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弁護士法人 片岡法律事務所
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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

遺言執行者って何でしょうか?

遺言執行者を決めておくと遺言の内容を迅速かつ確実に実行できるので,遺言書には必ず書いてもらっています。

 

1 遺言執行者って何?

 遺言書の作成についてアドバイスを求められるときに,必ず書いておいて下さいね,とアドバイスするのが,「遺言執行者」の定めです。

 遺言執行者とは,簡単に言うと,遺言書に書いてある内容をその通り実現する特別な権限を与えられた者です。

 具体的には,遺言者名義の預金を解約したり,生命保険を解約したり,貸金庫の開錠,登記の移転手続など,遺言に書いてある内容を実行できます。

 遺言執行者には弁護士や司法書士など資格者がなることは当然できますが,相続人やご親族の方など素人もなることができます

2 遺言執行者が決まっていないと少し面倒

 このような遺言執行者が決まっていないと,不都合があります。たとえば,「財産を●●に遺贈する」などと記載しても,受遺者の方はすぐに財産を受け取ったり,登記が受けられないことがあります

 ちなみに,遺言執行者が決められていない場合には,裁判所に決めてもらうことができますが,誰がなるかは裁判所が決めますし,決まるまでは時間がかかるため,やはり早く遺言の内容を実行したい場合には不便です。

 以上のようなことから,私が作成に関与した遺言書では必ず遺言執行者を指定しています。遺言者の依頼があって私自身が遺言執行者になることも多いです。

おじいさんとお金

3 記憶に残る遺言執行

 私も遺言執行者を何回か担当したことがありましたが,記憶に残る遺言執行があります。

 それは,資産家の遺言者がめぐまれない子供のための育英基金に全遺産を寄付する,という件でした。

 遺言者の方は,生前から,育英基金を設立していて,亡くなってから,その財団に全財産を寄付することを計画されたのでした。

 私は,遺言者からの依頼で,遺言書を作成し,遺言執行者となることもお引き受けしました。

 遺言者がお亡くなりになった後,私は遺言執行者として,多種多様な財産を整理し,全て育英基金に引き継ぎがせて頂ました。

 具体的な手続は,銀行に出向いて貸金庫を開けたり,預金を解約したり,登記手続きを行ったり,ご自宅に伺ってどんな財産があるか一つ一つ写真撮影して点検したり,と,とても地味で手間のかかる仕事でしたが,故人の高潔な遺志を実現する一助となることができ,とてもやりがいを感じた事件でした。

投稿日:2014年7月03日 14:54|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 相続

公正証書遺言があるかは調べられます

 亡くなられた方が「公正証書」で遺言をのこされているかどうかは公証役場で調べることができます。

 もちろん相続人であれば亡くなられた方の公正証書の写しをもらうことができます。

 

1 意外と知られていないのですが,亡くなられた方の遺言(公正証書で作成されたものに限ります。)があるか無いか,公証役場で調べることができます。

 亡くなられた方の相続人にあたる方ならば,自分と亡くなられた方の身分関係を戸籍で証明すれば,亡くなられた方が過去に作成した遺言全部を検索できます

 現在は,データがオンライン化しているので,全国どこでも作成された遺言書を検索できます。

 ノートパソコン

 たとえば,名古屋で青森の遺言書を検索することもできます(あんまりそういうケースは無いのですが・・・)。

 我々,弁護士も,相続人の方から委任状を頂いて,遺言書を検索したことがあります。

 

2 注意して頂きたいのは,このように検索で見つかるのは,公正証書で作成された遺言書に限られるということです自筆証書遺言などは,公証役場で保管されているわけではありませんから,当然検索することはできません

 ただ,自筆証書遺言の場合は,家庭裁判所に検認手続という申立を行う必要があるため,これが申し立てられると相続人全員に手続の連絡が来ます。

 したがって,どちらにしても,相続人は遺言書があることを知ることができます。

 

3 検認手続が申し立てられないけど,遺言書がありそうだ,と思ったら,公証役場に行って遺言書が無いか確認してみられると良いと思います。

 

 

投稿日:2014年6月20日 16:27|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 相続

養子の相続関係は少しややこしい

 養子縁組をした場合,縁組先の家族とはどういう関係になるでしょうか?

