自治会所有のゴミ捨て場につき、自治会費を払わない人を利用禁止にできますか?
このマンションには、自治会が所有するごみ捨て場があり、自治会の総会で、ごみ捨て場利用に関して、掃除当番を負担する住民の年会費は3600円、掃除当番を負担しない住民は年会費1万円、会費を払わない非自治会員は利用禁止としました。Aさんは、ごみ捨て場を使用できないでしょうか。
ご回答
この神戸市の事例は、最近話題になった事案で、自治会への非加入を理由に、地域のごみ捨て場の利用を禁じられたのは違法だ、として自治会に対して、慰謝料と、ごみ捨て場を利用する権利の確認を求める訴訟を起こしました。
そもそも自治会とは、会員相互の親ぼくを図ること、快適な居住環境の維持管理、その他共同の利害に対処することなどを目的とする、権利能力のない社団とされています。従って、強制加入団体でもなく、その規約において、会員の退会を制限しておらず、最高裁も、いつでも自治会を退会することができる、と判断しています。
ところで、自治会によるごみ捨て場使用禁止は、行き過ぎた規制なのか、費用負担や掃除当番の負担を免れることを防ぐ正当な判断なのか、迷うところです。
過去には、滋賀県にある自治会が、「自治会の脱退者や、会費未納者には、ごみステーションを使わせない」という決議をして、事実上自治会から脱退できないようにした事例で、訴訟が起こされ、大阪高裁の判決は、「ごみ集積所やごみステーションを利用することはできないという対応をすることを決定すると、会員の脱退の自由は事実上制限されているものといわざるを得ない。その強制は社会的に許容される限度を超える」と判断しました。その上告審でも、最高裁が平成20年に上告を棄却し、自治会側の違法行為が確定しました。
今回のケースでは、Aさんは、ごみ収集車が到着したタイミングで、直接作業員に手渡すことにより捨てることは可能ですが、タイミング良く捨てることは困難でした。
Aさんは、令和2年、自治会の対応は「所有権の乱用」だとして、損害賠償と、ごみ捨て場を利用する権利の確認を求める訴訟を神戸地裁に起こしたところ、裁判所は、ごみ捨て場を利用する権利があることを認めて、20万円の損害賠償を命じました。「ごみ捨て場の管理は、行政サービスの一環といえる。一部の住民を排除するのは相当ではない」との理由でした。
その後控訴がされましたが、大阪高裁も令和4年10月、「たとえ自治会に入っていなくても、維持管理費などの負担を求めればよく、非自治会員の利用を一切認めないのは正当化できない、と判断しました。そのような金銭負担の提案をすることなく、いきなりごみ捨て場使用を禁止したのは、自治会への入会強制に等しい」として30万円の支払いを命じました。
この判決は上告されて最高裁で継続中です。
月刊東海財界2023年3月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。