名古屋・大垣の弁護士事務所。離婚、相続・遺言、不当解雇、債務整理、契約書作成、刑事事件、取引紛争、渉外法務などの法律相談。

弁護士法人 片岡法律事務所
menu

名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

取引先の倒産と債権回収-転売した商品の代金をおさえよう

 当事務所のホームページにもQ&Aで取り上げたことがあるのですが,動産(各種商品)の売主は,買主が倒産の危機に瀕した場合,買主が動産を転売した先に債権が残っていればそこから優先的に債権回収することができます

 専門用語で言いますと,「動産売買先取特権に基づく物上代位」というものです。

 とは言っても,売主が座して待っていれば自動的に転売先から金が振り込まれてくるというものでは無く(そんな都合のよいことはありません),裁判所に差押命令を発令してもらう必要があります

 この動産売買先取特権に基づく物上代位は,判決手続を経ないで実行できる非常に強力な債権回収手続であるため,裁判所のチェックは厳しく(そのため,仮差押手続を併用することもあります。),また適用場面も限られているため,申し立てた経験の無い弁護士も多く,中にはそのような手続があることすら知らない(というか勉強したはずなのだが,あまりに使わないので忘れてしまったのでしょう)場合があります。

 弁護士になり立ての頃,2,3回この手続を利用して,運良く全額の債権回収を実現したことがあったのですが,数十社の債権者がいたにもかかわらず,この手続をとった債権者は,当該関与先だけだった,と破産管財人から聴いたことがありました。

 倒産=あきらめる,という思考に陥らず,一言相談頂ければ活路が開ける場合があります(常に必ずうまくいくわけではないので,あしからず)。特に顧問先の皆様には電話一本頂ければという思いです。

(執筆者:片岡憲明)

投稿日:2014年1月17日 15:56|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 破産債務整理

調停申立書の記載は簡単な方がいい

 先日,家庭裁判所の調停委員の方と直接お話する機会がありました。

 あまりなじみが無いかもしれませんが,家庭裁判所の調停委員というのは,遺産分割や離婚のような家事問題について当事者の間に入って当事者間の話し合いを調整して下さる方です。

 遺産分割も離婚も,当事者の感情対立が激しい紛争ですから,調停委員の方々のご苦労は並々ならぬものです。

 普段,私達弁護士は,調停の席でしかお会いしないので,調停委員の先生方がどのような気持ちで調停に臨んでみえるか,生の声を聴くことができません。その意味で調停委員の先生とお話しする機会は大変貴重なものでした。

 お話を伺う中で特に印象に残ったのは,離婚の調停申立書の記載方法に関するご意見でした。

 調停委員の先生からは,調停申立書は極力離婚に至る経過については簡単な記載にするべきだ,というご意見がありました。

 普通に考えれば申立書が詳しい方が事情を知らない調停委員の理解に資するので良いのではないかと思いがちなのですが,詳しければ良いというわけでは無いとのことでした。

 すなわち,家事事件手続法が平成25年1月1日に施行されてから,申立人が作成した調停申立書が相手方にも送付される扱いとなり,詳細な申立書(特に離婚事件)を読んだ相手方が感情を害した状態で調停に臨むケースが増えたとのことでした(従前は申立書が送付されないため,殆ど相手方が申立書を見ることはありませんでした。)。

 なるほど,抽象的な理由で離婚したい,と言われるのと,具体的な理由を挙げられて離婚したい,というのでは,お互い色々言い分があるでしょうから,後者の方が紛争が激化するというのも頷けます。

 私も,依頼者の気持ちを十二分に伝えたいため,詳しい申立書を作成して申し立てをしておりましたが,今後は,できるだけ簡単なものに止め,円満に離婚が成立するよう書面の記載を工夫する必要があると感じました。

 いずれにしても,外部の方ともお話をして,弁護士としてのトータルな問題解決能力を向上させたいものです。

 離婚

投稿日:2013年12月11日 18:48|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 離婚

ソフトウェアの不正コピー

 最近は,パソコンソフトのコピーは簡単にできない仕組みができていますが,それでも,一部のパソコンソフトについて不正コピーが後を絶ちません。

 こういった不正コピーをしてしまった場合,当事者が損害賠償責任を負うのは当然のことですが,たとえば,コピーした本人が反省し,後日正規に当該ソフトを買ってインストールした場合,損害賠償責任を免れることはできないでしょうか。

