清算条項はとても重要!
過去にたずさわった件ですが,私が会社側の代理人となって,退職後に残業代を請求した労働者と交渉を行うことがありました。
結局,残業をしていることは事実でしたので,残業代を支払うことで合意したのですが,合意書を取り交わした後しばらくして,労働者側から,「そういえば残業代のほかに退職金も請求できるのではないか?」という連絡がありました。
会社には,退職金を支払う内規が無かったのですが,功労に報いるため,一部の労働者に対しては裁量的に退職金を支払っていたそうです。よって,労働者の言い分にも全く理が無いというわけではありませんでした。
ただ会社側としては,当該労働者に残業代以上の金銭を支払うつもりは全く無かったので,これを拒絶する,とのことでした。
ところで合意書には,残業代の支払を認める条項とともに,「甲(労働者)と乙(会社)との間には本合意書に定める外,本件残業代の件以外の事項も含め,何らの債権債務もないことを相互に確認する。」という条項が入っていましたので,当方からは,「合意書において全て清算済みであって,これ以上の請求は受け入れられない。」と回答しました。
もし,「本件に関し,何らの債権債務関係も無い」としか記載していなかったら,あくまで本件(残業代の件)以外の事項は清算されていないことになるため,再度退職金の件が新たな紛争になっていた可能性がありました。
このように清算条項は決定的な意味を持つ場合があるため,文言には特に注意する必要があります。
投稿日:2013年4月04日 00:29|カテゴリー:弁護士の役立つ情報