の療養看護をしていたようなので,特別縁故者に該当しそうです。ただ,療養看護の程度によっては,全額ではなく,一部の遺産を分与する形になると思われます。
申立人が多数に及ぶ場合は,自他共に認めるような縁故者がいないことの証左となり,否定される場合がありますので,注意が必要です。
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。