民事執行の実効性
私が今まで実務にたずさわってきた経験で言いますと,日本は債務者に甘い国だという印象です。
たとえば,裁判所の判決で金100万円を払え,という判決が下されたとしても,債務者が任意に支払をしなければ,債権者は債務者の財産を調査し,民事執行手続きを行わなければなりません。
調査をするといっても,個人情報保護の壁は厚く,財産調査には大変な困難を伴います。
このため,債務者が不動産を持っていたり,勤務先が判明していたり,預貯金がどこにあるか分かっている場合を除き,資産隠しをされると事実上判決内容が実行できません。
現在,民事執行手続には,財産開示制度といって,債務者に自分の財産を明らかにするよう求める制度がありますが,ペナルティが無いに等しく,実効性を欠いています。
正当な権利者が泣き寝入りするというのは許容しがたいことであることは明らかですので,現在,日弁連では,財産開示制度における制裁強化と,不当な開示拒否をした者の名簿登載,あと,金融機関等に債務者財産を全面的に開示させることができる制度の導入を提案しようとしています。
なお,これらの制度については,ドイツや韓国でかなり進んでいるとのことです。
民事執行の実効性が無いと,司法が国民から見向きもされないようになり,暴力団等の暗躍を招くと思いますので,しかるべき改正が必要ですね。
投稿日:2013年3月14日 10:54|カテゴリー:弁護士の役立つ情報