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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士Q&A

私が所有する土地に電力会社送電線を設けるのを拒否できますか?

私は農地を所有しています。ある電力会社が、送電線を設ける(地上約30メートルの高さ)ために、私の農地の上を通るとのことですが、それを拒否したり、使用料を請求することはできますか。
ご回答

土地所有権はどこまで及ぶか、という問題になります。
そもそも、所有権とは何か、ですが、民法第206条で「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」と書かれています。
土地の所有権とは、土地の上に家を建てたり(使用)、第三者に貸したり(収益)、土地を売却して利益を得る(処分)権利を包括した権利を指します。

土地所有権の範囲としては、地下鉄工事の影響で地盤沈下して、土地の一部が陥没したり、建物が傾いたという相談事例があります。
民法では、第207条で「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定されているだけです。
その所有権が及ぶ土地上の空間の範囲は、常識的に、その土地を所有する者の『利益の存する限度』とされていますが、具体的ではありません。
法令の制限というと、土地所有権の上空について直接規定した法令は、ないと思われます。
土地所有権の地下については,大深度地下法で、地表から40mの深さ(一定の耐力を持つ地盤であるが前提)とされており、1つの目安と考えられます。従って地表から40mより深いエリアは『所有者の利用に制限がある』といえそうです。

ところで、空中に関しては、土地所有権がどのくらいの高さまで及ぶかは、その土地がどのような地域にあるか、都市計画上の用途制限がどうなっているかなどが、関係してくると思います。
所有権の上空が問題になる例としては、本件のように、上空に高圧線・送電線を設置するような事例が挙げられます。
土地は、建築できる建物に関して、建ぺい率、容積率が決められており、その他にも景観法による制限で、高層の建物が建てられないことがあります。土地ごとに、空中の使用権が及ぶ高さには差があります。

以下私見になりますが、本件対象地が農地ということで、この土地に高層ビルを建てられないでしょうから、送電線が設置されても、土地の使用には支障もなさそうです。他方、電力会社は電力供給という公共的な役割も担っており、送電のための鉄塔や、送電線を設置する必要性・公共性があります。
電力会社も、土地所有者に説明せず、いきなり設置することはないでしょう。おそらくは、区分地上権の設定か、地役権の設定などを申し入れ、その対価を支払う、という交渉が行われると思います。
ただ対価はそれほど多額にならないと思います。

多額の請求をして、話がこじれた場合、電力会社が送電線の設置を強行することも考えられますが、送電線設置を差し止める訴訟を提起しても、裁判所が認める可能性は低いと考えられます。損害賠償請求については認められるかもしれませんが、損害の立証が難しいでしょう。

月刊東海財界2022年5月号掲載

※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。

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