賃料の増減額請求
世間ではあまり知られていないことですが,一定の場合,借りている土地の賃料の改定を請求できることがあります。
たとえば,工場を建てるために土地を借り,工場を建設したがが,土地を借りたのがバブルの頃で,賃料が異常に高い場合,賃料の減額を請求できる場合があります(借地借家法11条)。
当事務所で扱った件では,借り手の立場で事件を受任し,小泉政権下で定められた賃料を数万円減額した例があります。
しかし,このような賃料の改定を請求できる賃貸借は,「建物所有目的」の賃貸借に限られます。
たとえば,青空駐車場として借りているような土地については,借り手がそこに建物を建築する目的で借りているわけではありませんから,「建物所有目的」にはなりません。よって,賃料の改定を請求することはできないということになります。
なぜ,建物所有に限られているかというと,建物所有目的だと,賃貸借が長期間になることが前提となっていますし,建物を取壊しから保護すべきですから,長期間の賃貸借が不合理とならないよう柔軟な賃料改定が必要だからです。
問題は,ゴルフ場などで,土地の一角にクラブハウスを建築するような場合,です。
果たして,「建物所有目的」で土地を借りたと言えるでしょうか。
旧借地法の裁判例では,ゴルフ練習場として使用する目的で土地が賃貸された場合には,たとえ事務所用建物を建築することが予定されていたとしても,建物所有目的にあたらないと判断しています(但し,契約期間が争いとなった裁判例です。)。
そうだとすると,一般的にゴルフ場の賃貸借契約については,賃料の改定は難しそうです。
近時,最高裁で,ゴルフ場を経営するために借りている土地について,借り手側(ゴルフ場経営会社)の地代減額請求を棄却した裁判例がありました(最高裁平成25年1月22日判決)。
この裁判の事案では,どうやら問題となっている土地上には建物が建っていなかったようですので,どちらにしても,建物所有目的では無いと判断されたでしょうが,仮に,なにがしかの建物が建築されていた場合,最高裁がどう判断するかは明確で無いと思います。
ゴルフ場経営のために土地を借りる場合は,長期に亘って借りることを前提にしていますし,賃料の改定を認めても良さそうですが,皆さん,どうお考えになられますでしょうか?
投稿日:2013年7月25日 10:47|カテゴリー:最近の法律問題