 特に相続の場合,何か特殊なことはありますか?

 

  1. 民法には,次のような規定があります。

    (第727条) 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる

    したがって,たとえば,縁組先に子供がいれば,養子とその子供とは兄弟姉妹になります
     つまり,実の兄弟姉妹と全く同じ地位となるわけです。
     したがって,もし養子が亡くなった場合,実の兄弟姉妹と縁組先の兄弟姉妹が同じ割合で相続することになります
     このように養子縁組は,縁組先の養親との関係だけで済まないので,注意が必要です。
    家族とマイホーム

  2. 二重の資格
     ところで,若干理不尽に思われることもあるかもしれませんが,養子縁組を行うと,相続資格が二重になるケースがあります。
     それは,親族間で養子縁組をしたケースです。

     たとえば,お祖父さんが長男の子供(孫)と養子縁組をしたケースを考えてみて下さい(子供は長男・二男のみだとしてください)。
     そして,長男が先に亡くなってしまし,その後にお祖父さんが亡くなったとしましょう。
     その場合,孫は,お祖父さんの養子としての立場と,②長男の代襲相続人の立場という2つの資格を持つことになり,相続分が二重に与えられることになります。

     二男にとっては不平等だと感じるかもしれませんが,長男が亡くならなければ同じ結果だったので,特に不平等ではないことになります。

     このように,養子縁組によって特殊な関係が作られることがあります。少しややこしいので,注意が必要でしょう。

投稿日:2014年6月10日 11:28|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 相続

成年後見制度はどういう場合に使われていますか

成年後見制度はどういう場合に使われているのでしょうか。その実情を簡単にご説明します。

  1. 増えてきた成年後見制度の利用
     近年,成年後見の申立てに関する相談が増加しています。
     成年後見の相談をされる方が増えたのは,高齢化社会が進んで,認知症のお年寄りが増加したことが背景だろうと思います。
     認知症のお年寄りが当事者として各種契約するためには成年後見人が不可欠です。
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  2. 相続紛争の前哨戦
     今も昔も,認知症のお年寄りはいましたが,現在ほど成年後見制度が活用されてはいませんでした。
     以前はコンプライアンスの意識が低かったので,意思能力に多少問題があっても契約を結ぶのに関係者もそれほど気にしていなかった傾向がありました。
     コンプライアンスが重視されるようになった昨今では,きちんと後見人をつけるべきという考えが浸透していると言えます。

     また,現在,成年後見制度がよく利用される例としては,お年寄りの財産確保のケースがあります。
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     たとえば,認知症の親を介護するため同居している子供と,そうでない子供とがいて,親の財産の管理方法を深刻な対立が生じたとします。
     親と同居していない子供は,親の財産管理から遠ざけられ,事実上手出しできません。
     そこで,同居していない子供が成年後見人の選任を申立てることで,親の財産の管理権限を第三者(弁護士等)に移管するのです。
     これによって,同居している子供が勝手にお金を使うことはできなくなります。

     同居していない子供にとっては,後見人の費用だけ遺産は減りますが,不正支出がされるリスクが無くなるわけです。

     このように成年後見制度は,相続紛争の前哨戦(財産保全)として利用されているのです。

  3. 成年後見人を選任しなかった場合
     ここで,あれ?と疑問に思われるかもしれません。
     たとえ成年後見人をつけなくても,不正支出があった場合には,相続開始後に同居している子供に責任追及ができるのではないか?と。

     しかし,不正支出かどうかは,証拠上分からないことがあります
     また,相続財産のほとんどを費消されてしまったら,あとで相手方から取り返すのは手続上困難を伴います

