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名古屋の弁護士ブログ(片岡法律事務所)

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経験豊富な弁護士が、法律情報や、時の法律問題、中国情報などを易しい言葉でコメントします。

シフト制と有給休暇

 従業員が会社を辞めるとき,あまっている有給休暇を使い切って辞めるというのが一般的です。

 そのとき,残っている有給の日数が何日あるか会社と従業員との間でトラブルになることがたまにあります。

 就業規則があって,有給の届出制度もきちんとしている会社ならトラブルはありませんが,10人以下の従業員で,就業規則も無く,雇用契約書もきちんと取り交わされていない会社では,従業員のとったお休みが公休日なのか,有給日なのかよく分からなくなる場合があります

 たとえば,従業員同士が休みを調整するシフト制を採用しているような会社では,シフト上の「休み」が公休日なのか有給日なのか曖昧になります。

 有給の届けをしていない以上,その休みは公休だ,よって有給日は1日も消化していない,などと従業員から主張されるおそれがあるのです。

 会社側からしてみれば,夏期や正月の時期に長期間休んでいるのに,これがまったく有給扱いされないのは理不尽だ,と感じられるかもしれませんが,有給日・公休日の区別がされていない場合,特段の事情が無い限り,公休扱いと解釈されてしまう可能性が高いのです。

 特に,求人募集などで夏期や正月休みありなどと記載している場合や,夏期や正月に会社全体が休業している場合は,公休扱いとの解釈にほぼなってしまうでしょう。

 会社側は曖昧な取り扱いをするべきではありません。

 会社側としては,きちんと就業規則や雇用契約書で公休がどうなっているかを明らかにするとともに,有給日については有給の届出書類を提出させ(従業員に有給の申請をさせる),公休と有給日とをきちんと区別しないと損をしてしまうことになります。

 

 

 

投稿日:2013年11月22日 10:45|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

遺言書の基本のき

 先日,ある直木賞作家の短編小説を読んでいたら,遺言書の話が出てきました。

 亡くなった会社社長が,長年一緒に会社を手伝ってきた二男ではなく,都市銀行に勤めている長男の方に自分が経営する会社の株式を遺贈する,というあまりに不合理な内容の遺言書をのこしたのです。

 長男は,会社社長が体調不良となった時に病院に足繁く訪れ,最終的に,弁護士に関与してもらって,ワープロでうった遺言書に社長の署名・押印を取り付けたようです。

 二男は,遺産分割協議の際,長男が弁護士をひきつれて遺言書の有効性を強く主張したため,辟易して,相続を放棄しました。周囲の者が,本当に署名が本人のものか確かめるべきだった,とくやしがっている様子が描かれています。

 私は,遺言書の話が出てきた時点で,おや?と思い,弁護士が遺言書の有効性を主張するくだりで,なんだそりゃ?という気分になってしまって,読む気が一気に失せてしまいました。

 我々弁護士にとっては常識(法学部の生徒でも知っている)なのですが,自筆証書は,全文を手書きしなければならず,ワープロうちの文面では完全に無効になります。署名・押印が本人のものであっても何らの効力も無いのです。

 したがって,「弁護士」がワープロうちの遺言書に本人から署名・押印を取り付けるなどと言う間抜けな話は絶対に生じようが無いわけです。

 このように,署名・押印が本人のものか否か確かめるまでもなくこの遺言書は無効でありますので,話が滑稽でしょうがありません。

 自信が無いなら遺言書について最低限のことを調べてから小説を書いて頂きたいものです。

 

 ところで,本人が遺言書全文を自筆で書かなくても遺言書として有効になる場合があります。

 それは,公証人を関与させて遺言公正証書を作成する場合です。この場合,本人は公証人から意思確認を受けた上で,署名・押印すれば有効な遺言書が作成できます

 手が震えて字が書けなくなっているような場合(もちろん,本人の意思能力は必要です。)には,自筆証書ではなく,公正証書を選択するのがまともな弁護士のやり方ですね。

投稿日:2013年11月15日 12:47|カテゴリー:相続

飲酒運転で職を失う

 飲酒運転に対する社会の目はどんどん厳しくなっています。

 最近では,行政処分や刑事処分が厳罰化され,認知されるようになったためか,飲酒運転自体相当減少していると言われています。

 近時,東京高等裁判所(東京高裁平成25年7月18日判決)で,プライベート酒気帯び運転による物損事故を起こし,逮捕・新聞報道されるとともに,罰金刑を下された労働者について,懲戒解雇=有効,退職金=7割カットとする裁判例が下されました。