 ソフト会社にしてみれば,最初から正規にソフトを購入されていれば得られたであろう代金以上に損害賠償請求を認める必要はないのではないだろうか?とも思えるため,問題になります。

 この点について,マイクロソフト外2社とLEC(東京リーガルマインド)との間で争われた事件が有名ですので,ご紹介致します。

 東京地裁平成12年(ワ)第7932号損害賠償等請求事件を引用します。

「被告は,西校校舎内の本件プログラムについての違法複製品をすべて正規品に置き換え,正規品を購入することによって許諾料全額を支払ったから,原告らの損害は生じていないと主張する。
 しかし,被告の上記主張は,以下のとおり失当である。
 すなわち,被告の原告らに対する著作権侵害行為(不法行為)は,被告が本件プログラムをインストールして複製したことによって成立し,これにより,被告は,本件プログラムの複製品の使用を中止すべき不作為義務を負うとともに,上記著作権侵害行為によって,原告らに与えた損害を賠償すべき義務を負う。そして,本件のように,顧客が正規品に示された販売代金を支払い,正規品を購入することによって,プログラムの正規複製品をインストールして複製した上,それを使用することができる地位を獲得する契約態様が採用されている場合においては,原告らの受けた損害額は,著作権法114条1項又は2項により,正規品小売価格と同額と解するのが最も妥当であることは前記のとおりである。その意味で,本件においては,原告らの受けた損害額は,被告が本件プログラムを違法に複製した時点において,既に確定しているとみるのが相当である。」

 ★要するに,つまり,正規にソフトを購入しても過去に発生した損害賠償請求権を事後的に消滅させることにはならない,ということです。

「確かに,被告は,原告らから違法複製品の使用の中止を求められた後,新たに本件プログラムの使用を希望して,自ら選択して,本件プログラムの正規複製品を購入したこと,上記正規品は,違法複製品と同一又は同種(違法複製品とは版の異なるものも存在する。)のものであることが窺える。しかし,被告の上記行為は,不法行為と別個独立して評価されるべき利用者としての自由意思に基づく行動にすぎないのであって,これによって,既に確定的に発生した原告らの被告に対する損害賠償請求権が消滅すると解することは到底できない(もとより,弁済行為と評価することもできない。)。

 顧客は,価格相当額(許諾料相当額)を支払うことにより当該正規品(シリアル番号が付された特定のプログラムの複製品)を将来にわたり使用することができる地位を獲得するが,その行為(当該正規品についての所定の条件の下での使用許諾申込みを承諾する行為)により発生した法律関係が,顧客と著作権者らとの間において既に成立した権利義務関係(損害賠償請求権の存否又は多寡)に影響を及ぼすものではないことはいうまでもない。」

 ★要するに,任意に正規品を購入してもそれは将来の権利を設定したことにしかならない,ということです。

「この点,被告は,当初から正規品を購入した場合や,最後まで正規品を購入しなかった場合と不均衡が生ずるから不都合である旨主張する。しかし,当初から正規品を購入した場合には違法複製行為がないのであるから,損害を賠償する義務がないのは当然のことであって不均衡とはいえないし,最後まで正規品を購入しなかった場合には,本件プログラムの複製物の使用が許されないのであって,自らの自由意思により,正規品を購入して将来にわたり使用する地位を確保した本件のような場合とはその前提を異にするから,やはり不均衡とはいえない(被告において,本件プログラムに係る正規品を購入せず,他社のプログラムを購入するという選択もできる。)。さらに,本件全証拠によるも,被告が正規品を購入したことにより,原告らが被告に対して,損害賠償義務を免除する旨の意思表示をしたと認めることもできない。したがって,上記主張は理由がない。」

 ★正規品を購入するならば,そのときに,原告から損害賠償義務の免除を受けておくべきだった,ということになります。

 LECは,結果的に2倍の料金を支払うことになってしまいました。ソフトウェアの不正コピーに対する民事的制裁は重い,ということです。

投稿日:2013年11月29日 18:45|カテゴリー:弁護士の役立つ情報

シフト制と有給休暇

 従業員が会社を辞めるとき,あまっている有給休暇を使い切って辞めるというのが一般的です。

 そのとき,残っている有給の日数が何日あるか会社と従業員との間でトラブルになることがたまにあります。

 就業規則があって,有給の届出制度もきちんとしている会社ならトラブルはありませんが,10人以下の従業員で,就業規則も無く,雇用契約書もきちんと取り交わされていない会社では,従業員のとったお休みが公休日なのか,有給日なのかよく分からなくなる場合があります