     結局,不正支出を事前に止める方が手間が少ないことが多いです。

投稿日:2014年6月03日 07:02|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題, 相続

遺産としてのこされた不動産を譲渡する場合の税金

 遺産分割で相続人に公平に財産を分けるためにどうしても不動産を売却しなければならないことがあります。

 単純に考えれば,遺産の中の不動産がたとえば2000万円で売れれば,そのまま2000万円分相続財産が増えるからハッピーだということになりますが,ことは単純ではありません。

 常に念頭に置かなければならないものとして,不動産譲渡所得税があります。

 ご存じのこととは思いますが,不動産を譲渡する際には,不動産譲渡所得税が発生します。

 これは,不動産を取得したときの価格よりも高い金額で不動産を売却した場合に,その差額分の約2割が税金になるというものです。

 たとえば,1000万円で取得した土地が2000万円で売却した場合に差額の1000万円の2割の200万円が税金となります(正確なものではありませんので,ご了承ください。)。なお,マイナスの場合は税金はゼロです。

 問題は,相続の対象となる土地が一体いくらで取得されたのか不明な場合です(ご高齢の方の相続の場合,分からないことが多いです。)。

 こういった場合,もし取得価格が分からなければ,売却価格の5%で取得したものとみなされて課税がされます。

 たとえば2000万円の不動産を売却した場合は,2000万円の5%である100万円で取得したものとして,差額の1900万円が課税の対象額となり,その2割である380万円が不動産譲渡所得税となります。

 昭和の初期に購入した不動産ならともかく(不動産の価格も安いでしょう),ここ十数年で取得された不動産ならば,是が非でも取得した際の資料(売買契約書等)を探し出す必要があります。

 なお,遺産分割のために不動産譲渡がされる場合には,申告期限から3年以内であれば,譲渡所得税を減額できる特例がありますので,もめごとは3年以内としたいものですね。

投稿日:2013年12月26日 12:36|カテゴリー:相続

遺言書の基本のき

 先日,ある直木賞作家の短編小説を読んでいたら,遺言書の話が出てきました。

 亡くなった会社社長が,長年一緒に会社を手伝ってきた二男ではなく,都市銀行に勤めている長男の方に自分が経営する会社の株式を遺贈する,というあまりに不合理な内容の遺言書をのこしたのです。

 長男は,会社社長が体調不良となった時に病院に足繁く訪れ,最終的に,弁護士に関与してもらって,ワープロでうった遺言書に社長の署名・押印を取り付けたようです。

 二男は,遺産分割協議の際,長男が弁護士をひきつれて遺言書の有効性を強く主張したため,辟易して,相続を放棄しました。周囲の者が,本当に署名が本人のものか確かめるべきだった,とくやしがっている様子が描かれています。

 私は,遺言書の話が出てきた時点で,おや?と思い,弁護士が遺言書の有効性を主張するくだりで,なんだそりゃ?という気分になってしまって,読む気が一気に失せてしまいました。

 我々弁護士にとっては常識(法学部の生徒でも知っている)なのですが,自筆証書は,全文を手書きしなければならず,ワープロうちの文面では完全に無効になります。署名・押印が本人のものであっても何らの効力も無いのです。

 したがって,「弁護士」がワープロうちの遺言書に本人から署名・押印を取り付けるなどと言う間抜けな話は絶対に生じようが無いわけです。

 このように,署名・押印が本人のものか否か確かめるまでもなくこの遺言書は無効でありますので,話が滑稽でしょうがありません。

 自信が無いなら遺言書について最低限のことを調べてから小説を書いて頂きたいものです。

 

 ところで,本人が遺言書全文を自筆で書かなくても遺言書として有効になる場合があります。

 それは,公証人を関与させて遺言公正証書を作成する場合です。この場合,本人は公証人から意思確認を受けた上で,署名・押印すれば有効な遺言書が作成できます

 手が震えて字が書けなくなっているような場合(もちろん,本人の意思能力は必要です。)には,自筆証書ではなく,公正証書を選択するのがまともな弁護士のやり方ですね。

投稿日:2013年11月15日 12:47|カテゴリー:相続

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