医療法人の理事長の権限
当事務所では,社団医療法人内での経営紛争の相談をいくつも受けた経験があります。
特に理事長と他の理事が経営方針で対立するような場面では,理事長の権限の大きさを考慮する必要があります。
理事長の権限ですが,医療法46条の4では, 医療法人の代表権は理事長のみに帰属すると定められています。
つまり,理事長は医療法人の代表者として,医療法人のためにいかなる契約も締結することができるのです(もちろん,医療法人の目的外の行為はできませんが。たとえば,理事長個人が使うためにリゾートマンションを医療法人で購入する,などです。)。
では,理事会や社員総会で,理事長の権限を制限する決議をした場合はどうでしょうか。
これについては,解釈上,医療法77条が一般社団法人及び一般財団法人77条5項を準用していないため,理事長の代表権に加えた制限は第三者の善悪にかかわらず対抗できない(つまり相手方が制限があることについて知っていても争えない),と解釈されています。
つまり,いったん理事長になってしまえば,極めて強大な権限を有することになるのです。
したがって,理事長が身勝手な行動をしているようなケースでは,理事長の行動に待ったをかけるためには究極的には理事長職を解職するしか無いことになります。
しかし,理事長職の解職には大変な困難を伴います。そのことについては,また次の機会にご説明したいと思います。