 たとえば,従業員同士が休みを調整するシフト制を採用しているような会社では,シフト上の「休み」が公休日なのか有給日なのか曖昧になります。

 有給の届けをしていない以上,その休みは公休だ,よって有給日は1日も消化していない,などと従業員から主張されるおそれがあるのです。

 会社側からしてみれば,夏期や正月の時期に長期間休んでいるのに,これがまったく有給扱いされないのは理不尽だ,と感じられるかもしれませんが,有給日・公休日の区別がされていない場合,特段の事情が無い限り,公休扱いと解釈されてしまう可能性が高いのです。

 特に,求人募集などで夏期や正月休みありなどと記載している場合や,夏期や正月に会社全体が休業している場合は,公休扱いとの解釈にほぼなってしまうでしょう。

 会社側は曖昧な取り扱いをするべきではありません。

 会社側としては,きちんと就業規則や雇用契約書で公休がどうなっているかを明らかにするとともに,有給日については有給の届出書類を提出させ(従業員に有給の申請をさせる),公休と有給日とをきちんと区別しないと損をしてしまうことになります。

 

 

 

投稿日:2013年11月22日 10:45|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

飲酒運転で職を失う

 飲酒運転に対する社会の目はどんどん厳しくなっています。

 最近では,行政処分や刑事処分が厳罰化され,認知されるようになったためか,飲酒運転自体相当減少していると言われています。

 近時,東京高等裁判所(東京高裁平成25年7月18日判決)で,プライベート酒気帯び運転による物損事故を起こし,逮捕・新聞報道されるとともに,罰金刑を下された労働者について,懲戒解雇=有効,退職金=7割カットとする裁判例が下されました。

 この労働者は,郵便局で集配業務を担当する従業員だったようですが,本当につまらないことで職を失い退職金の7割を失うことになりました。自業自得だとは言え,なかなか重い制裁です。

 ただし,この裁判では,使用者である日本郵便(株)が退職金の全額カットを主張していましたが,7割カットの限度に止められました

 裁判所はそれ以上退職金を減額するのは行き過ぎだとの判断を下したのです。

 なお,労働者が,仕事で自動車を利用することのない窓口業務の従業員であったならば,懲戒解雇が認められなかった可能性もありました

 労働者としては使用者の一方的な言い分を鵜呑みにすべきではないと思います。

 他方,使用者も,感情的になったり,他の従業員への見せしめという意味合いで,苛烈な処分を下しがちですが,かえって余計な費用を支払うことになりかねませんので,慎重に対応して頂く必要があります。

投稿日:2013年11月12日 10:13|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

労働時間の自己申告制

 今日,ほとんどの会社でタイムカードが設置され,正確な労働時間管理がなされるようになりました。

 しかし,あえて労働時間を自己申告させている会社は少ないながらあります。

 もちろん,自己申告じゃなければ時間管理ができない外回りの仕事が多い(直行直帰が多い)労働者が在籍する会社なら自己申告制をとるのはやむを得ないですが,そのような事情もないのに自己申告制を維持してる会社があります。

 おそらく労働者に促して残業時間を短く申告させることができるから,好都合だ,という考えがあるのではないでしょうか。

 このような安易な時間管理が行われないよう,厚生労働省は,原則としてタイムカード等の客観的な記録をすること,自己申告制を採用せざるを得ない場合も使用者は労働者に対して十分な説明と実態調査を行い,また,労働時間の上限設定等をしないよう通達を出しています(平成13年基発339号)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ufxb-att/2r9852000000ugaf.pdf 。

 したがって,上記のような考えで自己申告制を採用している会社は,労働基準監督署に調査に入られたとき,全従業員に対する未払残業代の支払を余儀なくされる危険があります。また,個別に従業員から未払残業代の請求や付加金の請求がされ,紛争になるおそれもあります。

