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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

債権法改正をサクッと理解しましょう

債権法改正がされたことは新聞報道でご存じだと思います。

では、実施の時期は?と訊かれると、?という方が多いと思います。

2020年の4月1からです。
100年ぶりの大改正ということで、非常に重要な改正がありますが、サクッと大事なところをお伝えしたいと思います。

ちなみに、法務省が債権法改正の楽しい漫画を出しているので、是非参照してみて下さい。一般の方はこれで十分です。

http://www.moj.go.jp/content/001311772.pdf

漫画を読むのも面倒、字も多い!という方のために、以下では一言で何が変わったか、私たちはどう対応すべきか、をまとめます。

時効

(どうなったのですか?)
債権の消滅時効の期間が5年に統一されました。今までは、1年から10年まで債権の内容によって違いましたが(弁護士も混乱するくらい色々ありました。)、これからは全て5年と理解しておけばOKです。

※ただし権利行使できることを知らなかったときは10年となっています。また、不法行為といって交通事故で怪我をさせたような場合は3年の時効となっていますので、長らく権利行使していない、されていないという場合には何年で時効になるか、専門家にご相談下さい。

(具体例)
私は、友達にお金を貸して放置していたら返済期限から6年が経ってしまいました。
もう返してもらえないのでしょうか?

→令和2年4月1日に貸したものなら、5年経過しているため、時効で返してもらえないこともあります。それ以前に貸していたなら10年の時効なので大丈夫なことが多いです。

(どう対応すればいいですか?)
権利行使を放置していると権利は消えてしまうことがあるので、改めて理解していただきたいです。
5年という期間はあっという間に過ぎますから、権利行使のタイミングをカレンダーに書き込むなど絶対に忘れないようにして下さい。

保証

(どうなったのですか?)
賃貸の保証人のように根保証(契約の時点で保証対象が確定していない)と呼ばれる保証では、書面で限度額が合意されていなければ無効になります(令和2年4月1日以降の契約です)。

(具体例)
私は自分のアパートを貸すときに賃借人に連帯保証人を用意してもらいました。
しかし、その時の契約書は、令和2年4月1日より以前に作られたものでした。
賃借人が賃料を支払わないときに連帯保証人に賃料を払ってもらえますか?

→限度額を定めた契約をしておかないと無効になり、払ってもらえなくなる可能性が高いです。

(どう対応すればいいですか?)
賃貸をされている方などは、直ちに契約書を見直し、極度額欄を設ける必要があります。
あるいは、保証人を会社にするなど、限度額を定めなくても保証契約が有効になる者を保証人とする工夫が必要です。

瑕疵担保責任の見直し

(どうなったのですか?)
買ったものが壊れていた場合やサービスに欠陥があった場合などに、契約不適合があった場合に、履行の追完、損害賠償、解除、代金減額が請求できることが規定されました。

今までは「瑕疵」という言葉が使われてきましたが、今後は、「契約不適合」という言葉になり、責任追及できる範囲が変わるかもしれません。
被害回復のためのバラエティが増えました。

契約不適合という名前が独り歩きして大きな変更があるというように世間では思われていますが、あまり変わりはありません。

その他

いろいろな改正がありましたが、当事務所では債権法改正の勉強会を10回以上行い、習熟に努めました。
紛争が発生した時は是非ご相談頂くとともに、契約書の改定など、ご相談頂ければと考えております。

投稿日:2020年11月07日 13:43|カテゴリー:最近の法律問題

知らない間に債権譲渡されてた!?建築会社の債権の回収事例

取引先がお金を払ってくれないとき、皆様はどういう対応をされていますか?

借金のかたに●●をとる、ということはよくあります。
たとえば、工場にある機械とかオフィスにある什器備品とか色々です。

取引先が第三者に対して債権を持っている場合には、「債権を担保にしたい。」というニーズがあるのではないでしょうか?

