経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。
今日は安城の簡易裁判所に来ています。
簡易裁判所は金額の低い事件や調停事件を取り扱っています。
一般に簡易裁判所は(地方裁判所と同じ庁舎になっていない場合)、すごく小さく、これが裁判所か?と思うような簡素な造りです。また、個性に乏しく似たり寄ったりの形をしていて区別がつきません(↓の感じです)。
地方裁判所の事件の多くが弁護士が付くのに対し、簡易裁判所の事件の多くが弁護士が付かない本人訴訟です。
その意味では市民にとって身近な裁判所ということになりますが、裁判所の職員としては何も分からない素人の方に手続きを一から説明せざるを得ないため、とても大変だろうなあ、といつも感じています。
過去にたずさわった件ですが,私が会社側の代理人となって,退職後に残業代を請求した労働者と交渉を行うことがありました。
結局,残業をしていることは事実でしたので,残業代を支払うことで合意したのですが,合意書を取り交わした後しばらくして,労働者側から,「そういえば残業代のほかに退職金も請求できるのではないか?」という連絡がありました。
会社には,退職金を支払う内規が無かったのですが,功労に報いるため,一部の労働者に対しては裁量的に退職金を支払っていたそうです。よって,労働者の言い分にも全く理が無いというわけではありませんでした。
ただ会社側としては,当該労働者に残業代以上の金銭を支払うつもりは全く無かったので,これを拒絶する,とのことでした。
ところで合意書には,残業代の支払を認める条項とともに,「甲(労働者)と乙(会社)との間には本合意書に定める外,本件残業代の件以外の事項も含め,何らの債権債務もないことを相互に確認する。」という条項が入っていましたので,当方からは,「合意書において全て清算済みであって,これ以上の請求は受け入れられない。」と回答しました。
もし,「本件に関し,何らの債権債務関係も無い」としか記載していなかったら,あくまで本件(残業代の件)以外の事項は清算されていないことになるため,再度退職金の件が新たな紛争になっていた可能性がありました。
このように清算条項は決定的な意味を持つ場合があるため,文言には特に注意する必要があります。
もらってびっくりする郵便物として,内容証明郵便があります。
一般の方は,内容証明郵便なんて人生で何度も受領することはないと思います。せいぜい1,2回ではないでしょうか。
滅多に受領することがないから,内容証明に何らか重大な法的効果があると思い込み,よく内容証明郵便が届いた,と焦って相談にみえるお客様がいらっしゃいます。
もちろん,内容証明郵便で出すくらいの内容ですから,重大な内容が記載されているに違いませんが,内容証明自体は,そういった内容の文面が何月何日に受領者のもとに届いた,という事実を証明するに過ぎず,たいした意味はありません。
我々弁護士は,相手方に出す文書は,デフォルトが内容証明です。これは,後日の証明のためですが,内容証明が届いたと過剰反応される方もいらっしゃいます。
このように,内容証明自体には,法的な意味はあまり無いのですが,それに対応しないで無視していると,いきなり訴訟等が申し立てられるなど,ややこしい話になりかねません。したがって,内容証明が来たら,ひとまずどこでもいいので法律相談に行き,無視してもいい内容なのか否か検討すべきだと思います。心配しすぎてもいけないが,なめてもいけない,というものです。
法律問題で重い悩みを抱えられた為に精神の健康を害される方がいらっしゃいます。
われわれ弁護士は法律のプロではありますが医者やセラピストではないため、そうした方が相談にみえた場合には法律上の解決策は提供しますが、別途治療をきちんと受けられるよう勧めます。
ところで、精神の健康を取り戻す方法は薬物治療以外に運動療法があるということです。
最近読んだ脳の分野の学者の書籍によると、運動療法は抗うつ剤の効能と同じ程度の効能があるのだそうです。また、病気の再発率は運動療法の方が低いとのことです。
そう考えると、うつ病のような精神の病の場合に限っては高い治療費を払ってお医者さまにかかるよりも、適度な運動をしたほうがはるかに賢いということになりそうです。
運動をすれば法律問題も一挙解決するならありがたいのですが、さすがにそうはいきません(^_^;)。せめて無用な悩みを抱かなくて済むようにかみくだいてご説明を申し上げるしかありません。
建物賃貸借契約においては,賃借人からの保証金や敷金返還請求に対し,これまで消費者保護法を根拠として賃借人を保護する裁判例が続いていました。
しかし,最近は,行き過ぎた賃借人保護を是正するような判例が続いている印象です。
たとえば,平成24年7月5日の東京地裁で下された判決では,更新料を賃料の約1か月分とする特約,明渡しを行わないときの賃料倍額特約,特別損害が発生した場合の賃料倍額金に加えて別途特別損害金を請求できる特約の効力を消費者契約法にてらして有効と判断しました。
たしかに,この程度の特約はありふれており,賃借人にとってあまりに不利とまでは言えないと思うので,無効としなかった点は評価できます。
どの程度大家に有利な特約を入れられるかの基準となる判例だと思います。
私が今まで実務にたずさわってきた経験で言いますと,日本は債務者に甘い国だという印象です。
たとえば,裁判所の判決で金100万円を払え,という判決が下されたとしても,債務者が任意に支払をしなければ,債権者は債務者の財産を調査し,民事執行手続きを行わなければなりません。
調査をするといっても,個人情報保護の壁は厚く,財産調査には大変な困難を伴います。
このため,債務者が不動産を持っていたり,勤務先が判明していたり,預貯金がどこにあるか分かっている場合を除き,資産隠しをされると事実上判決内容が実行できません。
現在,民事執行手続には,財産開示制度といって,債務者に自分の財産を明らかにするよう求める制度がありますが,ペナルティが無いに等しく,実効性を欠いています。
正当な権利者が泣き寝入りするというのは許容しがたいことであることは明らかですので,現在,日弁連では,財産開示制度における制裁強化と,不当な開示拒否をした者の名簿登載,あと,金融機関等に債務者財産を全面的に開示させることができる制度の導入を提案しようとしています。
なお,これらの制度については,ドイツや韓国でかなり進んでいるとのことです。
民事執行の実効性が無いと,司法が国民から見向きもされないようになり,暴力団等の暗躍を招くと思いますので,しかるべき改正が必要ですね。
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