 むしろ,タイムカードでしっかり時間管理をして,無駄な残業時間にメスを入れた方が全体として良かった,ということにもなりかねません。

 以上のことから,企業の側から相談があった場合,トラブル回避のためタイムカードで管理することを推奨するようにしています。

 

投稿日:2013年10月25日 16:49|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

職場内のいじめは早めに解決

 最近,学校でのいじめ問題がマスコミをにぎわせていますが,職場においてもいじめ問題は存在します。

 学校と違って,いじめる方もいじめられる方も大人ですから,当事者同士で解決できるはず,と思われるかもしれません。

 しかし,いじめられる方が,無口な人であったり,ため込んでしまったりする人だと,重大な結果を招きかねません。やはり,芽が小さいうちに解決すべきです。

 もし,あなたが管理職や経営者で,部下からいじめの報告が上がってきたら,直ちにいじめの事実の有無を積極的に調査し,速やかに善後策を講じて,職場環境の調整をする必要があります。

 それをしないまま,その部下が精神疾患となり自殺してしまうようなことがあれば,安全配慮義務違反があったとして,自死に関する莫大な損害賠償責任を負担するおそれがあります(安全配慮義務というのは,雇用者側が職務から生じる一切の危険から職員を保護しなければならないという義務のことです。)。

 いじめ問題を放置して安全配慮義務違反が認められた例として,東京高裁平成15年3月25日判決があります。

 同判決では,適切な措置を講じていれば,職員が職場復帰することができ,精神疾患も回復し,自殺に至らなかったであろうと推認できる,と述べ,雇主(市)の安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を認めました。

 もっとも,いじめがあればいじめた方を厳しく処分すればいいかというと,そう単純ではありません。

 以前,当事務所で対応した団体交渉の事案では,いじめをした当事者が,経営者に対し,労働組合を通じて,いじめを理由とする懲戒処分の白紙撤回を要求してきたことがありました。

 労働組合の担当者曰く,これはいじめではなく,職員間の喧嘩に過ぎず,経営者が職員間の喧嘩に口出しすべきではない,とのことでした。

 「いじめ」を職員間の喧嘩だと軽くとらえるならば,たしかに経営者が口出しすべき事柄ではないかもしれません。

 しかし,上記のような重大な事態に発展する可能性を考えると,組合の意見には賛同できません。

 いじめの有無や程度については緻密に調査した上,厳格な対応をとるべきではないかと感じています。

 

投稿日:2013年7月22日 19:29|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

ショムニで描かれた,従業員を監視する会社

 先週より,人気ドラマ「ショムニ」の2013年度版が始まりました。

 「ショムニ」は,会社から使えないと烙印を押された従業員達が,雑務ばかりをやらされる「庶務二課」(ショムニ 今でいうところのリストラ部屋ですね。)なる部署に送られ,様々な迫害を受けながらも,江角マキコをはじめショムニの面々が,たくましく能力を発揮し,むしろ会社を窮地から救う,という,痛快ドラマです。

 江角マキコが,OL制服に身を包み,脚立を担ぎ,廊下をねり歩く姿がとても印象的です。

 さて,

 昨日放映されていた「ショムニ」の第2話では,

会社が業員のインターネット閲覧履歴やメール送信歴を全て閲覧できるようにし,従業員を監視するという内容でした。

 近時,会社のパソコンがインターネットに常時接続しているため,仕事をするふりをして,業務とは無関係のホームページを閲覧して業務をさぼっていたりSNSで内部情報を流出させてしまったり,といった問題が頻発しており,会社が従業員を監視する必要性も高まってきました

 ショムニは,いささか大げさに描かれていましたが,多くの会社で,多かれ少なかれ,一定の監視がなされてきていると感じています。

 このように会社の監視が日常的になった結果,従業員の職務怠慢の事実を掴んだ会社側が,安易に従業員に懲戒処分を下してトラブルになるケースが増加してきました

 安易な懲戒処分は認められていないのが実情です。

 たとえば,
1日あたり2通の私用メールをしていた場合に職務専念義務違反にはあたらない,とした裁判例(東京地裁H15.9.22判決),
7か月のうちに28回の私用メールをしたこと,チャットソフトをダウンロードしたこと,を理由とする減給処分が無効とされた裁判例(札幌地裁H17.5.26判決),
6か月間に1700件余りIPメッセンジャーで私的連絡をしていた従業員に下された解雇処分を無効とした裁判例(東京地裁平成19年6月22日判決)
などがあります。

