知らない間に債権譲渡されてた!?建築会社の債権の回収事例
取引先がお金を払ってくれないとき、皆様はどういう対応をされていますか?
借金のかたに●●をとる、ということはよくあります。
たとえば、工場にある機械とかオフィスにある什器備品とか色々です。
取引先が第三者に対して債権を持っている場合には、「債権を担保にしたい。」というニーズがあるのではないでしょうか?
私が関与した事案で、ある会社から債権の譲渡を受け、全額債権を回収できた事案があったので、ご報告します。
(事例)建築会社の債権回収
X社は、建築系の請負工事を業務とする会社です。
Y社は、X社に元請からの工事を丸投げしていました。
X社はY社に毎月、工事代金を請求していました。
Y社は徐々に支払が遅れていき、3か月待って欲しいと言って月々の支払を完全にストップしてしまいました。
合計1500万円の未払となってしまいました。
X社としては、Y社が半年後に数千万円入ってくる債権があるため、これで回収しようと思っていました。
X社としては、半年も先の債権であるため、念のため当事務所に相談に訪れました。
(対応)債権譲渡登記事項概要ファイルを確認
念のため、当事務所のパソコンでY社の「債権譲渡登記事項概要ファイル」を閲覧してみました。
(だれでもお金を払えばホームページから見られます https://www1.touki.or.jp/operate/03-12.html)
そうしたところ、なんと!回収を予定していた債権が既に別の債権者(金融会社)に譲渡されていることが登記の表示から判明しました。
驚いたY社からX社に「これどういうことなの?」と追及してもらい、債権を戻させました。
その上で、Y社からX社に債権譲渡登記によって債権譲渡をしてもらうことになりました。
無事その債権で取立てができ、全額回収できました。
債権譲渡登記とは?
さて、「債権譲渡登記」とは何でしょうか?
債権は、借金のカタにとるものとしては都合のいいものですが、難点があります。
それは、その債権の債務者に自分の信用不安を悟られてしまうということです。
本件でいうと、Y社は、債権譲渡を行う際、通常は、その債権の債務者に「譲渡通知」をしなければならないのです(民法467条1項)。
このような通知をしては、債務者から「Y社はやばい」と思われてしまい、その債務者は今後Y社との取引をやめてしまうかもしれません。
噂がよそにも広がって取引が失われかねません。
このような債権譲渡の難点を払拭するべく、譲渡通知をせずに債権譲渡をする仕組みが平成10年からできています。
それは、法務局で債権譲渡登記をすることによって、こっそり債権譲渡をしてしまうという仕組みです。
Y社がいよいよ支払を遅滞させるようになったら、債務者に対してX社から譲渡登記がされていることを証拠と共に通知して、債権回収を行います。
このような債権譲渡登記制度はあまり知られていませんが、債権回収の手段として、とても使えます。
まとめ
債権譲渡登記は、認知度の低い制度ですが、知っている人は知っています。
今回のように、債権譲渡登記を調べれば、債権譲渡の有無を確かめることができます。
調べてみて債権譲渡がなされていない債権については、債権譲渡登記をすることで、他の債権者に先んじて債権回収を行うことができます。
みなさんも債権回収のために債権譲渡登記の活用を考えてみたらいかがでしょうか
(但し、相手方の協力が必要なので注意して下さい。)。
投稿日:2020年10月13日 10:13|カテゴリー:弁護士の役立つ情報