社長を退任したのに、会社の借り入れの連帯保証人のままでした
しかし退任後も、会社が銀行から借りていた融資について、私個人が連帯保証人になってしまっていました。
最近になって会社の業績が悪化し、民事再生手続を行うことになりました。銀行からは、連帯保証人である私に対し、債務を支払うよう請求が来ています。
社長を辞めているのに、なお支払義務を負うのでしょうか。
ご回答
今回のようなケースは決して少なくはありません。
ご相談のケースでは、退任後であっても、原則として銀行に対する連帯保証債務を免れることはできません。
1 連帯保証とは
連帯保証は、主債務者と連帯して債務を負担し、主債務者と同等の責任を負う強力な保証形態です。債権者(銀行)は主債務者に請求せず、直ちに連帯保証人に債務の全額を請求できます。
2 社長退任と保証責任
保証契約は、役職や地位に連動するものではなく、あくまで個人と銀行との間の契約です。そのため、会社の代表取締役を退任しても、過去に締結した保証契約は有効に存続します。
したがって、「退任したから責任はない」という主張は通用しません。
3 保証を外すための方法
そこで、退任後に保証責任を免れるには、銀行との合意によって保証契約を解除する必要があります。ただし、銀行側からすると保証人が減ると回収リスクが高まるため、容易に応じないこともあります。
通常、新たな経営者(新社長や後継者)が代わりに保証人となることや、不動産担保を差し入れることなどを条件として保証人変更が認められることが多いです。
特に「根保証契約」(将来発生する不特定の債務も保証する契約)を結んでいる場合、退任後の借入債務についても責任を負うため、保証解除が重要です。
4 経営者保証ガイドライン
近時、全国銀行協会(全銀協)や弁護士、公認会計士、中小企業庁、金融庁などが策定した「経営者保証ガイドライン」では、経営者交代時に新経営者の連帯保証をとる場合には前経営者の連帯保証を解除すべきという記載もあります。
これは強制力のある法律ではなく、あくまでガイドラインではありますが、銀行側もガイドラインを全く無視することはできませんので、ガイドラインをもとに銀行と交渉し、保証解除を確実に進めて行きましょう。
5 まとめ
以上、社長を退任したからといって自動的に保証債務から解放されることはなく、銀行からの債務返還請求には応じる必要があるのが原則です。
保証から外れるためには、退任時に銀行との間で「保証契約解除」の手続きをとることが不可欠です。経営者保証ガイドラインを活用し、銀行と交渉することで、確実に保証解除を目指しましょう。
月刊東海財界2025年10月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。




