求人広告トラブル:求人難につけこんだビジネスに気をつけて!!
厚労省のデータによると,平成30年の有効求人倍率は1.61倍であり,前年よりも0.11ポイント上回ったとのことです。
このような大変な求人難の時代において,中小企業の窮状につけこんだビジネスが最近横行していますので,その事例と対策について解説します。
事例
ある日,ハローワークに求人申込みをしたX社のもとに,東京のY社から営業の電話がかかってきました。
キャンペーンでインターネットの求人広告が4週間無料で出せる,と勧誘するものでした。
X社の担当者は「4週間無料」という言葉に飛びつき,Y社から案内のFAXを送ってもらい,Y社の営業担当に言われるがまま,申込書に署名・押印をしてFAX返信しました。
その後,Y社の担当者からは,何の音沙汰もありませんでした。
X社の担当者もY社のことをすっかり忘れてしまったまま,4週間経過後,突然Y社から50万円の支払を求める請求書が送られてきました。
X社の担当者は慌ててY社に連絡を入れましたが,Y社からは,FAX文書中に「規約」があり,4週間が経過すると有料に切り替わる旨,有料に切り替わる4日前までに書面で解約を申し入れる必要がある旨の規定があり,それに同意して申し込みをしたから,広告掲載料を払うのは当然,と言われてしまいました。
たしかにFAX文書には,その旨の記載がありました。
ちなみにY社のホームページは,とても雑で素人が作ったようなデザインで,広告効果は期待できないものでした。
対策
こういった相談は最近大変多くなっています。
規約の内容や手口がほぼ同じであるため,何らかの組織的背景があるのではないか,とすら感じております。
さて,皆さんは「事例」を読んで,解約忘れを利用したあこぎなビジネスであり,こんな会社にお金を支払う義務は無いだろう,と思われたかもしれません。
ところが,本件のような事業者間の取引では,契約書の記載が特に重要視されますし,消費者を保護する法律も原則として適用が無いため,「規約」に記載されたとおりの法律関係が生じてしまう可能性が高いです。
つまり,掲載料を負担せざるを得なくなるかもしれないわけです。
もっとも,本件の場合,有料期間への切換えが全く説明されなかったり,ホームページに広告効果が全く無い等,高度の悪質性を主張し,支払を免れることができるかもしれません。
安易に業者に支払いをせず,速やかに弁護士に相談して頂きたいものです。
そもそもですが,このような被害は,日頃から契約時に書面を隅々まで読んでいれば避けられたことです。
これを機会に契約書の危険性を認識して頂けたら嬉しいです。