私が関与した事案で、ある会社から債権の譲渡を受け、全額債権を回収できた事案があったので、ご報告します。

(事例)建築会社の債権回収

 
X社は、建築系の請負工事を業務とする会社です。

Y社は、X社に元請からの工事を丸投げしていました。
X社はY社に毎月、工事代金を請求していました。

Y社は徐々に支払が遅れていき、3か月待って欲しいと言って月々の支払を完全にストップしてしまいました。
合計1500万円の未払となってしまいました。

X社としては、Y社が半年後に数千万円入ってくる債権があるため、これで回収しようと思っていました。
X社としては、半年も先の債権であるため、念のため当事務所に相談に訪れました。

(対応)債権譲渡登記事項概要ファイルを確認

念のため、当事務所のパソコンでY社の「債権譲渡登記事項概要ファイル」を閲覧してみました。
(だれでもお金を払えばホームページから見られます https://www1.touki.or.jp/operate/03-12.html

そうしたところ、なんと!回収を予定していた債権が既に別の債権者(金融会社)に譲渡されていることが登記の表示から判明しました。
驚いたY社からX社に「これどういうことなの?」と追及してもらい、債権を戻させました。

その上で、Y社からX社に債権譲渡登記によって債権譲渡をしてもらうことになりました。
無事その債権で取立てができ、全額回収できました。

債権譲渡登記とは?

さて、「債権譲渡登記」とは何でしょうか?
債権は、借金のカタにとるものとしては都合のいいものですが、難点があります。

それは、その債権の債務者に自分の信用不安を悟られてしまうということです。

本件でいうと、Y社は、債権譲渡を行う際、通常は、その債権の債務者に「譲渡通知」をしなければならないのです(民法467条1項)。

このような通知をしては、債務者から「Y社はやばい」と思われてしまい、その債務者は今後Y社との取引をやめてしまうかもしれません。
噂がよそにも広がって取引が失われかねません。

このような債権譲渡の難点を払拭するべく、譲渡通知をせずに債権譲渡をする仕組みが平成10年からできています。
それは、法務局で債権譲渡登記をすることによって、こっそり債権譲渡をしてしまうという仕組みです。

Y社がいよいよ支払を遅滞させるようになったら、債務者に対してX社から譲渡登記がされていることを証拠と共に通知して、債権回収を行います。
このような債権譲渡登記制度はあまり知られていませんが、債権回収の手段として、とても使えます。

まとめ

債権譲渡登記は、認知度の低い制度ですが、知っている人は知っています。
今回のように、債権譲渡登記を調べれば、債権譲渡の有無を確かめることができます。

調べてみて債権譲渡がなされていない債権については、債権譲渡登記をすることで、他の債権者に先んじて債権回収を行うことができます。

みなさんも債権回収のために債権譲渡登記の活用を考えてみたらいかがでしょうか
(但し、相手方の協力が必要なので注意して下さい。)。

投稿日:2020年10月13日 10:13|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

店舗やオフィスを借りるときには期間と中途解約に着目しよう

建物や土地を借りる場合,一般的には,借主側が保護されていて有利だと考えられています。
ところが,借主側にとって,とても不利な内容の契約が取り交わされることがあり,これによって借主が予想外のダメージを受けるケースがありますので,その事例と対策について解説します。

(事例)店舗の借主からの途中解約は可能?

X社は衣服販売を行う小売業の会社です。
業績は順調で,地域の有名スーパー店の隣にある建物を借りて3店舗目を出すことになりました。

X社は,Yさん(地域では有名な地主)から,当該建物を5年間という期間で借りました。
ところが,X社が店舗を借りて3年後,有名スーパーその場所から撤退することになりました。
その後のテナントは未定です。

X社は,スーパーのような集客力のある店舗が隣にあったからこそこの建物を借りていたのですから,スーパー撤退に伴い,速やかに撤退したいと考えています。

しかし,Yさんは,契約書では5年間の賃貸期間となっているため,期間の最後までの賃料を支払ってくれない限り,中途解約には応じられない,と主張しています。
契約書では,特に中途解約の条項が見当たらないため,5年間ずっと借り続けないといけないのか,X社の社長さんはとても悩んでしまいました。