 この労働者は,郵便局で集配業務を担当する従業員だったようですが,本当につまらないことで職を失い退職金の7割を失うことになりました。自業自得だとは言え,なかなか重い制裁です。

 ただし,この裁判では,使用者である日本郵便(株)が退職金の全額カットを主張していましたが,7割カットの限度に止められました

 裁判所はそれ以上退職金を減額するのは行き過ぎだとの判断を下したのです。

 なお,労働者が,仕事で自動車を利用することのない窓口業務の従業員であったならば,懲戒解雇が認められなかった可能性もありました

 労働者としては使用者の一方的な言い分を鵜呑みにすべきではないと思います。

 他方,使用者も,感情的になったり,他の従業員への見せしめという意味合いで,苛烈な処分を下しがちですが,かえって余計な費用を支払うことになりかねませんので,慎重に対応して頂く必要があります。

投稿日:2013年11月12日 10:13|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

労働時間の自己申告制

 今日,ほとんどの会社でタイムカードが設置され,正確な労働時間管理がなされるようになりました。

 しかし,あえて労働時間を自己申告させている会社は少ないながらあります。

 もちろん,自己申告じゃなければ時間管理ができない外回りの仕事が多い(直行直帰が多い)労働者が在籍する会社なら自己申告制をとるのはやむを得ないですが,そのような事情もないのに自己申告制を維持してる会社があります。

 おそらく労働者に促して残業時間を短く申告させることができるから,好都合だ,という考えがあるのではないでしょうか。

 このような安易な時間管理が行われないよう,厚生労働省は,原則としてタイムカード等の客観的な記録をすること,自己申告制を採用せざるを得ない場合も使用者は労働者に対して十分な説明と実態調査を行い,また,労働時間の上限設定等をしないよう通達を出しています(平成13年基発339号)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ufxb-att/2r9852000000ugaf.pdf 。

 したがって,上記のような考えで自己申告制を採用している会社は,労働基準監督署に調査に入られたとき,全従業員に対する未払残業代の支払を余儀なくされる危険があります。また,個別に従業員から未払残業代の請求や付加金の請求がされ,紛争になるおそれもあります。

 むしろ,タイムカードでしっかり時間管理をして,無駄な残業時間にメスを入れた方が全体として良かった,ということにもなりかねません。

 以上のことから,企業の側から相談があった場合,トラブル回避のためタイムカードで管理することを推奨するようにしています。

 

投稿日:2013年10月25日 16:49|カテゴリー:労働問題, 弁護士の役立つ情報

養育費の前払い

 離婚をするにあたって,妻側から,養育費を前払いしてほしいと夫側に要望がある場合があります。

 妻側としては,夫側が後で養育費を支払わなくなったり,連絡が取れなくなったりした場合に備えて,このような要望をするのでしょう。

 しかし,基本的に養育費は毎月払うのが大原則であって,前払いしなければならない法律上の義務はありません。

 したがって,妻側から上記のような要望があっても応じる必要はありません。

 もっとも,夫側としても毎月の支払いは煩わしいと言うことで,要望に応じたいという相談もあります。

 しかし,よほどの事情が無い限り応じてはいけないと思います。

 というのも,万が一,妻側が前払いした養育費を自分勝手につかいこんでしまった場合,子供から夫側に対する扶養料請求を防げない可能性があるからです。

 現に子供が生活に苦しんでいれば,子の福祉の見地からは子供の請求は認められるべきだからです。

 これとは別の話ですが,妻が再婚し新しい夫が子供を養子にした場合,養育費の支払義務を免れる余地がありますが,実際にそうなったとき,前払金の返還を妻側に請求することは極めて困難です。

 逆に妻側としては再婚相手が見つかっている場合には前払いを頼んでみることが得だということになるでしょう。

 

