業務上過失致死事件と執行猶予
ご記憶にあると思いますが,岐阜市で解体工事中の工場の壁が倒れ,通行中の女子高生がその下敷きになって死亡した事故がありました。
この事故で業務上過失致死罪に問われた同市の解体業者の元専務と社員の両被告に対し,本日,岐阜地裁は10日,それぞれ禁錮1年2カ月(求刑は,禁錮1年6カ月と禁錮2年だったそうです。)の判決を言い渡したそうです。
http://www.asahi.com/national/update/0710/NGY201307100001.html
通常,検察官の求刑が1年6月程度であれば,よほど重い過失,前科,強い被害感情がない限り,死亡事案でも執行猶予付き判決がつくことが多いです。
これに対して,検察官の求刑が,4年以上だと,実刑を覚悟すべき事案だということになります(執行猶予がつくのは懲役3年までだからです。)。
したがって,今回の判決は被告人や弁護人にとっては予想外に厳しい内容に感じられたのでは無いでしょうか。
ただし,検察官が短い年数を求刑した場合でも,強力に実刑を求めていることが分かる場合があります。
それは,検察官の論告求刑の際に「矯正施設に収容の上」という言葉を入れてきた場合です。矯正施設というのはもちろん刑務所のことです。
このような記載がある場合,裁判官は検察官が強く実刑を希望していることが分かるので,検察官の意向を尊重し,被告人に実刑を科す場合があります。
求刑が短期であっても,上のようなフレーズがないか注意すべきだと言えましょう。