私は一軒家を賃貸していますが、最近家賃の支払いが滞っています
私は一軒家を、62歳と56歳の夫婦に賃貸しています。
夫の方は建築関係の仕事をしていましたが、月5万円の家賃が滞りだして、1年分を滞納しています。
催促をしても、最初は申し訳ありません、と言っていましたが最近は開き直っています、裁判をするつもりですが、強制執行がかなり難しいと聞いていますが、その内容を教えて下さい。
ご回答
最近、建物明渡の強制執行を、三年続けてしましたが、強制執行期日に現地を訪れる時は、いつも緊張します。相手方が抵抗して暴れることもないとはいえません。
ところで、強制執行をするためには、その前提として債務名義(確定判決、和解調書、執行認諾文言付き公正証書等)が必要です。さらに、その判決等が相手方に送達されたことの証明(送達証明書)をとった上、これに執行文を付与してもらわなければなりません。
その上で、裁判所の民事執行の受付に申立書を提出します。
申立にあたり、添付書類として執行文付きの債務名義等を付け、執行官に支払われる費用等に充てるための予納金(約10万円)を裁判所に納めます。
予納金を納めると、すぐに担当執行官から連絡が来て、第1回目の明渡しの催告の日と、第2回目の引渡し期限を決めます。最近、強制執行件数が減少し、執行官の人数も減少し、地方の裁判所だと、執行官が常駐しておらず、複数の裁判所の支部を掛け持ちしていますが、かなりスピーディーに進めてくれます。
明渡しの催告の日には、執行官と、弁護士、申立人本人(貸主)が対象建物へ行きますが、相手方が不在の場合があります。この場合、申立人が入口の合い鍵を持っていない場合は、鍵屋さん(鍵を開ける業者)を手配しなければなりません。通常、執行官が手配してくれます。但し、その費用は負担しなければなりません。
当日は、建物内に入り、執行官が、現況確認し、相手方に、引渡期限等を定めた催告書を渡して、1ヶ月以内の強制執行実施予定日を伝えます。引渡期限までに出て行かないと、明渡を実行し、室内の動産類は、1ヶ月以内に指定された期日までに、引き取らなければ競売手続きによる売却処分する旨伝えます。しかし、私が立ち会った事例では、すべて相手方から、残置した動産の所有権を放棄する旨の同意書に、署名捺印してもらっています。
引渡期限の日にも、執行官と弁護士、申立人本人、鍵屋さんとで、対象建物に行きます。その日には相手方はその建物から出なければならず、執行官が相手方に建物外に出るよう伝えます。今までの例では、相手方はこれに応じて退去しています。
退去させた後、相手方が再び入り込まないようにするため、ぜひ鍵屋さんに依頼して、入口の鍵は交換してもらって下さい。なお、心配がある時は、入口に板などを十字に打ち付けることもあります。
勿論、相手方が無断で入り込むと、住居侵入の犯罪が成立します。
月刊東海財界2020年2月号掲載
※記事が書かれた時点の法令や判例を前提としています。法令の改廃や判例の変更等により結論が変わる可能性がありますので、実際の事件においては、その都度弁護士にご相談を下さい。