投稿日:2013年10月17日 15:56|カテゴリー:離婚

後遺障害の等級と異議申立て

 自動車事故で大きな怪我をした場合,後遺障害がのこることがあります。

 たとえば,事故で骨折をして骨が変な付き方をしたため,歩行が困難になったり,腕の曲がる角度が制限されたり,といった場合には,自賠責の調査事務所で後遺障害が認定されることになります(等級は1~14級まであります。)

 上記のように誰が見ても明らかな後遺障害については,後遺障害の等級認定にあまり争いが無いのですが,打撲,捻挫,挫傷といった比較的軽い怪我がなかなか治らず後遺障害がのこる場合もあり,対応に苦慮することがあります。

 特に,レントゲンやMRI画像に全然病変が見つからない場合には,いくら被害者が訴えていても,後遺障害が非該当になるケースが多いです。

 もっとも,後遺障害非該当となった方から相談を受け,当事務所で異議申立を行ったところ,非該当→14級に変更されたケースもあります。

 私の経験では,それらの事案には共通した特徴があります(あくまで経験上のことですので,参考程度に聴いて下さい。)。

 ①(車同士の場合は)物損被害が大きいこと←事故による衝撃程度が大きいと推測できるからだと思われます。

 ②痛む箇所について訴えに一貫性があること←ころころと痛い場所が変わったり,痛む場所が増えたりする場合は,不定愁訴ということで信用されないのだと思われます。

 ③病院にある程度の期間・頻度で通院していること←毎日通院する必要は無いですが,1か月に2,3回程度ですと,少なすぎるでしょう。また,6か月程度は通院しないと後遺障害が認められる可能性は低いです。

 上記は最低限必要な条件です。これに加え,私の方でお医者さんと打ち合わせをし(協力してくれない医師も多いですが・・・)必要事項が漏れている場合には後遺障害診断書の記載を加筆して頂くなどして,異議申立をすると変更されることもあります。

 ①~③を満たす方なら諦めずに異議申立をしてみても良いかもしれません。

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投稿日:2013年10月03日 14:09|カテゴリー:交通事故

交通事故と刑事記録

 交通事故で過失割合などが争いになったときに,事故当事者が警察にどのように事故態様を説明しているかはとても重要な資料です。

 しかし,警察が持っている資料はなかなか開示されません

 特に,当事者の供述調書は,開示されないことが多いのが実情です。

 意外に思われるかもしれませんが,あくまで刑事記録は刑事処分のための記録であり,民事の紛争解決のためのものではないから,原則開示されないのです。

 但し,

 ①実況見分調書は開示してもらえます。

また,

 刑事裁判になって判決が確定した場合は,②裁判に提出された刑事記録が開示してもらえます。

 つまり,相手方が警察官に対して相手方にとって不利な内容の供述をしていたとしても,その供述は刑事裁判にでもならない限り,こちら側が知ることができないのです

 被害者保護の見地からは極めて不合理ですが,これが実務の現状です。

 以上のような刑事記録の開示状況をふまえますと,どうしても相手方の供述内容を開示させたい場合には,相手方が刑事裁判を受けるように,厳罰を求める必要があります。

 厳罰を求めれば必ず刑事裁判になるわけではありませんが(相手方の過失が小さい場合には刑事裁判になりません),相手方の過失が大きいときには刑事裁判になる可能性が高くなります。

 なんだか本末転倒のような気もしますが,被害者側としては大事な自衛手段ですから,念頭に置いておいた方がいいことがらですね。

001

投稿日:2013年9月18日 17:02|カテゴリー:交通事故

交通事故の弁護士費用特約について気をつけるべきこと

 交通事故の件で,相手方保険会社の提示や対応に疑問を感じ,一度専門の弁護士に相談してみたいという相談者の方が増加しています。

 いまは弁護士に対する相談料や着手金を保険会社が支払ってくれる自動車保険の特約(弁護士費用特約)に加入されている方が多くなってきたため,多くのケースで相談料等の負担をしなくてよくなりました。

 特約の中には,保険契約者本人でなく家族の被害事故であったり,自動車事故と全く無関係の日常生活の事故による怪我等まで対象とするワイドな特約もありますので,事故があったときは,ダメ元で代理店に相談されるとよいかもしれません。