(対策)

こういった相談は頻繁ではないのですが,今まで3,4件はありました。
 
借地借家法では,基本的に借主が保護されています。
たとえば,建物の借主は正当な理由がない限り,建物を追い出されない,というように大変手厚い保護を受けています(定期借家契約を除きます。)。

ところが,建物から出たい,という場合,借主に保護は与えられていません。

もし,賃貸借契約書に「中途解約は許されない。それでも中途解約する場合は,5年分の賃料を一括して支払わなければならない。」という条項があったとしたら,X社も契約時に慎重に吟味していたと思います。

しかし,単純に,
①賃貸期間は5年,
②中途解約条項が定められない,
としか規定がない場合に,X社が中途解約できないというのは酷すぎないか,とも思われます。

一般的な解釈としては,賃貸借契約書において,契約期間をわざわざ定めている趣旨からしますと,当該期間は契約が継続し,中途解約はできないのが原則であると考えられています。
中途解約が規定されていない場合は尚更です。

なので,残念ですが,本件のような事案ではYさんの主張が通ってしまうことが多いです。

ただし,特別な事情があれば中途解約が可能なことも一応ありますし,交渉によって違約金を安くすることができるかもしれませんから,弁護士にご相談頂いた方がよろしいかと存じます。

賃貸借契約は長期間にわたるものですが,ひな形が使われるケースが多いため,特に問題はないだろう,とあまりきちんと目を通さない会社の方は多いです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年10月05日 08:55|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

求人広告トラブル:求人難につけこんだビジネスに気をつけて!!

厚労省のデータによると,平成30年の有効求人倍率は1.61倍であり,前年よりも0.11ポイント上回ったとのことです。
このような大変な求人難の時代において,中小企業の窮状につけこんだビジネスが最近横行していますので,その事例と対策について解説します。

事例

ある日,ハローワークに求人申込みをしたX社のもとに,東京のY社から営業の電話がかかってきました。
キャンペーンでインターネットの求人広告が4週間無料で出せる,と勧誘するものでした。

X社の担当者は「4週間無料」という言葉に飛びつき,Y社から案内のFAXを送ってもらい,Y社の営業担当に言われるがまま,申込書に署名・押印をしてFAX返信しました。

その後,Y社の担当者からは,何の音沙汰もありませんでした。

X社の担当者もY社のことをすっかり忘れてしまったまま,4週間経過後,突然Y社から50万円の支払を求める請求書が送られてきました。

X社の担当者は慌ててY社に連絡を入れましたが,Y社からは,FAX文書中に「規約」があり,4週間が経過すると有料に切り替わる旨,有料に切り替わる4日前までに書面で解約を申し入れる必要がある旨の規定があり,それに同意して申し込みをしたから,広告掲載料を払うのは当然,と言われてしまいました。
たしかにFAX文書には,その旨の記載がありました。

ちなみにY社のホームページは,とても雑で素人が作ったようなデザインで,広告効果は期待できないものでした。

対策

こういった相談は最近大変多くなっています。
規約の内容や手口がほぼ同じであるため,何らかの組織的背景があるのではないか,とすら感じております。

さて,皆さんは「事例」を読んで,解約忘れを利用したあこぎなビジネスであり,こんな会社にお金を支払う義務は無いだろう,と思われたかもしれません。

ところが,本件のような事業者間の取引では,契約書の記載が特に重要視されますし,消費者を保護する法律も原則として適用が無いため,「規約」に記載されたとおりの法律関係が生じてしまう可能性が高いです。
つまり,掲載料を負担せざるを得なくなるかもしれないわけです。

もっとも,本件の場合,有料期間への切換えが全く説明されなかったり,ホームページに広告効果が全く無い等,高度の悪質性を主張し,支払を免れることができるかもしれません。
安易に業者に支払いをせず,速やかに弁護士に相談して頂きたいものです。

そもそもですが,このような被害は,日頃から契約時に書面を隅々まで読んでいれば避けられたことです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。

投稿日:2020年9月04日 10:16|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

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