 要は,常識論でしょうが,社員同士の世間話の延長的なものは,会社も許容しなければならないでしょう。

 会社は,就業規則で私的なメールやHP閲覧を厳しく制限し,また,従業員に周知徹底をさせておかないと,懲戒処分を下すのも容易ではありません。

 092

投稿日:2013年7月18日 17:02|カテゴリー:弁護士の役立つ情報, 最近の法律問題

後遺障害が発生した場合の請求

 交通事故で,後遺障害が発生した場合,たとえば腕のシビレがとれない等,被害者は加害者にどのような請求ができるでしょうか。

 後遺障害の程度に応じて請求できる項目が増えることもありますが,大きく,「後遺障害慰謝料」「後遺障害逸失利益」の2つが請求できます。

 「後遺障害慰謝料」というのは,そのような後遺障害と一生付き合って行かざるを得なくなったことへの慰謝料です。

 これは,認定された後遺障害等級(1から14級まであり,1級に近づくほど重い)によって,金額がだいたい定まっています(判例が集積されており,あまりぶれがありません。)。

 たとえば,一番低い14級だと90~120万円,12級だと250~300万円,高いものだと,1級が2700~3100万円となっています。

 次に,「後遺障害逸失利益」ですが,要するに,後遺障害で逸失した利益,つまり,後遺障害のせいで働けなくなった分の補償の趣旨の賠償金です。

 基本的には,①基礎収入×②労働能力喪失率×③喪失期間(に対応するライプニッツ係数)で計算します。

 たとえば,①300万円の収入の人が,②1級の障害を負い(たとえば,四肢麻痺 喪失率100%),③あと40年働けるはずだった(ライプニッツ係数:17.159),ならば,

 300万円×100%×17.159=5147万7000円となります。

 もっとも,障害の内容によって,①②③は必ずしもはっきりとは定まらず,①②③の数値の決定は非常に難しいです。

 また裁判所によってまちまちな判断がされるため,被害者の実情をきちんとアピールする必要があります。

 「後遺障害逸失利益」は,極めてもめる可能性が高い損害項目だと言えましょう。

 

20130702112230

投稿日:2013年7月12日 16:58|カテゴリー:交通事故, 弁護士の役立つ情報

業務上過失致死事件と執行猶予

 ご記憶にあると思いますが,岐阜市で解体工事中の工場の壁が倒れ,通行中の女子高生がその下敷きになって死亡した事故がありました。

  この事故で業務上過失致死罪に問われた同市の解体業者の元専務と社員の両被告に対し,本日,岐阜地裁は10日,それぞれ禁錮1年2カ月(求刑は,禁錮1年6カ月と禁錮2年だったそうです。)の判決を言い渡したそうです。

http://www.asahi.com/national/update/0710/NGY201307100001.html

 通常,検察官の求刑が1年6月程度であれば,よほど重い過失,前科,強い被害感情がない限り,死亡事案でも執行猶予付き判決がつくことが多いです。

  これに対して,検察官の求刑が,4年以上だと,実刑を覚悟すべき事案だということになります(執行猶予がつくのは懲役3年までだからです。)。

  したがって,今回の判決は被告人や弁護人にとっては予想外に厳しい内容に感じられたのでは無いでしょうか。

 ただし,検察官が短い年数を求刑した場合でも,強力に実刑を求めていることが分かる場合があります。

 それは,検察官の論告求刑の際に「矯正施設に収容の上」という言葉を入れてきた場合です。矯正施設というのはもちろん刑務所のことです。

  このような記載がある場合,裁判官は検察官が強く実刑を希望していることが分かるので,検察官の意向を尊重し,被告人に実刑を科す場合があります。

 求刑が短期であっても,上のようなフレーズがないか注意すべきだと言えましょう。

 

penitentiary-3_2434119

投稿日:2013年7月10日 16:21|カテゴリー:刑事事件, 弁護士の役立つ情報, 随筆・雑文

052-231-1706
ご相談フォーム

営業時間  
月曜日~土曜日9:00~18:00(休業日:日曜・祝日)※予約のあるご相談は、時間外でも対応いたします。

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内二丁目19番25号 MS桜通7階 
FAX:052-204-1633