 気をつけなければならないのは,本来弁護士費用特約で担保される交通事故に関する相談であっても,有料となってしまう場合があることです。

 それは,自分の保険会社に対する請求について相談した場合です(車両保険,人身傷害補償,搭乗者傷害等)。

 弁護士費用特約は,あくまで,事故の相手方に対する請求に関する相談の費用負担に限定されているため,上記の内容については相談料を負担して貰えないのです。

 相手方への請求の相談もしつつ,自分の保険会社への保険金請求も少しだけ相談したような場合には,保険会社に相手方への請求について相談した旨申告しないと,相談料負担を拒否されるケースもありますので,十分に注意して頂きたいところです。

 くるまくん01

 

 

 

投稿日:2013年8月27日 16:16|カテゴリー:交通事故

落とし穴~労災保険給付と求償

  1.  労災保険給付の求償については驚くべき落とし穴がある場合があります。
  2.  ある会社の工場で従業員がリフトカーで作業していたところ,歩行中の清掃員をリフトカーでひいてしまいました。

     清掃員は大けがを負ってしまいました。後遺障害も遺りました。

     清掃員は,労災認定を受けて,400万円の給付金支給を受けましたが,後日,労災からその会社に対し400万円のうち320万円を国に払いなさいという請求が来ました。

  3.  通常,労災給付金が支給されても,給付金の一部を求償されることはありません

     では,なぜ,その会社が給付金の一部を払えと請求を受けたのでしょうか。

     実は,その清掃員が当該会社の子会社の従業員だったからです。

  4.  労災の求償に関する通達(昭和44.3.23基発148号)では,求償しない労災事故の事案を次の場合と規定しています。
    同僚労働者の加害行為による場合
    同一事業主の事業場を異にする労働者の加害行為による場合
    同一作業場内において同時に作業を行う使用者を異にする労働者の加害行為による場合
  5.  ①②の場合に求償しないのは,結局,労災の掛金をその使用者が払っているのであるから,求償すると,何のために使用者が掛金を払っているか分からなくなる,という理屈から分かります。いわば当然のことです。

     しかし,③については,少し趣旨がはっきりしません。

     監督署では,③は,加害者と被害者が同一作業場において互いに危険を共有しているかどうかで判断するという解釈をとっているそうです。

     上記のケースだと,たしかに,③同一作業場内で同時に作業を行っているのですから,あてはまりそうですが,清掃員がリフトカー作業員に危害を加えるといったことは想定できないため,③に該当しないと判断されます。

     釈然としませんが,本来的には国から加害者に求償するのが原則ですから,求償しない場合を限定的に解釈しても,それは国の勝手だ,ということでしょうか。

投稿日:2013年8月02日 08:34|カテゴリー:労働問題

増えるメンタル関係の労災支給決定

 会社内でメンタルヘルスの問題が増加しています。それに伴って,メンタルヘルス絡みの労災支給決定も増加しつつあります。

 以前は,業務を原因とした精神障害(たとえば鬱病)が発生したとして,労働者側が労災認定を請求してもなかなか認められませんでしたが,最近,この傾向が変わってきています。

 厚生労働省の資料として,次のようなものがあります。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7-att/2r9852000001f1o2.pdf

 表2-1によりますと,精神障害の労災補償に支給決定率が,それまで30.3%だった決定率が平成24年度に一気に39.0%まで増加していることが分かります。

 このように急激に決定率が増加したのは,精神障害の労災の認定に際して,「業務による心理的負荷評価表」が使用されるようになったことが理由だそうです。

 どういうものかは,http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120118a.pdf をご覧頂きたいのですが,会社での出来事の労働者に与える心理的負荷を数字で評価して,合計点が一定以上だと,精神障害を認める,という基準をもうけたことが一因だそうです。

 たとえば,退職を強要された場合,退職の意思がないと言っているのに,執拗に退職を求められた場合や理由を説明されないまま解雇された場合には心理的負担の強度がⅢとなるなど,です。

 労災支給決定が出ると,会社としては,その後に,安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求される可能性もありますから,労働者に重い心理的負荷をかけ続けないよう,コントロールすべきだということになります。

 

投稿日:2013年7月31日 11:05|カテゴリー:労働問題

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