職場内のいじめは早めに解決
最近,学校でのいじめ問題がマスコミをにぎわせていますが,職場においてもいじめ問題は存在します。
学校と違って,いじめる方もいじめられる方も大人ですから,当事者同士で解決できるはず,と思われるかもしれません。
しかし,いじめられる方が,無口な人であったり,ため込んでしまったりする人だと,重大な結果を招きかねません。やはり,芽が小さいうちに解決すべきです。
もし,あなたが管理職や経営者で,部下からいじめの報告が上がってきたら,直ちにいじめの事実の有無を積極的に調査し,速やかに善後策を講じて,職場環境の調整をする必要があります。
それをしないまま,その部下が精神疾患となり自殺してしまうようなことがあれば,安全配慮義務違反があったとして,自死に関する莫大な損害賠償責任を負担するおそれがあります(安全配慮義務というのは,雇用者側が職務から生じる一切の危険から職員を保護しなければならないという義務のことです。)。
いじめ問題を放置して安全配慮義務違反が認められた例として,東京高裁平成15年3月25日判決があります。
同判決では,適切な措置を講じていれば,職員が職場復帰することができ,精神疾患も回復し,自殺に至らなかったであろうと推認できる,と述べ,雇主(市)の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を認めました。
もっとも,いじめがあればいじめた方を厳しく処分すればいいかというと,そう単純ではありません。
以前,当事務所で対応した団体交渉の事案では,いじめをした当事者が,経営者に対し,労働組合を通じて,いじめを理由とする懲戒処分の白紙撤回を要求してきたことがありました。
労働組合の担当者曰く,これはいじめではなく,職員間の喧嘩に過ぎず,経営者が職員間の喧嘩に口出しすべきではない,とのことでした。
「いじめ」を職員間の喧嘩だと軽くとらえるならば,たしかに経営者が口出しすべき事柄ではないかもしれません。
しかし,上記のような重大な事態に発展する可能性を考えると,組合の意見には賛同できません。
いじめの有無や程度については緻密に調査した上,厳格な対応をとるべきではないかと感じています。